NY金の見通し(7/1〜4):3,230〜3,375予想、米経済指標に注目
NY金価格、7月第1週の見通し。予想レンジは3,230〜3,375ドル。米経済指標に注目。重要なテクニカルポイントをIG証券のアナリストが分かりやすく解説。

要点
・米ドル安が進行しても金価格は下落トレンドにある
・高値警戒感と投資家のリスク選好姿勢が金価格の重石に
・一方、銀とプラチナの上昇で相対的な割高感が薄れている
・金価格、7月第1週の予想レンジは3,230〜3,375ドル
金価格の下落止まらず、下値支持線を下方ブレイク
6月30日の金価格は反発して終えた。しかし、日足チャートでスポット価格のトレンドを確認すると、6月中旬から下落トレンドが鮮明となっている。50日線がレジスタンスラインへ転換し、先週27日の市場では4月7日安値が基点の短期サポートライン(下値支持線)を完全に下方ブレイクした。
現在は89日線がサポートラインとして意識されている。しかしMACDがゼロラインを、RSIが50を下回る状況にあることを考えるならば、89日線のブレイクを意識する局面にある。金価格がこの移動平均線を下方ブレイクすれば、一目雲の下限が推移している3,230ドルを視野に下落幅の拡大を想定したい。この水準を7月第1週の予想レンジの下限と想定したい。
スポット金価格の日足チャート:今年4月以降

出所:TradingView
高値警戒感と投資家のリスク選好姿勢が金価格の重石に
外為市場では、中東不安の後退で「有事のドル買い」から一転してドル安へ転じている。
30日のIG為替レポートで述べたとおり、先週は対G10通貨でドル全面安となった。週明け30日の市場でも米ドル売りが続き、ドル指数(DXY)は2025年上半期で10.8%下落した。ブルームバーグによれば1973年以来の大幅下落という。
米ドルの変動率:2025年上半期

ブルームバーグの為替データで筆者が作成
関連記事
・ドル円 今週の見通し(6/30~7/4):142.00-146.15予想、米雇用統計でドル安加速も
米ドル安が進行しても金価格がサポートラインを下方ブレイクした理由の一つに、高値警戒感があると筆者は考えている。
金価格は今年4月に過去最高値の3,500ドルを付けた。年初からの上昇率は6月末時点で約26%に達し、上半期を終えた時点で昨年の上昇率27.2%に迫っている。米国と各国との貿易交渉への期待や中東の地政学リスクの後退といった状況も考えるならば、今はゴールドの高値警戒感が意識されやすい状況にある。
スポット金価格の年間変動率:2015年以降

ブルームバーグのデータで筆者が作成
銀価格上昇、プラチナ価格は急騰、薄れるゴールドの割高感
金価格は高値警戒感が意識されやすい状況にある。一方、他の貴金属価格との相対的な比較では割高感が薄れている。
今年4月に金価格は最高値3,500ドルへ急騰した。しかし、これを機に割高感が意識され軟調地合いへ転じている。対照的に割安感が高まった銀(シルバー)と白金(プラチナ)を買う動きが加速した(下のチャートを参照)。
2024年末を100とした指数化チャートで貴金属価格の動向を確認すると、4月以降銀価格の上昇幅が拡大し、金価格の相対的な割高感が薄れている。一方、プラチナ価格は急騰し、先週27日の市場でスポット価格は2014年8月以来となる1,435ドルへ急騰した。金価格の上昇幅を遥かに上回っており、プラチナ価格との相対的な割高感もなくなっている。
投資家のリスク選好姿勢が続く間は、金価格の軟調地合いを警戒したい。だが、米ドル安は基本的に金価格の下支え要因である。また、トランプ米政権が設けた関税交渉期間が来週9日に迫っている。通商交渉の不透明感が意識される場合は、投資家のリスク選好姿勢が後退するだろう。
新たなサポート水準が明確になる時、金価格は再び上昇トレンドへ転じると予想する。
金、銀、プラチナ 各スポット価格の動向:年初来

ブルームバーグのデータで筆者が作成 / 2024年末を100として指数化
金価格の見通しとテクニカル分析
予想レンジの下限:3,230ドル
米ドル安は金価格の下支え要因である。しかし、50日線がレジスタンスラインへ転換しつつある状況を考えるならば、この移動平均線のブレイクが確認できない限りは金価格の下落を警戒したい。
7月第1週の予想レンジ下限は、日足の一目雲の下限が推移している3,230ドルを想定。昨日の市場では、今日現在3,259ドルで推移している89日線とフィボナッチ・リトレースメント61.8%の水準3,247ドルがサポートラインとして意識された(4時間足チャート、黒矢印を参照)。5月29日の市場でも同様に3,247ドル付近で反発した経緯がある。このテクニカルラインの下方ブレイクは、3,230ドルをトライするサインと捉えたい。
今日から3日にかけて、米国の重要指標が発表される。先月29日のIG米国レポートで述べたとおり、注目は3日の6月雇用統計となろう。ブルームバーグがまとめた予想では、5月から労働市場の軟化が見込まれている。
関連記事
・米国株 今週の見通し(6/30~7/3):S&P500最高値更新、6,100-6,300予想 米雇用統計を警戒
従って、雇用統計が予想外に労働市場の底堅さが示す場合は、「米金利の上昇→米ドルの買い戻し」の要因となろう。ISM製造業・非製造業の景気指数も含め今週の米経済指標が総じて強い内容が続けば、金価格は予想レンジの下限3,230ドルを下方ブレイクする可能性がある。この場合は3,200ドルまでの下落を想定したい。この水準は、5月15日の安値と6月16日の高値のフィボナッチ・リトレースメント76.4%の水準にあたる(4時間足)。
サポートライン
・3,259:89日線(日足)
・3,247:フィボナッチ・リトレースメント61.8%(4時間足)
・3,230:一目雲の下限、予想レンジの下限(日足)
・3,200:フィボナッチ・リトレースメント76.4%(4時間足)
予想レンジの上限:3,375ドル
上で述べたとおり、今年上半期の外為市場では米ドル安が進行した。他の貴金属価格との相対的な割高感も薄れている。昨日は89日線がサポートラインとして意識された。本日は6月ISM製造業景気指数がある。ブルームバーグがまとめた市場予想48.8以下となれば、金価格の買い戻しが続くことが予想される。
7月第1週の予想レンジ上限は3,375ドルを想定。すぐ下の3,373ドルは、6月16日高値と30日安値のフィボナッチ・リトレースメント61.8%の水準にあたる。
金価格が3,375ドルを目指すサインとして、2つのテクニカルラインの攻防に注目したい。一つがレジスタンスラインへ転換している50日線である。今日現在、3,324ドル付近で推移している。もう一つが、レジスタンスラインへ転換する兆しが見られる半値戻しの水準3,350ドルである(4時間足)。後者のテクニカルラインの上方ブレイクは、3,375ドルをトライするサインと捉えたい。
3日の6月雇用統計を含め、今週の米経済指標で予想を下回る内容が続けば金価格の反発が加速する展開を想定したい。筆者の想定を超えて3,375ドルを突破すれば、3,400ドルの再トライが視野に入ろう。この水準はフィボナッチ・リトレースメント76.4%の水準にあたる(4時間足)。
レジスタンスライン
・3,400:フィボナッチ・リトレースメント76.4%(4時間足)
・3,375:フィボナッチ・リトレースメント61.8%、予想レンジの上限(4時間足)
・3,350:半値戻し(4時間足)
・3,324:50日線
金価格のチャート
【再掲】日足チャート:今年4月以降

出所:TradingView
4時間足チャート:今年5月以降

出所:TradingView
本レポートはお客様への情報提供を目的としてのみ作成されたもので、当社の提供する金融商品・サービスその他の取引の勧誘を目的とした ものではありません。本レポートに掲載された内容は当社の見解や予測を示すものでは無く、当社はその正確性、安全性を保証するものではありません。また、掲載された価格、 数値、予測等の内容は予告なしに変更されることがあります。投資商品の選択、その他投資判断の最終決定は、お客様ご自身の判断でなさるようお願いいたしま す。本レポートの記載内容を原因とするお客様の直接あるいは間接的損失および損害については、当社は一切の責任を負うものではありません。 無断で複製、配布等の著作権法上の禁止行為に当たるご使用はご遠慮ください。
リアルタイムレート
- FX
- 株式CFD
- 株価指数CFD
※上記レートは参考レートであり、取引が保証されるものではありません。株式のレートは少なくとも15分遅れとなっております。