ドル円相場は161円台。片山財務相の年金基金の国内運用を後押しするとの発言が材料視された。米国の6月CPIも波乱要因になりえる。
ドル円相場で円高が急進した。ドル円相場は日本時間10日午後の取引で1ドル=161円台で推移。162円台後半という39年半ぶりの歴史的な円安水準から後退した。片山さつき財務相が年金基金の日本の金融資産への投資を後押しする考えを示し、円安見通しが揺らいだことが要因だ。また、ホルムズ海峡での緊張再燃を受けた原油価格の上昇が一服したことも円安圧力を弱めている。一方、金融市場では高市早苗政権が日本銀行の利上げに否定的だとの見方も根強く、引き続き円安材料として意識されている。さらに高市政権の積極財政路線は長期金利(10年物国債利回り)の上昇と円安を併発させており、このところのFX市場では主要通貨の中での円の弱さも感じられる。こうした中、ドル円相場の今後の見通しをめぐっては、14日に発表される米国の6月の消費者物価指数(CPI)が波乱のきっかけになりえる。ちょうど2年前にあたる2024年7月にはCPI発表とあわせた日本政府による為替介入が効果を上げた経緯もあり、今回の6月CPIも日本政府にとって為替介入の好機となるとのシナリオも考えられそうだ。
ドル円相場(USD/JPY)は日本時間10日午後2時7分段階で1ドル=161.51円で取引されている。ブルームバーグによると、午前11時台には161.29円をつけ、午前6時台につけた162.43円から1.14円の円高が進んだ。ドル円相場は1日に162.84円となって、39年半ぶりの円安記録を更新した後、2日発表の米国の6月雇用統計の弱さを受けて160.64円まで円高に振れる場面もあった。10日の値動きは改めて円高方向への動きが出た形だ。
円高進行のきっかけとなったのは、日本政府が示唆した新たな施策から円安阻止の狙いが感じられたこと。片山氏は10日の閣議後記者会見で、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)などの年金基金の運用に関し、「日本の金融資産にさらに投資してもらう方向で後押しする方策を追求したい」と発言。2026年3月末段階で293兆円もの資産を運用するGPIFが国内株式や国内債券への投資の比率を引き上げれば、円買いの圧力が増す要因になるとの筋書きが材料視された。実際に年金基金が国内投資を増やすことになれば、金融市場で中長期的な円高材料として受け止められる可能性もありそうだ。
また、このところの円安要因となっていた原油価格の反発には一服感も出ている。ブルームバーグによると、原油先物市場の指標価格であるWTI(8月渡し、WTI原油)は日本時間9日、ドナルド・トランプ大統領がイランとの停戦が打ち切りになったとの見方を示したことなどを受けて、1バレル=76.08ドルまで上昇。金融市場では原油高が物価上昇圧力を高めることでFRBの早期利上げの可能性が高まったとの見方が強まり、ドル円相場での円安要因となった。ただ、WTIは日本時間10日の取引では一時71ドル台まで下落しており、一方的な原油高にはつながっていない。9日の金融市場では28、29日の連邦公開市場委員会(FOMC)後のFRBの政策金利の水準は3.685%と見込まれ、5営業日ぶりに前日よりも低くなった。
一方、ドル円相場では高市政権の経済政策を円安材料とみなす向きも根強い。高市政権が6月30日に示した骨太の方針の原案では「デフレに後戻りすることのない物価安定の下での持続的な経済成長」を掲げ、日銀が適切な金融政策を行うことが「非常に重要」と指摘。日銀の利上げを牽制したとみなされ、39年半ぶりの円安が加速した。高市政権は文言の修正を検討していると報じられているが、円安の流れを食い止める効果は乏しいようだ。
さらに骨太の方針の原案で示された積極財政路線は、金融市場では日本の財政の健全性への疑念を強める材料と受け止められ、長期金利の上昇を招いた。ブルームバーグによると、長期金利の9日の終値は2.865%で、1997年5月28日(2.880%)以来、29年1か月ぶりの高水準となった。結果として、ドル円相場の背景となる日米の長期金利の差は9日に1.688%ポイントとなり、6日につけた2022年3月7日以来の小ささ(1.651%ポイント)に迫っているが、日本の財政不安を要因とした金利差縮小は円高効果を生み出してはいない。
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こうした中、ドル円相場の今後の見通しをめぐっては、米国東部時間14日午前8時30分(日本時間14日午後9時30分)に発表される6月CPIが注目される。米国の物価上昇に過熱感がみられれば、FRBの利上げへの期待が改めて高まり、円安材料として意識されることになりそうだ。
逆に米国の6月CPIが弱い結果となればFRBの利上げを遠ざける要因といえ、2日の6月雇用統計発表時と同様に円高が進む材料となる。ドル円相場では2年前の2024年7月11日、6月CPIが市場予想を下回ったタイミングで日本政府による為替介入が行われ、円高を急進させたこともある。ブルームバーグによると、この日のドル円相場では、CPIが発表される直前につけていた161.60円から、発表の約30分後には157.44円まで円高が進んでいる。足元のドル円相場では日本の年金基金の運用方針をめぐる思惑が円高要因として働いていることも考えれば、日本政府がCPIに合わせた為替介入で円高を一気に押し進めようとするシナリオも意識されそうだ。
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