ドル円、高市円安157円台 1か月半で10円 政府日銀の次の一手は?
ドル円相場は10か月ぶりの円安水準。高市政権発足が円安材料とみなされている。今後は日銀の金融政策の見通しが注目されそうだ。
ドル円相場で円安が急進している。ドル円相場は日本時間21日の取引で1ドル=157円台後半をつけ、約10か月ぶりの円安水準。10月の自民党総裁選挙前の147円台から約1か月半で10円の円安が進んだことになる。高市早苗政権の積極財政が財務の健全性を損なうとの見方が円安要因となっているほか、日本政府の為替介入への警戒感が薄れたことも円安材料となった。こうした中、片山さつき財務相は21日に急激な円安に憂慮を示し、為替介入の可能性に言及。日本銀行の植田和男総裁も21日、円安が物価上昇を加速させる可能性を注視すると述べ、政府と日銀がともに円安への警戒を強めている形だ。ただ、高市政権発足後の円安は米国経済の安定を材料視したドル高でも後押しされており、政府による為替介入は正当化しづらい面もある。今後のドル円相場の見通しは、日銀の12月利上げをめぐる思惑にもかかってきそうだ。
ドル円相場は一時157.89円 自民党総裁選以降で10円の円安進行
ドル円相場(USD/JPY)は日本時間21日午後1時55分段階で1ドル=157.28円で取引されている。ブルームバーグによると、午前0時台には157.89円をつけ、1月15日(158.08円)以来の円安水準となった。ドル円相場は自民党総裁選前日の10月3日には147円台で取引されていたことを踏まえれば、1か月半で10円の円安が進んだことになる。
高市政権の財政政策が円安材料に 円の弱さ際立つ
円安の要因のひとつは高市政権の積極財政への懸念だ。政府は21日の臨時閣議で21.3兆円の総合経済対策を決定しており、金融市場ではこのところ、財政悪化懸念で長期国債の価格が下落し、結果として長期金利(10年物国債利回り)が上昇。同時に、財政悪化懸念を理由とした円売りも進んでいる。また19日夕方に行われた片山氏と植田氏に城内実経済財政相を加えた三者協議後、片山氏が「為替介入について具体的な話は出なかった」と述べたことも円安材料になった。
こうした中、高市政権発足前後の外国為替市場では円の弱さが際立っている。ブルームバーグによると、円の対ドル相場の20日のニューヨーク市場の終値は、自民党総裁選前の10月3日終値との比較で6.3%の円安。ポンドの対ドル相場(GBP/USD)が3.0%のポンド安、豪ドルの対ドル相場(AUD/USD)が2.4%の豪ドル安、ユーロの対ドル相場(EUR/USD)が1.8%のユーロ安に留まっているのと比べて、円安の度合いが強いことが分かる。
片山財務相が為替介入に言及 日銀の植田総裁も円安を注視
このため政府や日銀は足元の円安に警戒感を強めているようだ。片山氏は21日午前の閣議後会見で、為替介入という選択肢について「当然考えられる」と言及。ドル円相場での円安進行にストップをかけた。また植田氏も21日の衆院財務金融委員会での答弁で、円安について「物価への影響を注意深くみていく」と述べ、金融市場では日銀が12月に追加利上げするとの観測がわずかに強まった。ブルームバーグによると、21日の金融市場で見込まれている12月18、19日の金融政策決定会合後の政策金利の水準は一時0.536%となり、前日よりも0.006%ポイント高い水準になる場面があった。
米国経済は大崩れせず 9月雇用統計はドル高材料に
ただ、円安の背景には米国経済が大崩れしてないという事情もあり、政府による為替介入は大義名分が立たないともいえる。米労働省が20日に1か月半遅れで発表した9月雇用統計は非農業部門の就業者数が前月比11.9万人増となり、ブルームバーグがまとめた市場予想の5.2万人を上回った。同時に7月と8月の就業者数の増加幅は3.3万人下方修正されたほか、失業率が4.4%となって市場予想(4.3%)を超えるという悪材料もあったが、FX市場では全体としてはドル高要因とみなされたようだ。ブルームバーグによると、20日のFX市場では円のほか、豪ドルやユーロもドルに対して安くなった。
日本の物価上昇は加速 日銀の12月利上げに向けた情報発信が焦点に
一方、日銀の金融政策に関しては、12月利上げ見通しが強まる余地がありそうだ。21日に発表された10月の消費者物価指数(CPI)は総合指数と、生鮮食品を除くコア指数の伸び率がいずれも前年同月比3.0%となり、ともに2か月連続で前月から物価上昇が加速。また生鮮食品とエネルギーを除くコアコア指数の伸び率は3.1%となり、4か月ぶりに物価上昇率が前月よりも高くなった。1か月半で10円も進んだ円安が輸入物価の上昇を通じて国内物価に上昇圧力をかけることを考えれば、2026年春闘に向けて賃上げの動きが強まった場合に、日銀の12月利上げが正当化されるとの観測が広がる可能性がある。
ドル円相場の今後の見通しをめぐっては、米国経済の労働市場の悪化が意識されるまでは円安圧力が続く展開が想定される。日本政府が為替介入の可能性を示唆する口先介入で円安進行のペースを遅らせる可能性はあるものの、円高方向への値動きがでるかどうかは日銀の利上げをめぐる情報発信にかかってきそうだ。
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