米国株、金利上昇を警戒 S&P500久々反落 民間雇用統計は追い風か
S&P500は6営業日ぶり反落。金利上昇が投資家心理を冷やした。3日の民間雇用統計がFRBの利下げ期待を強めるかどうかが注目される。
アメリカの株式市場が金利上昇への警戒感を示した。S&P500種株価指数の1日の終値は前週末比0.53%安で6営業日ぶりの反落。最高値更新に向けた上昇が停止した。日本銀行の12月利上げ観測の強まりが、米国の長期金利(10年物国債利回り)の上昇を招き、株式市場の逆風になったもようだ。また、11月の製造業の景況感が市場予想を下回ったことも、投資家心理を冷やした可能性がある。ただ、1日の大手ハイテク株の値動きでは、半導体大手NVIDIA(エヌビディア)が反発するなど、底堅さも感じられた。S&P500の今後の見通しをめぐっては、3日に民間雇用サービス会社ADPが発表する11月の就業者数が焦点で、仮に労働市場の弱さが示された場合でも、米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げ見通しを強めるS&P500にとっての好材料として受け止められる可能性がありそうだ。
S&P500が6営業日ぶりに反落 日銀の利上げ見通しが米国長期金利を誘発
S&P500(SPX)の1日の終値は6812.63。前週末までの5営業日続伸でみせていた、10月28日の最高値(6890.89)に向けた勢いが途切れた。株高の足を引っ張ったのは長期金利の上昇。ブルームバーグによると、1日のニューヨーク債券市場での長期金利の終値は4.087%で、11月19日(4.138%)以来、7営業日ぶりの高さ。前週末比での上昇幅は0.072%ポイントで、11月5日(0.074%ポイント)以来の大きさだった。
米国の長期金利を上昇させたのは日本の長期金利の上昇だ。ブルームバーグによると、日本の長期金利は1日の取引で一時、1.876%をつけ、17年5か月ぶりの高さを更新。日銀の植田和男総裁が1日の講演で、円安が物価上昇要因であることや企業の賃上げへの積極姿勢に言及したうえで、18、19日の金融政策決定会合での利上げを示唆したことが材料視された。日本の金利上昇は米国債投資の魅力を相対的に低める要因といえ、米国債の価格下落と長期金利上昇につながる可能性があるとの観測がS&P500にとっての逆風になったようだ。
製造業の景況感は悪化 VIX指数の上昇は金利上昇への恐怖心か
また、1日の金融市場では米国経済への不安材料も浮上した。米サプライマネジメント協会(ISM)が発表した11月の製造業の景況感指数(PMI)は48.2で、ブルームバーグがまとめた市場予想の49.0を下回った。製造業の景況感は2か月連続で前月から悪化しており、やはりS&P500の見通しを悪くする結果だったといえそうだ。
経済悪化への不安が意識される中で起きた金利上昇は投資家心理を悪化させた。シカゴ・オプション取引所によると、ウォール街の「恐怖指数」と呼ばれるVIX指数(VIX)の1日の終値は前週末よりも5.44%高い17.24。20の大台を超える動きにはならなかったものの、米国の投資家の金利上昇に対する恐怖心の強さが改めて示されたといえそうだ。VIXはS&P500のオプション取引の動向から算出され、値が大きいほど、今後の値動きが荒くなることへの警戒が強いことを示す。
エヌビディアは反発 マグニフィセント・セブンの値動きに底堅さ
ただ、1日の株式市場の値動きからは底堅さも感じられた。S&P500への影響度が高い「マグニフィセント・セブン」と呼ばれる7社の中では、エヌビディアの株価(NVDA)が前週末比1.65%高となり、2営業日ぶりの反発。アップル(AAPL)は1.52%高で、6営業日続伸となった。一方、新型AIモデル「ジェミニ3」への高評価などが株価上昇につながってきたアルファベット(GOOGL)が1.65%安となるなど、7社中の4社は値下がりしているが、下落率はいずれも2%未満にとどまっている。BITA社が7社の株価に基づいて算出するマグニフィセント・セブン指数(MAGSEVEN)は1日までに6営業日続伸となった。
ADP雇用統計は0.5万人増の見通し FRBの利下げ期待を強めればS&P500への追い風
こうした中、S&P500の今後の見通しをめぐっては、ADPが3日午前8時15分(日本時間3日午後10時15分)に発表する11月の全米雇用リポートが注目される。ブルームバーグがまとめた市場予想では、非農業部門の就業者数(政府部門除く)が前月比0.5万人増と見込まれており、前月(10月)の4.2万人増との比較では、労働市場の弱さが示されることになりそうだ。
ADPによる就業者数が実際に、労働市場の弱さを示した場合には、金融市場ではFRBが9、10日の連邦公開市場委員会(FOMC)で利下げするとの見通しが強まり、S&P500にとっての追い風になる可能性がある。ブルームバーグによると、1日の金融市場では12月FOMCでの利下げ確率は91%と見込まれている。逆にADPのデータが労働市場の強さを示した場合には、利下げ見通しを弱める悪材料といえるが、ニューヨーク連銀のジョン・ウイリアムズ総裁らFRB幹部から労働市場悪化を警戒する発言が相次ぐ中、12月利下げ見通しは大きくは低下しないことも考えられ、S&P500が底堅さを示す展開も想定されそうだ。
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