ギリシャリスク以上に注視すべきリスク要因

7月8日(水)に公表された米連邦公開市場委員会(FOMC)議事録では、同国の経済成長の阻害要因&金融政策の方向性に影響を与える要因として、いくつかの海外リスクについて言及してきました。その中でも特に注視すべきリスクとは?

落ち着いた状況を保つ南欧利回り

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7月5日(日)、ギリシャは国民投票で欧州連合(EU)などが求める緊縮策を否決しました。これにより市場では緊縮策に直面している南欧諸国への波及リスクとユーロ売りリスクへの警戒感が強まっています。

しかし、今回のギリシャショックがグローバルリスクへ発展する可能性は現時点で低いと考えます。その理由は、ギリシャの国民投票の結果を受けて尚、欧州債券市場では急激な『南欧国債売り(=利回り急上昇)』の展開とはなっていないからです。欧州債務危機がピークに達した2011年後半~2012年夏までのイタリアやスペインの10年債利回りは、4%~7%台の水準で乱高下しました。しかし、現在はギリシャのユーロ圏離脱リスクが当時以上に高まっているにもかかわらず、両国の10年債利回りは2.5%以下で安定的に推移しています。
なぜ、2012年当時のようなヒステリックな反応が見られないのでしょうか?その理由として考えられるのが、2012年以前とは違い現在は金融安全網の充実化が進んだこと、そして民間投資家(金融機関)が保有するギリシャ国債の割合が低下していることです(現在は全体の12%程度)。これら要因が投資家の間で意識されているからこそ、ギリシャの国民投票後も欧州債券市場ではヒステリックな反応が見られず、南欧国債利回りは安定的に推移していると考えられます。そしてこの状況が続く限り、「ギリシャリスク→南欧リスク→欧州リスク→グローバルリスク」という負の連鎖が発生する可能性は低いと考えられます。


ギリシャリスク以上に注視すべきリスク

筆者は、ギリシャリスクよりも注視すべきリスクがあると考えています。下のユーロ対資源国通貨(豪ドル・NZD・カナダドル・ノルウェークローネ)の変動を比較したチャートを参照すると、ギリシャリスクに直面するユーロ以上に資源国通貨全般に売り圧力が強まっていることがわかります。背景にあるのは、資源価格の低迷です。7月に入りNY原油先物市場は1バレル=50ドル前半まで急落し、上海先物取引所の銅相場は約6年ぶりの安値水準まで急低下し、さらに中国の青島港に荷揚げされる鉄鉱石 (鉄分62%)価格も1ドライトン当たり44.59ドルと、2009年5月以降以来となる安値を付ける展開となっています。

【ユーロ対資源国通貨】

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では、資源価格全般がここまで急落した原因とはなんでしょうか?それは中国リスクです。冒頭で述べた米FOMC議事録でもこのリスクについて議論されていたことが判明しています。

中国は現在、自国の経済政策の転換を模索している最中です。第12次5ヶ年計画(2011~2015年)は、輸出主導型から内需主導型の経済構造への転換に力点を置いた内容となっています。内需が順調に拡大するならば同国の輸入量は増加するはずです。膨大な国内貯蓄が投資や消費の原資となるからです。しかし、実際は経済政策の転換による成長停滞を背景に、同国の輸入量は昨年11月以降から縮小傾向が続いています。このためマーケットの一部では、同国政府が成長率目標として掲げる7.0%の維持は難しいのではないか?との懸念が出始めています。その懸念をさらに強めたのが上海株式市場の急落(今年高値5178.19ポイントから30%以上の急落)でした。この事態は6月の米FOMCが開催された後に発生しました。今後も中国株式市場の不安定化が継続すれば、同国の社会不安とそれに伴う景気停滞を招きかねません。中国リスクが今以上に深刻化すれば、イエレンFRBの金融政策の方向性にも影響を与えるでしょう。事実、FOMC議事録公表後の米利上げ確率(CME-FED WATCH)では、9月の利上げ確率が11%まで、12月のそれも米雇用統計発表前の57%から43%まで低下しています(7/9時点)。

【資源価格の低迷と中国リスク】

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NZD円にご注意

中国がリスク回避の震源地となれば、外為市場では円高圧力が強まる展開が想定されます。その場合、円相場の中で注視したい通貨ペアがNZD円です。何故か?ニュージーランドと日本の置かれた現在の状況を俯瞰すると、NZD円はさらに下値を模索する可能性があるからです。
まずニュージーランド経済で注目すべきは下図の通り中国リスクを背景に交易条件が悪化傾向にあることでしょう。この状況が続けば内需がさらに縮小します。そうなれば、ニュージーランド準備銀行(RBNZ)が追加の利下げを行ってくるのではないか、との思惑が台頭しNZD売り圧力を強めるでしょう。
一方、日本では125円手前で金融政策のキーマンである麻生財務相・黒田日銀総裁が揃って円安けん制発言をしたことで、年内の追加緩和の思惑が後退しています。また、円売り要因だった貿易赤字額も2014年1月を境にピークアウトしたため、経常収支も改善傾向にあります。つまり、円買い圧力が強まり易い環境が日本国内で醸成されつつあるということです。これら要因に加え、中国リスクを背景に米利上げが2016年にずれ込む可能性が高まれば、ドル円での下落圧力も強まるでしょう。 上述したNZD売り&円買い要因が重なった場合、NZD円は2009年2月の安値レベルを起点とした長期サポートラインをトライするかが注目されます。

【悪化傾向にある交易条件】

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【NZD円のチャートポイント(月足)】

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