ドル円、円安再燃の見通し低下? 149円台 米国不安と自維連立で
ドル円相場は一時149円台。米国経済の見通し不安や財政規律を重視する維新の会と自民党の連立の可能性が円安にブレーキをかけている。

ドル円相場で高市トレードによる円安が止まっている。日本時間17日昼の取引では1ドル=149円台をつけ、約2週間ぶりの150円割れとなった。公明党の連立離脱表明で、自民党の高市早苗総裁の首相就任に暗雲が立ち込めたことや、米国経済をめぐる不安がアメリカの長期金利(10年物国債利回り)を押し下げていることが要因だ。一方、足元の日本の政局をめぐっては日本維新の会が自民党との連立に前向きな姿勢を示しており、一転して高市政権誕生の可能性が高まっていることは円安の再燃も意識させる。ただ、維新の会は財政健全化を重視する立場で、ドル円相場の今後の値動きをめぐっては、高市氏の積極財政を材料視した円安観測の後退も考えられる。また日本銀行は急激な円安を警戒しているもようで、年内利上げの可能性が残っていることも円高圧力として働いていそうだ。
ドル円相場は一時149円台 8か月ぶりの円安水準から後退
ドル円相場(USD/JPY)は日本時間17日午前12時55分段階で1ドル=149.96円で取引されている。直前には149.90円をつける場面もあった。ドル円相場では4日の自民党総裁選挙で、積極財政を掲げ、日銀の利上げを牽制したこともある高市氏が勝利したことを機に円安が進行。ブルームバーグによると、10日には一時、153.27円をつけ、2月13日(154.67円)以来の円安水準となった。17日の水準は約1週間で3.37円の円高が進んだことになる。

公明の連立離脱で高市トレード逆回転 米中関係悪化や米地銀不安もドル安要因
円高進行のきっかけは10日午後3時35分ごろに伝わった公明党が自民党との連立を解消するとのニュースで、高市氏の首相就任の可能性が弱まったこと。また米国のドナルド・トランプ大統領は10日、中国がレアアースに関する輸出規制を強める考えを示したと公表し、中国製品に100%の追加関税を課す方針を表明。その後も米中関係の緊張は続き、米国経済の見通し不安が円高を後押しした。
また、ブルームバーグによると、16日には米地銀のザイオンズ・バンコープと、ウエスタン・アライアンス・バンコープが不正の疑いがある融資の問題を公表。米国の金融システムへの不安が意識された。17日には米国の長期金利が一時、3.944%まで低下し、トランプ氏の相互関税発表が金融市場を揺らしていた4月4日(3.880%)以来の低水準となった。日米金利差は16日の終値段階で2.321%ポイントとなっており、2022年4月4日(2.188%ポイント)以来の小ささだ。


維新の会と自民の連立は高市トレードにブレーキ 財政健全化を重視
一方、日本の政局をめぐっては維新の会が自民党との連立に前向きな姿勢を示しており、21日に見込まれる首班指名を経て高市政権が誕生する可能性が再浮上している。維新の会の藤田文武共同代表は16日の高市氏との政策協議後の記者会見で「信頼関係が一段上に進んだ」と言及。吉村洋文代表(大阪府知事)も16日にテレビ番組に相次いで出演し、「高市氏から熱量を感じた」としている。高市氏が首相に就任して政権運営を担うことが固まれば、ドル円相場では改めて高市トレードによる円安が進行する可能性もある。
ただ、維新の会は自民党との連立協議の中で、社会保障改革を進めることを、副首都構想や議員定数削減とならぶ「絶対条件」として挙げており、高市氏側も受け入れる姿勢を示していると報じられている。また、維新の会は財政健全化を重視し、財政支出拡大には慎重な立場をとってきた。このため自民党と維新の会の連立で高市政権が誕生することになったとしても、高市氏の積極財政が日本の財政の健全性を損なうことが円安につながるとのシナリオは弱まることも想定される。
日銀からは「利上げを判断する局面」との声も 円安急進を牽制か
また、日銀の植田和男総裁は訪問中の米首都ワシントンで16日、主要7か国(G7)、20か国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議後の記者会見で、経済が日銀の見通し通りに進むことの確度が高まれば、金融緩和の度合いを修正するとの見方を改めて強調。田村直樹審議委員は16日の沖縄での講演で「利上げを判断するべき局面にきている」と述べた。日銀は自民党総裁選後に進んだ急激な円安を警戒しているとも考えられる。
ブルームバーグによると、17日の金融市場では29、30日の金融政策決定会合では利上げが見送られるとの見方が有力。一方、12月決定会合後の政策金利の水準は現状よりも0.120%ポイントほど高い0.620%と見積もられており、日銀の年内利上げの可能性が残っていることもドル円相場での円高圧力として働いていそうだ。

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