ドル円見通し(10/31):円安進行で8か月半ぶり154円台、日米金融政策に不透明感
今日のドル円展望。不透明感漂う日銀の利上げと米利下げの見通し。注目のチャート水準についてIG証券のアナリストが解説。
 
 要点
円安進行でドル円が8か月半ぶりに154円台へ上昇。上昇トレンドを維持する場合は、154.40の突破が焦点に。この水準をブレイクすれば、155円のトライが視野に入る。一方、下値の焦点は153円の維持となろう。153.25のサポート転換に注目。4時間足のRSIとストキャスティクスは買われ過ぎの水準にあるが、日米金融政策の不透明感と米中懸念の後退がドル円の上昇トレンドを支える要因となろう。
ドル円 8か月半ぶり154円、日銀年内利上げに不透明感
30日の外為市場でドル円(USD/JPY)が154円台へ上昇した。2月中旬以来およそ8か月半ぶりの高値水準154.45を付ける局面が見られた。
ドル円の日足チャート:2025年以降
 
 TradingView提供のチャート
30日の金融政策決定会合で日銀は、7対2の賛成多数で政策金利(無担保コール翌日物レート)の誘導目標を0.5%で据え置くことを決めた。据え置きは6会合連続。高田創、田村直樹両審議委員は9月会合に続き金利の据え置きに反対し0.75%への利上げを主張した。
会合後の定例会見で日銀の植田和男総裁は、物価目標が実現する確度が少しずつ高まっていると述べた。一方、来年の春季労使交渉(春闘)の初動のモメンタム(勢い)と米関税の不確実性を見極める姿勢を示した。植田総裁の会見を受け円安がさらに進行し、海外時間にドル円は154円台へ上昇した。
OIS(オーバーナイト・インデックス・スワップ)市場では年内の利上げ見通しが揺れている。現状、12月利上げの確率は47%前後にある。一方、1月の利上げ確率は37%前後にあり、12月に利上げを見送っても1月までの利上げを織り込む状況にある。だが今後の情勢次第で、少なくとも年内利上げの見通しを巡る不透明感がさらに強まる可能性がある。その場合は円安の要因となろう。
日銀 利上げ確率の推移
 
 ブルームバーグのデータで作成 / OIS市場の確率 / 10月31日 13時時点
米利下げ見通しにも不透明感
30日の米中首脳会談では、中国がレアアースの輸出規制を1年間停止し、かつ米国産大豆の輸入を拡大する一方、米国が100%の追加関税を取り下げるなど関係改善に向けて前進した。米中懸念の後退は米ドル高の要因だが、筆者はもう一つの米ドル高要因に注目している。12月の米利下げの不透明感である。
29日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で米連邦準備制度理事会(FRB)は、政策金利を0.25%引き下げた。しかし利下げの判断を巡り、米カンザスシティ連銀のシュミッド総裁が政策金利の据え置きを主張し、政策判断で意見が割れた。
定例会見でパウエルFRB議長は今回の会合で、12月会合での(政策の)進め方についてメンバーの間で強く異なる見解があったと述べた。また、12月会合での利下げは既定路線ではないとし、追加の利下げを意識する市場をけん制した。
OIS市場では、完全に織り込んでいた12月の利下げ確率が68%前後へ低下している。今後の要人発言、雇用やインフレに関連した経済指標(政府機関閉鎖が解除される場合)の内容次第で、さらに不透明感が強まることが予想される。利下げの不透明感は米ドル高の要因となろう。
米FOMC 12月利下げ確率の推移
 
 ブルームバーグのデータで作成 / OIS市場の確率 / 10月31日 13時時点
ドル円のチャート分析
154.40レベルの突破
本日もドル円(USD/JPY)が上昇トレンドを維持する場合は、以下にまとめたレジスタンスラインの攻防に注目したい。
最初の焦点は、27日のIG週間為替レポートで取り上げたフィボナッチ・リトレースメント76.4%の水準154.40レベルの突破となろう(日足チャート、赤矢印を参照)。昨日の上昇を止めたこのテクニカルラインの突破に成功すれば、155.00ラインが視野に入る。
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海外時間で米ドル買いと円売りが重なる場合は、昨日と同じく上昇の拡大を想定したい。155.00レベルをブレイク後にこのラインがサポート転換となれば、フィボナッチ・エクステンション100%の水準155.41レベルを視野に上昇拡大を想定したい。
注目の上値水準
・155.41:フィボナッチ・エクステンション100%
・155.00:節目の水準
・154.40:フィボナッチ・リトレースメント76.4%
153円の維持
4時間足チャートのRSIとストキャスティクスは買われ過ぎの水準にある。ドル円(USD/JPY)の下落局面では、直近高安の半値戻しにあたる153円の維持が焦点となろう(4時間足チャートを参照)。
153円を視野に下落が拡大する場合は、レジスタンスラインとして意識された153.25レベルの攻防に注目したい(4時間足チャートを参照)。この水準がサポート転換となれば、来週も154円の攻防を意識する展開が予想される。一方、下方ブレイクする場合は、153.00(半値戻し)のトライを意識したい。
ドル円が153円を下方ブレイクする場合は、10月以降レジスタンスとしてもサポートとしても意識された152.50レベルのトライを意識したい。本日欧州時間にトレンドチャネル下限が152.50レベルと交差する。
注目の下値水準
・153.25:サポート転換の可能性あり
・153.00:半値戻し
・152.50:サポートライン、トレンドチャネル下限
ドル円の日足チャート:2025年以降
 
 TradingView提供のチャート
ドル円の4時間足チャート:10月以降
 
 TradingView提供のチャート
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