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TSMC、株価復活で最高値も 世界の半導体株を牽引 11月実績焦点

TSMCの株価は2週間前の安値から6.50%高。最高値更新に向けて前進している。10日発表の11月実績が投資家心理を左右しそうだ。

TSMC、株価復活で最高値も 世界の半導体株を牽引 11月実績焦点 出所:Adobe Images

半導体受託製造大手の台湾積体電路製造(TSMC)の株価が復活してきた。アメリカ株式市場に上場するTSMCの米国預託証券(ADR)の4日の終値は、約2週間前につけた直近の安値から6.50%高の水準。TSMCには米国と台湾が半導体製造について共同歩調をとると報じられるといった追い風も吹いており、株価上昇は他の半導体株の上昇をも牽引する形になっている。一方、TSMCは11月上旬に発表した10月単月の業績で成長が大きく鈍化し、見通しに対する不安もくすぶる。10日に発表される11月の業績が期待外れに終われば、株価下落につながるおそれもありそうだ。TSMCは人工知能(AI)ブームで急増する生産需要に応えながら安定的な利益を確保するという難題に直面しており、経営のかじ取りは容易ではない。

TSMCの株価は2週間で6.5%高 ASMLやアドバンテストなども急伸

TSMCの株価(TSM)の4日の終値は292.93ドルで、11月21日につけた直近の安値(275.06ドル)からは6.50%高。10月29日の最高値(305.09ドル)からは3.99%安で、最高値から安値までの下落幅の約6割を回復している。AIの開発やサービス展開に不可欠な高性能半導体の製造を担うTSMCは、米半導体大手NVIDIA(エヌビディア、NVDA)などが顧客となっており、AIブームへの期待が株価の追い風だ。

TSMC、エヌビディア、アドバンテストなどの株価の推移のグラフ

TSMCの株価上昇には、米国と台湾の共同歩調への期待も貢献していそうだ。英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)は11月21日、台湾国家科学技術委員会の呉誠文主任委員(科学技術相)がインタビューに応じ、米国が台湾製品に高関税を課さないことと引き換えに、台湾が米国の半導体産業の発展を支援することで「合意した」と述べたと報じた。ドナルド・トランプ大統領は8月6日に半導体に100%関税を課す方針を示したが、米国内への投資を確約している企業は例外扱いにするとも強調。TSMCはアリゾナ州で生産拠点の拡充を進めており、トランプ氏との友好関係も維持できているもようだ。

世界の株式市場では同じタイミングで、TSMC以外の半導体株でも反発がみられた。オランダの半導体製造装置大手ASMLホールディングの株価(ASML)は21日の底値から12月4日までに14.78%上昇。同じ期間には、日本の半導体検査装置大手アドバンテスト(6857)も13.02%高、半導体製造装置の東京エレクトロン(8035)も12.06%高となっている。11月下旬の株式市場では米連邦準備制度理事会(FRB)幹部から12月利下げを支持する発言が相次いだことで投資家心理が上向いていたが、半導体株には米台関係の面からも追い風が吹いていたとみることもできそうだ。

TSMCの月次実績は総収入の伸びが減速 11月も期待外れなら株価に逆風

一方、TSMCの業績に不安がないわけではない。TSMCが11月10日に発表した10月単月の台湾ドルベースでの総収入は前年同月比16.9%増の3674億台湾ドル。7-9月期の30.3%増から大きく減速した。TSMCの株価は10日こそ米国の政府機関閉鎖解消への期待もあって前週末比3.06%高となったが、翌11日から13日にかけては3日続落で合計4.43%安という不振に陥った。

TSMCの月次の総収入の推移のグラフ

ただ、TSMCの10月の実績は想定の範囲内とみることもできる。10月の総収入はドル建てに換算すれば22.6%増で、やはり7-9月期の実績(40.8%増)から急減速。とはいえ、TSMCが10月16日の2025年7-9月期決算発表で示した10-12月期の総収入の見通しは322億-334億ドル(中間値328億ドル)で前年同期比22.0%増にあたることを踏まえれば、TSMCの10月の実績は、TSMC自身の見通しをやや上回る結果だったともいえそうだ。

こうした中、TSMCが最高値更新を果たせるかどうかは、TSMCが10日に発表する11月の販売実績にかかってくる。11月の台湾ドル建てでの収入の伸び率が10月の16.9%増を下回れば、投資家の不安を高める可能性がありそうだ。TSMCはAIブームが追い風となって総収入の増加が続いているものの、生産能力を急拡大させた後でAIブームが失速すれば、過剰設備を抱え込むことにもなりかねない。魏哲家(シーシー・ウェイ)CEOは7-9月期決算会見で、「利益を確保しながらの成長」の重要性を強調しており、高まる投資家の期待に応えきれない筋書きも考えられる。


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