WTI原油の短期見通し:目先は70-100ドル予想 米軍参戦でボラティリティの拡大を警戒
米軍がイラン攻撃に踏み切った。週明けのNY原油先物価格(WTI)は一時78ドル台へ上昇する局面が見られた。しかし中東情勢は急変しやすい。情勢次第では急騰と急落、両方の可能性を意識したい。目先のWTI原油の予想レンジは70-100ドル。注目のチャート水準についてIG証券のアナリストが解説。

要点
・米軍によるイラン攻撃で中東リスクがさらに上昇した
・週明けのNY原油先物価格(WTI)は一時78ドル台へ上昇した
・しかし急騰ムードはない、今後の情勢次第では急上昇と急落、両方を警戒
・原油先物価格、目先の予想レンジを70ドル~100ドルを想定
週明けのNY原油先物価格 一時78ドル台へ上昇、米軍参戦で中東懸念高まる
ホワイトハウスは先週19日、イランに対する軍事行動の是非をトランプ大統領が2週間以内に決定を下すと発表した。そして21日(日本時間22日早朝)、トランプ米大統領は自身SNS「トゥルース・ソーシャル」でイランの核施設3か所-フォルドゥ、ナタンズ、イスファハンを攻撃、成功したと述べた。
米東部時間21日午後10時(日本時間22日午前11時)、米国民への演説でトランプ大統領は今回の攻撃の目的をイランの核濃縮能力の破壊だったと述べた。また、他の標的が残っており和平が実現しなければイランへの攻撃を続けること、イランが報復に出る場合は力で対抗する姿勢も示した。
米軍の介入は中東の地政学リスクを一層高めた。エネルギーの供給懸念が意識され、週明けのNY原油先物価格(WTI)は一時78ドルまで上昇する局面が見られた。しかし、レポート掲載時点では急騰のムードはない。今後の情勢次第では、急上昇と急落、両方の展開を想定しておく必要があろう。
NY原油先物価格のチャート:1分足

出所:TradingView
焦点はイランの動向、ホルムズ海峡緊迫なら原油急騰を警戒
中東地域には約5万人の米軍が駐留している。米軍とイスラエル軍の攻撃により、イランの反撃能力はかなりの打撃を受けたと思われる。しかし、イランはイスラエルへミサイルを発射するなど報復攻撃を続けている。今後はその対象が駐留米軍にまで及ぶ可能性がある。米軍との衝突がさらに深まれば原油高の進行を想定したい。
市場参加者は、ホルムズ海峡と周辺の動きに神経を尖らせている。この地域で戦闘が勃発すれば原油先物価格の急騰を招くからだ。この場合、原油先物価格がどこまで上昇するか?を予想することは難しい。
中東地域に駐留している米軍の規模

出典:ブルームバーグ
NY原油先物価格 注目のテクニカルライン
焦点は100ドルの目指すかどうか
米国とイランのさらなる衝突やホルムズ海峡の緊張は、原油高の要因となろう。急騰する可能性も考慮しておく必要がある。
原油高の局面では節目の100ドルを目指すか否か?目先はこの点が焦点となろう。
現在のNY原油先物価格(以下ではWTI原油)はレジスタンスラインが意識されている(週足チャート、黒矢印を参照)。このラインを突破する場合は、2つのフィボナッチ・リトレースメントのラインが重なる80ドルの攻防が焦点となろう。
WTI原油が80ドル台へ上昇する場合は、2023年9月の高値と今年4月の安値の76.4%戻しの水準85.61ドルと2024年4月の高値であり、かつ全戻しの水準87.67ドルの攻防に注目したい。後者のテクニカルラインを突破すれば、2022年3月の高値と今年4月の安値の半値戻しの水準92.81ドルを視野に上昇幅の拡大を想定したい。このテクニカルラインの突破は、節目の100ドルをトライするサインと捉えたい。すぐ上の101.70レベルは、2022年3月の高値と今年4月の安値のフィボナッチ・リトレースメント61.8%に当たる。
レジスタンスライン
・101.70:フィボナッチ・リトレースメント61.8%戻し
・100.00:節目のライン
・92.81:半値戻し
・87.67:2024年4月の高値、全戻し
・85.61:フィボナッチ・リトレースメント76.4%戻し
・80.00:2つのリトレースメントが重なる水準
情勢次第では急落の可能性も、まずは70ドルの維持が焦点に
米軍の介入は中東の地政学リスクを一層高めている。しかし、WTI原油はレジスタンスラインで上昇が止まっている。中東情勢を冷静に見極めようとする市場参加者の思惑が見て取れる。
今後、関係各国が外交を軸に事態の打開に向けて動く場合は、中東懸念が一時的に後退しよう。トランプ関税に端を発した貿易摩擦で世界経済の減速が意識されるなかでも、サウジアラビアは増産を続けている。この状況で中東懸念の後退はWTI原油の下落または急落の要因となる可能性がある。
WTI原油が下落する場合は、70ドル付近の攻防に注目したい。このラインを挟んで52週線(70.38ドル付近)と26週線(68.15ドル付近)が展開している。
中東懸念が後退しても、再び「米国・イスラエル」とイランなどの反対勢力が衝突する可能性は残る。目先は70ドルをサポートラインと想定したい。
中東情勢の不透明感は急速に強まっている。筆者の想定を超えてWTI原油が70ドルを割り込む急落となれば、5月下旬に相場をサポートした60ドルのトライが視野に入ろう。
サポートライン
・70.38:52週線
・68.15:26週線
・60.00:サポートライン
NY原油先物価格(WTI)のチャート
週足 2021年7月以降

出所:TradingView
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