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米国株、2026年の利下げに不安 S&P500減速 エヌビディアは反発

S&P500は2週続伸ながら最高値には届かず。FRBの2026年以降の利下げへの期待は高まっておらず、10日までのFOMCが悪材料になる可能性もある。

米国株、2026年の利下げに不安 S&P500減速 エヌビディアは反発 出所:ブルームバーグ

アメリカの株式市場がじわじわと上昇している。S&P500種株価指数の5日の終値は1週間前比で0.31%高。直近10営業日中9営業日での上昇で、最高値が間近に迫った。半導体大手NVIDIA(エヌビディア)の株価は3週ぶりに反発しており、人工知能(AI)ブームの継続性をめぐる過度な不安は後退している。ただ、S&P500の上昇率は前週(11月24-28日)の大幅高からは減速しており、勢い不足が感じられたことも事実。金融市場では、米連邦準備制度理事会(FRB)の2026年以降の利下げへの期待が後退気味で、5日に発表された物価関連指標も物価上昇の鎮静化の兆しをみせていない。このためS&P500の今後の見通しをめぐっては、FRBの継続的な利下げに関する思惑が焦点となる。9日に発表される労働市場関連統計や、FRBが9、10日の連邦公開市場委員会(FOMC)後に発表する経済見通しの結果次第で、株式市場に失望感が出る可能性もありそうだ。

アメリカのS&P500は週次0.31%高 直近10営業日中の9営業日で値上がり

S&P500(SPX)の5日の終値は前日比では0.19%高。ブルームバーグによると、週初めの1日は日本銀行の利上げ見通しを発端とした長期金利の上昇が嫌気されて0.53%安となったものの、その後は4日続伸となった。S&P500は11月末までにも5営業日続伸を記録しており、直近10営業日中の9営業日で値上がりした形だ。この間の上昇率は5.07%高で、10月28日の最高値(6890.89)から0.30%安の水準まで近づいてきた。

S&P500とアメリカの長期金利の推移のグラフ

エヌビディアは3週ぶり反発 半導体株をめぐる投資家心理改善

S&P500への影響が大きい「マグニフィセント・セブン」と呼ばれる大手ハイテク7社の値動きでは、エヌビディアの株価(NVDA)が5日までの週次で3.06%高の182.41ドルとなり、3週ぶりに反発。エヌビディアの株価は10月29日の最高値(207.04 ドル)から11月28日の底値(177.00ドル)まで14.51%安となっていたが、値上がり傾向が出始めている。このほか電気自動車(EV)大手テスラの株価(TSLA)も週次5.77%高、SNS大手のメタ・プラットフォームズ(META)も3.93%高となった。BITA社が7社の株価に基づいて算出するマグニフィセント・セブン指数(MAGSEVEN)は5日終値で週次0.81%高となっている。

エヌビディア、アルファベット、メタ・プラットフォームズ、マイクロソフト、テスラ、アップル、アマゾン・コムの株価の推移のグラフ

また、エヌビディア以外の半導体株では半導体製造装置のアプライド・マテリアルズ(AMAT)が5日までの週次で6.24%高。クアルコム(QCOM)も週次4.00%高となった。S&P500種構成銘柄ではないものの、英半導体大手アーム・ホールディングス(ARM)も4.24%高となっている。3社の株価はいずれも2週続伸だ。エヌビディアをはじめとする半導体株はAIブームの継続性への不安から下落圧力がかかり、S&P500の上昇の足を引っ張ってきたが、投資家心理は改善したようだ。

エヌビディア、ブロードコム、アプライド・マテリアルズ、アーム・ホールディングスなどの株価の推移のグラフ

S&P500の上昇には足取りの重さも FRBの2026年以降の利下げ見通しは高まらず

ただ、S&P500の上昇には勢い不足も感じられる。5日までの週次での上昇率(0.31%高)は前週に記録した半年ぶりの高い上昇率(3.73%高)からは大きく減速。最高値までの距離を縮めきれなかったともいえそうだ。米国経済をめぐっては労働市場の弱さを示す民間経済指標が相次ぎ、FRBが10日までのFOMCで3会合連続の利下げを決めることがほぼ確実視されている中でも、株式市場が沸き立っているわけではない。

S&P500の値上がりの重い足取りの背景には、FRBの利下げペースへの不安がありそうだ。ブルームバーグによると、5日の金融市場ではジェローム・パウエル議長の任期中最後のFOMCとなる2026年4月会合後の政策金利の水準は3.449%と見込まれており、2日連続で前日から上昇した。金融市場では、FRBが12月利下げを決めた後、2026年1月以降も利下げを継続することへの期待が後退しているといえそうだ。

2026年以降のFRBの政策金利の見通しの推移のグラフ

FRBの2026年の利下げ見通しが強まらない要因は物価上昇の根強さにある。米商務省が5日に発表した9月の個人消費支出(PCE)物価指数の伸び率は、総合指数と、食品とエネルギーを除いたコア指数でいずれも2.8%。どちらもブルームバーグがまとめた市場予想と一致する結果で物価上昇の過熱感が出なかったと同時に、物価上昇の鎮静化の兆しもみられなかったといえる。

PCE物価指数の伸び率の推移のグラフ

FOMCの経済見通しで利下げペースは高まるか 期待外れならS&500に冷や水も

このため週明け8日以降のS&P500の見通しをめぐっては、FRBの2026年以降の利下げ見通しが強まるかどうかが焦点になりそうだ。労働省は9日午前10時(日本時間10日午前0時)に10月の雇用動態調査(JOLTS)を発表する予定で、労働市場の悪化が見られた場合には、FRBの利下げ見通しを強めるS&P500にとっての追い風になりそうだ。

さらに10日までのFOMCでは、経済見通しで示される2026年以降の利下げの方向性が注目される。また、パウエル氏が10月29日のFOMC後の記者会見同様、利下げペースをめぐる参加者内での意見の相違を強調するなどした場合にも、投資家心理が冷え込む可能性があり、S&P500の値上がりの勢いが大きく削がれる恐れもありそうだ。


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