米国株 今週の見通し(6/30~7/3):S&P500最高値更新、6,100-6,300予想 米雇用統計を警戒
先週、S&P500が最高値を更新した。今週もハイテク株主導の強気相場が予想される。一方、低調な米雇用統計は調整売りの要因に。今週の予想レンジは6,100-6,300。IG証券のアナリストによる米国500の週間展望。

要点
・投資家のリスク選好姿勢が続いている、今週の米国株も強気相場を想定したい
・しかし5月以降の上昇幅拡大で高値警戒感が意識されやすい状況にある
・低調な米雇用統計は調整売りの要因となろう
・米国500の週間予想レンジは6,100-6,300
S&P500とナスダック最高値、ハイテク株が株高をけん引
先週の主要な米株価指数は上昇して終えた。27日の市場で米株式市場の時価総額の約80%をカバーするS&P500は前日比32.05ポイント(0.52%)高の6,173.07で終え、2月19日に付けた終値ベースの最高値6144.15を上回った。週間では3.44%高となった。
ナスダックも総合指数と100指数がともに最高値を更新した。週間で4%超した。
米株価指数の週間変動率:6月23~27日

ブルームバーグのデータで筆者が作成

ブルームバーグのデータで筆者が作成
VIX指数ボラティリティ指数が示唆する投資家の強気心理
S&P500を対象とするオプション取引の変動率(ボラティリティ)を元に算出され、恐怖指数としても知られるVIX指数は16ポイント台まで低下している。低位で推移しているボラティリティ指数の動向もまた、投資家の強気心理を示唆している。
VIXのチャート:日足 年初来

ブルームバーグのデータで筆者が作成
高まる相場の過熱感、米雇用統計が調整売り要因となる可能性も
上で述べた米株式市場の状況を考えるならば、今週のS&P500も強気相場の継続を意識したい。
だがブルームバーグのデータによれば、予想PERは27日時点で23.47倍と、2023年以降の平均21.71倍を超えてきた。今週も米株高が進行すれば24倍台への拡大が視野に入り、割高感が高まろう。5月以降の急反発でS&P500はすでに10.8%上昇しており、「買われすぎ」の警戒感が意識されやすい状況にある。今週は重要な米経済指標が多く発表される。景気の減速を示唆する内容が続けば、調整売りの材料に利用される可能性があろう。
S&P500の予想PER:日足 2023年以降

ブルームバーグのデータで筆者が作成
なかでも注目したいのが、7月3日に発表される6月の米雇用統計である。ブルームバーグがまとめた市場予想では、総じて労働市場の軟化が見込まれている。同月4日は独立記念日の祝日で米国市場が休場となる。3連休を前に米雇用統計で労働市場の軟化が示される場合は、調整売りを警戒したい。なお、3日の市場は短縮取引(現地午後1時、日本時間翌朝2時に取引終了)となる。
米雇用統計 各項目の動向:直近1年間

ブルームバーグのデータで筆者が作成 / 赤の棒グラフとドット:6月の予想、6月27日時点
だが、26日のIG為替レポートで指摘したとおり、米債市場では金融政策の方向性を織り込んで動く2年債利回りが低下している。一方、短期金融市場では今年12月の政策金利の予想水準が3.6%台まで低下し、米連邦準備制度理事会(FRB)が利下げに傾く可能性を意識し始めている。低調な雇用統計はこの観測をさらに高めるだろう。
米利下げ期待の高まりは、米株高をけん引しているハイテク株の下支え要因である。従って雇用統計が株安の要因となっても、その動きはすぐに終息すると予想する。
なお、他の調整売り要因として注視したいのが、関税に関するトランプ米政権の動きである。トランプ大統領は27日、カナダが導入したデジタルサービス税(DST)について、米国のIT企業を狙い撃ちにしていると非難し、カナダとの通商交渉を即時に打ち切ると表明した。各国との通商交渉をめぐる不透明感の高まりは、最高値圏にある米国株の調整売り要因として利用される可能性があろう。
米国500の週間見通しとテクニカル分析
週間予想レンジの上限:6,300
週足チャートでS&P500のトレンドを確認すると、現在は2022年以降の高安で算出されるE計算値の水準6,178レベルを突破しつつある(週足チャート、緑矢印を参照)。13週線も上昇基調へ転じている。今週もS&P500の強気相場が続く場合は6,178レベルを突破し、新たな上値の水準を目指すだろう。
ブルームバーグのデータによれば、5月以降の株高局面では週平均で172.54ポイント上昇している。先週27日の終値が6173.07だったことを考えるならば、今週S&P500が6,300台へ上昇する可能性がある。S&P500が対象の株価指数CFD「米国500」も6,300レベルを目指すだろう。このラインを今週の予想レンジの上限と想定したい。
米国500が6,300を目指すサインとして、以下にまとめた3つのレジスタンスラインの攻防に注目したい。最初のラインは、27日のIG米国レポートで取り上げたフィボナッチ・エクステンション127.2%の水準6,183レベルである。27日の米株式市場では見事にレジスタンスラインとして意識された。このテクニカルラインの上方ブレイクは、6,200をトライするサインとなろう。
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米国500が6,200のラインをも突破すれば、フィボナッチ・エクステンション161.8%の水準6,257レベルのトライを想定したい。このテクニカルラインの突破は、週間予想レンジの上限6,300をトライするサインと捉えたい。
レジスタンスライン:4時間足
・6,300:予想レンジの上限
・6,257:フィボナッチ・エクステンション161.8%
・6,200:レジスタンスライン
・6,183:フィボナッチ・エクステンション127.2%
週間予想レンジの下限:6,100
今週は6月の米雇用統計の他、同月のISM製造業と非製造業の景気指数もある。ブルームバーグがまとめた市場予想では製造業が48.7、非製造業が50.6と、それぞれ5月から改善の見通しにある(6月27日時点の予想)。従って、ISM指数が予想外に下振れる場合は、調整売りの要因として警戒したい。雇用統計も低調な内容となれば、米国500は週間の予想レンジ下限6,100を視野に下落幅の拡大を想定したい。
米国500が6,100をトライするサインとして、フィボナッチ・エクステンション100%の水準6,126レベルの攻防に注目したい。27日の調整売り局面ではこのラインの上で反発した。筆者の想定を超える売りで米国500が6,100を下方ブレイクすれば、6月10日の高値水準6,070レベルを瞬間的にトライする展開を想定しておきたい。また、この水準のサポート転換を確認したい。
サポートライン:4時間足
・6,126:フィボナッチ・エクステンション100%
・6,100:予想レンジの下限
・6,070:6月10日の高値水準、サポート転換の可能性あり
S&P500のチャート
週足:2022年以降

出所:TradingView
米国500のチャート
4時間足:6月以降

出所:IGチャート
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