ドル円、円高加速も FRBの利下げ見通し焦点 日銀は利上げに意欲
ドル円相場は一時154円台半ばまで円高が進行。日銀の利上げ意欲が材料視されており、10日のFOMCの経済見通しで円高が加速する可能性もある。
ドル円相場で円高圧力が強まった。ドル円相場は日本時間5日昼までの取引で1ドル=155円を挟んだ値動き。前日夜には154円台半ばをつけ、約2週間ぶりの円高水準となった。日本銀行の植田和男総裁が1日に18、19日の金融政策決定会合での利上げ検討に言及したことが要因で、日米の長期金利(10年物国債利回り)の差は3年8か月ぶりの小ささとなっている。また、円高の背景には米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げ見通しが強まっていることもあり、日米双方から円高材料が提供される形となった。ドル円相場の今後の見通しをめぐっては、FRBが9、10日に開く連邦公開市場委員会(FOMC)が焦点。経済見通しで示される2026年の利下げ回数が金融市場の見通しよりも多くなれば、円高がさらに進行する展開が考えられそうだ。ただ、FRB内では利下げへの慎重論も強いとみられ、円高にブレーキがかかる可能性も残っている。
ドル円相場は一時、154.51円 高市円安のピークから3円超円高に
ドル円相場(USD/JPY)は日本時間5日午後1時58分段階で1ドル=154.92円で取引されている。ブルームバーグによると、4日午後9時前には154.51円をつけ、11月17日(154.42円)以来の円高水準となる場面もあった。ドル円相場は高市早苗政権発足の起点となった10月4日の自民党総裁選挙から、11月20日につけた157.89円まで1か月半で10円の円安が進んでいたが、円高方向に3円超戻したことになる。
日銀の植田総裁が12月利上げ検討に言及 利上げ確率は89%まで上昇
円高進行の要因となったのは植田氏の1日の発言だ。植田氏は愛知県で行われた地元経済界との懇談会でのあいさつで、12月決定会合について「利上げの是非について適切に判断したい」と言及。足元の円安が物価上昇圧力として働く可能性や2026年春闘に向けて企業側が賃上げに意欲を示していることにも触れた。この結果、金融市場では日銀の利上げ見通しが拡大。ブルームバーグによると、5日午後1時58分の段階で12月決定会合後の政策金利は0.705%と見込まれ、植田氏の発言前の11月28日の水準から0.082%ポイント上昇。利上げ確率は91%とされている。
こうした中、金融市場では日本の長期金利が上昇。ブルームバーグによると、4日には一時、1.936%をつけ、2007年7月17日(1.944%)以来、18年4か月ぶりの高さとなった。日米の長期金利の差は4日終値段階で2.165%ポイントとなり、FRBがロシアのウクライナ侵攻を受けて利上げを始めた約2週間後にあたる2022年3月31日につけた2.131%ポイント以来の小ささまで縮小している。
FRBの12月利下げは確実か 金融市場は2026年も2回超の利下げを期待
また、足元で進む円高の背景には、FRBが10日までのFOMCで利下げを決めるとの思惑が浸透していることもある。11月下旬以降、ニューヨーク連銀のジョン・ウイリアムズ総裁らFRB幹部から12月利下げを示唆する発言が続いたこと要因だ。民間雇用サービス会社ADPが3日に発表した11月の全米雇用リポートは労働市場の縮小を示す結果で、FRBが利下げで経済を下支えする必要性を裏付けた。さらに5日に人事サービス会社、チャレンジャー・グレイ・アンド・クリスマスが発表した11月の人員削減数は7万1321人で、10月の15万3074人からは減少したものの、前年同月比では23.5%増という高水準だ。ブルームバーグによると、FRBが10日までのFOMCで利下げを決める確率は4日段階で92%と見込まれている。
このためドル円相場の今後の見通しをめぐっては、FOMCの参加者が示す経済見通しが焦点となる。2026年の利下げ回数の方向性が市場の予想を超えれば、円高圧力がかかる可能性がありそうだ。ブルームバーグによると、4日の金融市場で見込まれている政策金利の水準は、ジェローム・パウエル議長の任期中最後の会合となる4月FOMC後で3.433%。10月FOMC後で3.074%となっている。5日後に迫った次回FOMCで利下げを行ったうえで、2026年は少なくとも2回の利下げが予想されていることになる。
FRB内には利下げへの慎重論も PCE物価指数もドル円相場を左右か
ただ、FRBが示す利下げの方向性が金融市場の想定ほどには高まらない可能性もありそうだ。FRBは9月段階での経済見通しで、2026年末の政策金利について3.4%という水準を提示。足元の政策金利がすでに3.75-4.00%(中間値3.875%)となっていることを踏まえれば、12月FOMCで利下げを行った場合、2026年の利下げ回数は1回に留まることも想定される。FRBの10日の発表内容から利下げへの慎重姿勢が感じられれば、ドル円相場で円安圧力が強まることもありえる。
FRBの金融政策の見通しは、5日午前10時(日本時間6日午前0時)に発表される9月の個人消費支出(PCE)物価指数の影響も受ける。物価上昇に過熱感が出なければ想定内の結果といえ、ドル円相場への影響は限定的になりそうだが、上昇率が市場予想を上回ればFRB内で利下げへの慎重論が強まる可能性もある。パウエル氏は10月29日のFOMC後の記者会見で、経済の見通しについて参加者の間で意見の隔たりが大きいことを指摘しており、足元での円高にブレーキがかかる展開も考えられそうだ。
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