米国株、年末ラリー見通しに危うさ S&P500急落 エヌビディアも失速
S&P500は12日に前日比1.07%安。週次で3週ぶりの反落となった。AIブーム継続への疑念が重要経済指標発表前の市場に不安を広げている。
アメリカの株式市場の見通しが悪化した。S&P500種株価指数の12日の終値は1週間前比0.63%安で、3週ぶりの反落。12日は前日比で1%を超える急落となり、約3週間ぶりの大きな下落率だった。オラクルとブロードコムの決算発表を経て、人工知能(AI)ブームの継続性をめぐる懸念が再燃しつつあり、半導体大手NVIDIA(エヌビディア)の株価は12日までの週次で4%超安となっている。また米国の金融市場では長期金利(10年物国債利回り)の上昇傾向が出ており、株価の割高感が許容されにくい状況も生まれているようだ。こうした中、週明け以降の金融市場では、11月の雇用統計と11月消費者物価指数(CPI)という重大経済指標の発表が相次ぐ。米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げ見通しが弱まる結果となれば、S&P500の年末ラリーへの期待が後退する展開も考えられる。
アメリカのS&P500は週次0.63%安 12日は前日比1.07%安の急落
S&P500(SPX)の12日の終値は前日比では1.07%安の6827.41。エヌビディアの2025年8-10月期決算発表の翌日にあたる11月20日(1.56%安)以来の大きな下落率となった。ブルームバーグによると、週次での下落(0.63%安)はこの急落があった11月17-21日週(1.95%安)以来、3週ぶりだ。
オラクルとブロードコムの決算発表が悪材料に エヌビディアは週次4.05% 安
S&P500の失速の背景には、10日に行われたオラクルの9-11月期決算発表と11日に行われたブロードコムの8-10月期決算発表がある。オラクル(ORCL)は総収入の実績がブルームバーグがまとめた市場予想を下回ったほか、設備投資額の増加も不安視され、株価は12日までの週次で12.69%安。またブロードコム(AVGO)は市場予想を超える実績を発表したが、受注残の数字が一部投資家の期待を超えられず、株価は週次7.77%安となった。オラクルとブロードコムはいずれも対話型AIサービスChatGPTで知られるオープンAIとの関係強化が好感されてきたが、期待をつなぐことができなかったといえそうだ。
また、AIブームへの不安拡大は、S&P500への影響度が大きい「マグニフィセント・セブン」と呼ばれる大手ハイテク7社の株価の重荷になった。ブルームバーグによると、エヌビディアの株価(NVDA)は12日までの週次で4.05%安となって2週ぶりに反落したほか、メタ・プラットフォームズ(META)も3週ぶり反落の4.33%安。さらに財務の健全性やAI関連事業の総合力が評価されてきたアルファベット(GOOGL)も週次3.73%安となり、4週ぶりに反落している。7社の中では週次0.87%高だったテスラ(TSLA)を除く、6社が値下がりした。
米国の長期金利は上昇傾向 S&P500の割高株価の修正要因に
さらに米国の金融市場では長期金利の上昇も不安材料になってきた。ブルームバーグによると、米国の長期金利は9日の終値で4.189%をつけ、9月3日(4.218%)以来、3か月ぶりの高さを記録。12日終値でも4.185%という高水準となっている。長期金利上昇は株式投資の魅力を相対的に低める要因で、利益に対して高すぎる株価は許容されにくくなっていそうだ。S&P500の水準と今後12か月の予想収益との比率を示す予想株価収益率(PER)は足元では22倍台で推移しており、長期金利が3.9%台だった10月下旬の24倍台から低下している。
11月の雇用統計とCPIが焦点に S&P500の見通しを左右
こうした中、週明け以降の米国株式市場では、米国の労働市場と物価動向をめぐる重要経済指標がS&P500の勢いを左右しそうだ。米労働省は16日に11月の雇用統計、18日に11月のCPIを発表する予定。雇用統計で労働市場の弱さが確認された場合には、FRBの利下げ見通しが強まり、S&P500への追い風になることが想定される一方、CPIで物価上昇の根強さが確認された場合には、利下げ見通しの後退がS&P500にとっての逆風になる展開が想定される。
FRBは10日までの連邦公開市場委員会(FOMC)で3会合連続での利下げを決め、2026年も1回の利上げを行う方向性を示した。ただ、ジェローム・パウエル議長は記者会見で、政策金利が経済活動を刺激することも冷やすこともない「中立金利」に近づいているとも言及。労働市場の悪化が進まなければ、利下げを急ぐ必要がないとの立場だと受け止めることもできる。ブルームバーグによると、12日の金融市場ではパウエル氏の任期中最後のFOMCとなる2026年4月会合後の政策金利は3.440%と見込まれており、現状の政策金利(3.50-3.75%、中間値3.625%)から0.185%ポイント低い水準。4月までに利下げが行われる確率は80%程度とみられている。
FRB幹部の発言にも注目 年末ラリーへの期待後退も
FRBの利下げをめぐっては、2026年のFOMCで投票権を持つクリーブランド連銀のベス・ハマック総裁が12日のオハイオ州でのイベントで、「物価上昇率は高すぎる」としたうえで、政策金利について「(現状よりも)やや引き締め的」な水準がが望ましいと発言。現段階では2026年の利下げに慎重な立場を示した。今後のS&P500の見通しをめぐっては、雇用統計やCPI発表後のFRB幹部の発言で利下げへの期待が変化し、内容次第では年末に向けた株価上昇の勢いが削がれることも考えられそうだ。
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