ポンド円、17年ぶり高値届くか 日英財政明暗 日銀利上げで減速も
ポンド円相場は一時207円台で、2008年以来のポンド高も意識される。日英の財政見通しへの評価が明暗を分けているが、日銀の利上げ見通しは円高要因だ。
ポンド円相場で17年ぶりの高値が視野に入っている。ポンド円相場は日本時間1日の取引で1ポンド=205円台で推移。前週末28日までは207円台で推移する場面もあった。1年5か月前につけた208円台へと入り込む値動きが出れば、2008年8月以来のポンド高水準に到達する。ポンド高の背景にあるのは、日本とイギリスの財政状況をめぐる思惑の違い。10月に発足した高市早苗政権には積極財政が円の信頼度を弱めるとの懸念がくすぶっているのに対し、英国のキア・スターマー政権が11月26日に発表した秋季予算案は財政健全化に配慮したポンド高要因と受け止められた。一方、日英の金融政策をめぐっては、日本銀行の利上げとイングランド銀行(BEO)の利下げが近づいているとの見方が優勢。このため、これまで進んできた17年ぶりのポンド高に向けた値動きにはブレーキがかかることが想定されるが、円安再燃の可能性も消えていない。
ポンド円相場は一時、207.22円 2008年以来のポンド高水準の可能性も
ポンド円(GBP/JPY)は日本時間1日午前12時25分段階で1ポンド=205.67で取引されている。ブルームバーグによると、27日朝には207.22円を付け、2024年7月11日につけた208.11円以来のポンド高水準となった。ポンド円相場がこの1年5か月ぶりの高値を超えて上昇すれば、リーマン・ショック前の2008年8月12日につけた210.63円以来、17年4か月ぶりのポンド高水準となる。
高市政権発足前後の円安が要因 ポンドの下落率を超える弱さ
ポンド円相場でのポンド高の要因のひとつは高市政権の発足で進んだ円安だ。ブルームバーグによると、円の対ドル相場は11月28日のニューヨーク市場の終値ベースで、高市政権発足の起点となった自民党総裁選挙前日(10月3日)との比較で5.58%の円安。同じ期間、ポンドの対ドル相場(GBP/USD)も1.82%のポンド安が進んでいるが、円の下落率の大きさがポンド円相場でのポンド高となって現れた形だ。
日英の財政政策への評価で明暗 英国の秋季予算案は財政健全化に配慮
金融市場では高市氏が掲げる積極財政が財務の健全性を損なうとの懸念がくすぶる。ブルームバーグによると、日本の長期金利(10年物国債利回り)は国債価格の下落の結果として上昇が継続。1日には一時、1.847%となり、2008年6月17日(1.895%)以来の高さを更新した。財政悪化懸念の強まりは日本経済への信頼度を弱める要因といえ、11月17-21日週には、日本国債と円と日本株が同時に売られる「トリプル安」が発生している。
高市政権の財政政策への不安とは対照的に、英国の財政状況をめぐっては信頼感が維持された。英国政府が11月26日に発表した秋季予算案は財政の健全化に配慮した内容。英予算責任局(OBR)によると、財政赤字解消の目標年度である2029-2030年段階では、220億ポンドの財政黒字が見込まれるという。3月段階の予想黒字額(120億ポンド)から、財政の余力が大幅に増した形だ。ブルームバーグによると、26日の金融市場ではポンドの対ドル相場で0.57%のポンド高が進み、円の対ドル相場の0.27%の円安と明暗を分けた。
日銀の12月利上げ見通しが拡大 利上げ確率は76%に
一方、日英の金融政策をめぐっては、円高圧力とポンド安圧力が意識されている。日本銀行の植田和男総裁は1日、愛知県で行われた地元経済界との懇談会でのあいさつで、12月18、19日の金融政策決定会合ついて「利上げの是非について適切に判断したい」と言及。為替相場の変動については、「予想物価上昇率の変化を通じて基調的な物価上昇率に影響する可能性があることに留意が必要」と述べた。足元で進んできた円安が、輸入物価が上昇するとの予想につながれば、企業による価格引き上げが進みやすくなるとの警戒を示したといえそうだ。また賃上げ動向についても、「経団連は賃上げの『さらなる定着』という方針を強く打ち出している」としており、物価上昇と賃上げが同時に進む環境が整ってきているとの見方を示唆した。
ブルームバーグによると、1日の金融市場では日銀の12月利上げ見通しが拡大。金融市場で見込まれる12月決定会合後の政策金利の水準は午前12時25分段階で0.667%となり、前週末の0.623%から上昇した。利上げ確率は76%と見積もられている。
イングランド銀行は12月の利下げが濃厚 ポンド高進行は円安次第か
これに対して英国の中央銀行にあたるイングランド銀行(BOE)は12月18日に結果が発表される理事会での利下げが見込まれている。ブルームバーグによると、前週末の金融市場では12月理事会後の政策金利は3.737%と見込まれ、現在の政策金利(4.00%)から0.263%ポイント低い水準だ。利下げ確率は93%とみられている。BOEは11月6日に結果を発表した理事会では、2会合連続で政策金利を維持したが、賛成5人に対して4人が0.25%利下げを求める僅差での決定だった。声明文では物価上昇率は「ピークをつけたと判断される」としたうえで、「政策金利は段階的な引き下げの道筋をたどり続けるだろう」とも言及している。
このため、ポンド円相場の今後の見通しをめぐってはポンド高にブレーキがかかる展開が想定されそうだ。ただ、日銀の利上げが12月の一度だけに留まるとの見方が意識された場合や高市政権の積極財政への懸念が改めて強まった場合には、ドル円相場での円安がポンド円相場でのポンド高を後押しする可能性も残っている。
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