原油価格、急落 WTIは2日で14%安 中東停戦で市場混乱に節目
WTIはイスラエルとイランの停戦合意を受けて急落。今後の見通しをめぐっては需要やOPECプラスの動向が注目されそうだ。

原油価格が急落している。原油先物市場の指標価格であるWTI(翌月渡し)は日本時間25日未明に1バレル=64.00ドルを記録。イスラエルとイランをめぐる中東情勢の改善を受け、2日間で約14%安となった。アメリカのドナルド・トランプ大統領が24日朝に発表した両国の停戦合意は引き続き維持されているもようで、投資家心理は落ち着いている。トランプ氏はイランから中国への原油輸出を認める方向性も示しており、原油価格の下落要因となっている。原油価格の今後の見通しをめぐっては再び需要と供給のバランスが意識されるとみられ、原油需要に関する経済指標やOPECプラスの動向をめぐる報道で原油価格が動く可能性がありそうだ。
WTIは64.00ドルまで下落 2日間かけて13.90%安
WTI(翌月渡し、WTI原油)は日本時間25日午前1時55分に1バレル=64.00ドルを記録した。ブルームバーグによると、WTIは約48時間前にあたる23日午前1時30分ごろには74.33ドルをつけていたが、約7時間後の午前8時台には64.38ドルまで下落していた。25日の安値は丸2日かけてWTIの下落率が13.90%安まで深まったことを意味する。

イスラエルとイランが停戦合意 WTIはイスラエルのイラン核施設攻撃前の水準に
原油価格を急落させたのは中東での緊張緩和だ。中東情勢をめぐっては日本時間22日朝に米国がイランの核施設に攻撃を加えたことが公表され、週明け23日の原油先物市場ではWTIが1バレル=78.40ドルまで急騰。しかし24日未明に伝わったイランからカタールの米軍基地への報復攻撃は限定的と受け止められ、投資家の安心感が原油価格の下落につながった。さらにトランプ氏は24日朝にはイスラエルとイランが停戦に合意したと公表し、原油価格の下落が勢いづいた。
WTIの25日の水準は13日のイスラエルによるイラン核施設攻撃前の水準に戻った形。中東情勢悪化をめぐる原油市場の混乱はひとつの節目を迎えた。

イスラエルは軍事作戦完了を表明 トランプ氏はイランの中国向け原油輸出容認か
イスラエルとイランの停戦合意はトランプ氏の公表後も維持されているもようだ。イスラエルのベンジャミン・ネタニヤフ首相は日本時間25日朝のフェイスブックへの投稿でイランに対する12日間の軍事作戦の結果、歴史的な勝利を収めたと宣言。イランの核開発施設や弾道ミサイルの製造施設を破壊したなどとし、「作戦は完了した」と述べた。ブルームバーグによると、イランのアッバス・アラグチ外相もイスラエルからの攻撃が終われば、イランからの攻撃を続けることはないと述べたという。
こうした中、トランプ氏はイランに対する圧力の緩和も示唆した。トランプ氏は米国東部時間24日午前9時台に自身のSNSトゥルースソーシャルへの投稿で「今から中国はイランから原油を買い続けることができる。米国からも多くを買ってくれることを願う」と述べた。米国はこれまでイラン産原油を輸入していた中国の石油精製施設を経済制裁の対象に追加するなどし、「イランの原油供給網や輸出を破壊する」としていたが、態度を軟化させたようだ。
イランの原油輸出の9割は中国が購入しているとされ、イラン南岸とアラビア半島の北側に挟まれたホルムズ海峡を通過する船舶で輸出されている。原油市場ではこれまで米国によるイランの原油輸出の抑制をねらった経済制裁や、中東情勢悪化に伴うホルムズ海峡封鎖への懸念が価格上昇要因となってきた。23日以降の中東情勢の緊張緩和はこうした懸念を和らげることで原油価格を下落させている。
原油需要やOPECプラス8か国の8月の生産量をめぐる思惑がWTIの見通し左右か
こうした中、WTIの今後の値動きをめぐっては、改めて原油市場での需要と供給のバランスが注目されることが考えられる。ブルームバーグによると、米エネルギー情報局(EIA)が25日午前10時30分(日本時間25日午後11時30分)に発表する20日時点での原油在庫量(戦略備蓄除く)は1週間前比で110.0万バレル減少する見通し。原油在庫の取り崩しが予想よりも小さくなるなどした場合には、需要の弱さが意識されて原油価格への下落圧力が強まる可能性もありそうだ。

また原油市場ではサウジアラビアやロシアを含むOPECプラス内の8か国が7月6日に開く、8月の生産量を協議する会合にも注目が集まる。ブルームバーグによると、市場関係者の間では生産量が前月比で日量40万バレル引き上げられるとの見方も出ているという。ただ、8か国が7月の生産量について日量41.1万バレルの引き上げを決めた5月31日の会合ではロシア、アルジェリア、オマーンが決定内容に反対したとも報じられており、7月6日の会合をめぐる事前報道などで原油価格が揺れ動くことも想定される。
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