米国株、積み重なる不安 S&P500に傷跡 AIブームに急落リスクも
S&P500は前週の急落の7割を取り戻す結果。米中間の緊張と地銀経営への不安が足を引っ張った。AIブームの失速も懸念される。

アメリカの株式市場に不安が積み重なっている。S&P500種株価指数の17日の終値は1週間前比1.70%高。前週(6-10日)の急落の7割程度を取り戻すにとどまった。米国と中国の関係悪化に加え、地方銀行の経営の健全性をめぐる懸念も浮上し、投資家心理が急激に冷え込んだ結果だ。また、株式市場を支える人工知能(AI)ブームは継続への期待が強まっているものの、半導体大手NVIDIA(エヌビディア)の株価は週次での横ばいどまりで、半導体株全体の活況にはつながっていない。一方、大手ハイテク各社は22日以降、2025年7-9月決算を発表する予定で、内容次第では株式市場のムードを明るくする可能性もある。ただ、AIサービスでの競争が激化する中、投資家の視線は厳しさを増しているとみられ、S&P500の今後の見通しには急落リスクもつきまといそうだ。
アメリカのS&P500は週次1.70%高 前週の急落の7割を回復
S&P500(SPX)の17日の終値は前日比では0.53%高の6664.01だった。ブルームバーグによると、週次での上昇幅は111.50ポイントで、ドナルド・トランプ大統領が中国に対する100%追加関税に言及したことが悪材料視された前週の急落での下落幅(163.28ポイント)の68%を取り戻した。とはいえ、8日につけた最高値(6753.72)からは1.33%安の水準で、株価上昇の勢いが増したとはいえなさそうだ。

地銀経営への不安が急浮上 地銀株の株価指数が急落
S&P500の反発の足を引っ張ったのは地方銀行経営への懸念だ。ユタ州に拠点を置くザイオンズ・バンコープ(ZION)は15日、米証券取引委員会(SEC)に提出した資料の中で、2つの融資先が契約に際して不正を行っていた可能性があると公表。これに伴い5000万ドルの損失を計上したと明かした。またアリゾナ州の地銀、ウェスタン・アライアンス・バンコープ(WAL)は16日、SECへの提出資料で、融資先による詐欺行為があったとして8月に訴訟を起こしたことを明かしている。
こうした中、金融市場では地銀株が急落。地銀株の値動きを表す株価指数、S&P地方銀行セレクト・インダストリー指数は15日に前日比2.24%安、16日は6.31%安となった。S&P500も16日に0.63%安となっている。地銀経営をめぐっては2023年3月10日に起きたシリコンバレーバンク(SVB)の経営破綻をきっかけに金融市場が動揺した記憶が新しい。SVB破綻前後の3月7日から13日にかけてはS&P500は4.76%下落しており、足元の地銀経営をめぐる悪いニュースは投資家の不安をかきたてたようだ。

投資家心理が急激に悪化 強気な個人投資家の割合は急落
実際、ウォール街の「恐怖指数」と呼ばれるVIX指数(VIX)は16日に急上昇した。シカゴ・オプション取引所によると、VIXの16日の終値は前日よりも22.63%高い25.31となり、4月24日(26.47)以来の高水準となった。VIXは米中関係の緊張が高まった10日に20を超えた後、高止まりが続いている状況だ。VIXはS&P500のオプション取引の動向から算出され、値が大きいほど、今後の値動きが荒くなることへの警戒が強いことを示す。

また、個人投資家協会(AAII)が16日に発表した週次調査によると、今後6か月の間に株価が上昇すると予想する「強気」な投資家の割合は15日時点で全体の33.7%。1週間前の45.9%から大きく低下した。逆に株価下落を予想する「弱気」な投資家の割合は46.1%となり、1週間前(35.6%)から急増している。強気派の割合は、S&P500が9月の不振のジンクスを跳ね返して好調を維持する中、前週まで4週連続で40%を超えていたが、やはりムードが一変したといえる。

AIブームへの期待は継続 エヌビディアは週次で横ばいどまり
さらにS&P500の上昇を後押ししてきたAIブームに対する株価の反応も鈍くなってきた。半導体受託製造大手の台湾積体電路製造(TSMC、TSM)は16日の7-9月期決算発表に際して、2025年通期の総収入の見通しを上方修正。魏哲家(シーシー・ウェイ)CEOは決算会見でAI関連需要は「3か月前に考えていたよりはるかに強い」と述べた。しかし株式市場でのAIブームを象徴するエヌビディアの株価(NVDA)は17日までの週次で0.03%高。エヌビディアのライバルにあたるアドバンスド・マイクロ・デバイセズ(AMD)の株価は4週続伸の週次8.46%高となっているが、AIブームが半導体株全体を押し上げる構図とはなっていない。


ただ、大手ハイテク企業の経営環境は厳しさを増している。対話型AIサービスChatGPTで知られるオープンAIはこれまでに26ギガワット(2600万キロワット)相当のデータセンターを展開する構想を公表。オープンAIは大手ハイテク各社のAIサービスにとってのライバルといえ、各社が対抗策として設備投資の積み増しに意欲を見せるなどすれば、利益圧迫への懸念が株価を下落させる可能性もある。時価総額が大きい大手ハイテク株はS&P500への影響度も大きいだけに、決算発表がS&P500の急落のきっかけになる展開も想定されそうだ。
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