円安急進、一時145円台 雇用統計上振れ 円高圧力には根強さも
ドル円相場は一時145円台まで円安が進行。雇用統計が上振れたことが要因だが、トランプ氏の利下げ要求は円高要因として働き続けそうだ。

ドル円相場で円安が急進した。日本時間3日夜から4日未明にかけては1ドル=145円台を記録し、一気に1.4円程度の円安が進んだ。アメリカで3日に発表された6月雇用統計が市場予想を上回る強さで、米国の金利の先高観が強まったためだ。米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げ期待は大きく後退し、日米の長期金利(10年物国債利回り)差は拡大している。また、ドナルド・トランプ大統領が後押ししてきた減税関連法案は上下両院を通過して成立が確実になっており、FRBの利下げをさらに遠のかせる円安要因になりえる。ただし米国の労働市場は6月雇用統計の表面上の数字ほどは強くないとの指摘もあるうえ、トランプ氏はFRBに利下げを強く求める姿勢を崩していない。ドル円相場の今後の見通しをめぐっては、円高圧力の根強さも意識され続けそうだ。
ドル円相場は一時145.23円 1週間ぶりの円安水準に
ドル円相場(USD/JPY)は日本時間4日午前の取引では1ドル=144円台半ばで推移している。ブルームバーグによると、3日夜には一時、145.23円をつけ、6月26日(145.27円)以来、1週間ぶりの円安水準となった。ドル円相場は3日午後9時台には143.81円をつけていたが、一気に1.42円分の円安が進んだ形だ。

6月雇用統計は予想を超える強さ FRBの利下げ見通しは後退
円安急進の要因は、米国で3日朝に発表された6月雇用統計が予想を超える強い結果だったことだ。非農業部門の就業者数は前月比14.7万人増となり、ブルームバーグがまとめた市場予想の10.6万人増を上回る数字。4月と5月の実績も合計3.0万人分上方修正され、米国経済の底堅さを印象づけた。また失業率は4.1%となり、市場予想の4.3%や前月の4.2%を下回る良好な結果。平均時給の伸び率は前年同月比3.7%で、やはり市場予想(3.8%)を下回り、物価上昇圧力の高まりを感じさせない数字だった。

米国の労働市場の好調さはFRBの利下げ見通しを後退させた。ブルームバーグによると、金融市場で見込まれる12月の連邦公開市場委員会(FOMC)後の政策金利の水準は3日時点で3.814%で、前日から0.130%ポイント高くなった。

金融市場ではこのところ、利下げを求めるトランプ氏がFRBのジェローム・パウエル議長の後任を早期に発表するとの報道を受け、年内3回の利下げへの期待が広がっていたが、6月雇用統計の結果はこうした期待を打ち消す内容といえる。CMEグループのデータによると、金融市場で見込まれる年内3回利下げの確率は日本時間4日正午段階で32%。前日朝の約57%から大きく低下した。
日米の長期金利差は再拡大 6営業日ぶりの2.9%ポイント台に
FRBの利下げ見通しの後退は米国の長期金利を上昇させ、ドル円相場の背景となる日米金利差を大きくしている。ブルームバーグによると、3日終値段階での日米金利差は2.913%ポイント。前日まで5営業日連続で続いてきた2.8%ポイント台から拡大した。

トランプ氏の減税関連法案は成立へ 円安圧力になる可能性
こうした中、米国の下院は3日午後2時31分に債務上限の引き上げを含んだ減税関連法案を可決。上院が1日に可決した法案と同じ内容で、トランプ氏の4日の署名を経て成立する。減税関連法案は、トランプ氏が1期目の2017年に実現した期限付きの減税を無期限で延長するとともに、債務上限を5兆ドル引き上げるなどする内容だ。低所得者向け公的医療保険メディケイドの加入要件を厳しくするなどの措置が盛り込まれ、共和党内でも賛否が分かれていたが、トランプ氏が求めていた4日の独立記念日までの成立が実現する。共和党がトランプ氏の下で結束したことを印象づけた。
ドル円相場は減税関連法案の下院での可決に際しては大きな値動きは見せなかった。しかし減税の無期限での延長は米国経済をめぐる不確実性を和らげることになり、物価上昇圧力を高める要因として働く可能性がある。この場合はFRBが利下げに対する慎重姿勢を強めることが考えられ、ドル円相場での円安を意識させる要因といえそうだ。
トランプ氏の高関税政策は労働市場を下押しか パウエル氏への辞任要求も円高要因
ただ、米国経済はトランプ氏の高関税政策という不確実性にもさらされており、見通しに対する不安が消えたわけではない。6月雇用統計での前月比14.7万人の就業者の伸びのうち7.3万人は政府による雇用の増加分で、学校などの教育部門での季節性の変動が影響していると指摘されている。また、トランプ氏が重視している製造業の雇用は7000人減少しており、労働市場が堅調だとは言い切れない。今後、労働市場の悪化が表面化すれば、FRBの利下げへの期待が円高圧力として働く可能性がある。
さらにトランプ氏自身がFRBに利下げを強く求め続けていることも円高の材料といえそうだ。トランプ氏は2日夜、自身のSNSトゥルースソーシャルへの2日の投稿で、利下げに慎重姿勢を示しているパウエル氏につけたあだ名の「遅すぎ男」を使ったうえで、「直ちに辞任すべき!!!」と投稿した。トランプ氏の利下げ要求はこれまでもドル円相場での円高材料として意識されており、ドル円相場の今後の見通しに影響を及ぼすとみられる。
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