米国株、政府機関閉鎖で不安拡大 S&P500停止 AIブームは岐路?
S&P500は2日以降は横ばい。投資家が抱く政府機関閉鎖への警戒感を示しいてる。AIブームでの優勝劣敗も意識され、株価の見通しは晴れない。

アメリカの株式市場の先行き不透明感が強まっている。S&P500種株価指数の3日の終値は1週間前比1.08%高となり、2週ぶりに反発。とはいえ、週の後半は政府機関の一部閉鎖を受けて値動きが止まっており、勢い不足は明らかだ。ウォール街の「恐怖指数」と呼ばれるVIX指数は5日連続で上昇し、投資家の警戒感の高まりを感じさせている。一方、米国の株式市場ではオープンAIを原動力とするAIブームへの期待が改めて膨らみ、半導体大手NVIDIA(エヌビディア)は週次5%超値上がり。その他の半導体株の値動きも明るさが増している。ただ、巨額のAI投資を続ける大手ハイテク企業の株価には失速感もみられ、AIブーム継続の中でも優勝劣敗が明らかになる可能性も指摘されている。また政府機関一部閉鎖は米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げが株式市場の追い風になるという筋書きを封印している側面もあり、S&P500の今後の見通しに暗雲が漂い始めたともいえそうだ。
アメリカのS&P500は6日続伸 政府機関閉鎖で投資家不安は拡大
S&P500(SPX)の3日の終値は前日比では0.01%高の6715.79。6営業日続伸で2025年に入ってから31回目の最高値更新を果たした。週次での上昇(1.08%高)は2週ぶりで、底堅さを維持したといえる。半面、米国議会での与野党対立が1日からの政府機関一部閉鎖につながったことで、株式市場の見通しは一気に悪くなった。S&P500の6連騰のうち、最後の2日と3日は0.1%未満の上昇で、勢い不足が鮮明となっている。

投資家の不安心理はVIX指数(VIX)の値動きにも表れている。シカゴ・オプション取引所によると、VIXの3日の終値は前日よりも0.12%高い16.65。2024年7月15日から19日にかけて以来の5日連続での上昇となった。VIX指数はS&P500のオプション取引の動向から算出され、値が大きいほど、今後の値動きが荒くなることへの警戒が強いことを示す。

オープンAIの動画生成AIソラに高評価 エヌビディアの株価は週次5.29%高
一方、S&P500にはAIブームという追い風も続いている。対話型AIサービスChatGPTで知られるオープンAIは9月30日に動画生成AIアプリ「Sora(ソラ)」の配信を開始。簡単な指示を出すだけで、現実の実写動画と見分けがつかないほど高品質のAI動画が作れるとの評価が広がっている。また、ブルームバーグは日本時間の2日、オープンAIが従業員らが保有する株式の投資家グループへの売却を終え、オープンAIの市場価値は5000億ドルと見積もられたと報じた。オープンAIがChatGPTの公表で世界を驚かせたのは2022年11月。約3年足らずで示されたAI技術の革新的な進化は経済活動の大変動を予感させている。
こうした中、オープンAIへの最大1000億ドルの投資構想を発表しているエヌビディアの株価(NVDA)は勢いを取り戻してきた。3日の終値は1週間前比で5.29%高で、オープンAIがオラクル(ORCL)に対して5年間で3000億ドルを支払う契約が報じられた9月8-12日週(6.47%高)以来の大きな上昇率。10月2日につけた188.89ドルは9月22日以降で4回目の最高値更新で、S&P500を下支えした。エヌビディア以外の半導体株でも、半導体製造装置のアプライド・マテリアルズ(AMAT)が3日までの週次で6.67%高となり、5週続伸。S&P500構成銘柄ではないものの、英半導体大手アーム・ホールディングス(ARM)の株価は週次9.33%高となっている。

大手ハイテク株の値動きは冴えず AIブームの中での優勝劣敗を意識か
ただ、AI開発やサービス提供のために巨額の投資を続け、S&P500への影響度も大きい大手ハイテク企業の株価には失速感もある。SNS大手のメタ・プラットフォームズの株価(META)は3日までの週次で4.46%安となり、2週続落。メタはこれまでAIの活用が広告収益の拡大につながっていると評価されてきたが、9月中旬以降は株価の下落傾向が鮮明だ。「マグニフィセント・セブン」と呼ばれる大手ハイテク7社の中では、テスラ(TSLA)やアルファベット(GOOGL)、アマゾン・コム(AMZN)も週次で値下がりした。

大手ハイテク株の下落の背景にはAIブームに沸いてきたすべての企業が生き残れるわけではないとの見方の強まりもありそうだ。ブルームバーグによると、大手投資銀行ゴールドマン・サックス・グループ(GS)のデービッド・ソロモンCEOはイタリアで開かれた経済イベントでのインタビューで、新しい技術が発展する段階では株価が急騰することは自然なことだとしつつ、企業の間には「勝者と敗者が生まれる」とも指摘。インターネットの普及期には多くのネット企業が誕生し、アマゾンのような成功企業も出たが、「多くの企業は退場した」と述べた。ソロモン氏は今後12-24か月のうちに「株式市場の縮小」があったとしても驚かないとしており、最高値更新を続けるS&P500の先行きに警鐘を鳴らしたともいえる。
9月雇用統計は発表見送り FRB利下げの不透明感でS&P500の見通しに暗雲
S&P500の値動きをめぐっては政府機関の一部閉鎖によって好材料が出にくくなっている側面もありそうだ。金融市場の注目度が高い9月雇用統計は政府機関閉鎖の結果、3日の発表が見送られた。9月雇用統計は労働市場の悪化がみられたとしてもFRBの利下げ期待を強めることでS&P500の上昇につながる可能性もあったが、こうした楽観シナリオは浮上の機会を失ったといえる。ブルームバーグによると、3日の金融市場では12月の連邦公開市場委員会(FOMC)後の政策金利の水準は3.638%と見積もられ、前日から0.015%ポイント上昇した。年内2回の利下げ確率は83%となっている。

政府機関の活動再開のカギをにぎる議会でのつなぎ予算案の審議では、3日に共和党が提出したつなぎ予算案と、民主党が提出したつなぎ予算案の両方が投票にかけられたが、いずれも審議の進行に必要な60票の賛成は獲得できず。事態打開のめどは立っていない。政府機関閉鎖が長期化してFRBの利下げをめぐる不透明感が残ったまま、10月中旬以降に2025年7-9月期の企業決算発表が本格化すれば、大手ハイテク企業の収益性への不安がS&P500に及ぼす悪影響が大きくなるとの見方も成り立ちそうだ。
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