米国株、上昇機運に米中対立の壁 S&P500週次反発 鉄鋼関税も不安
S&P500は週次で1.88%高。2週ぶりの反発ながら、トランプ氏の中国への対決姿勢が冷や水となった。週明け以降も神経質な値動きとなる可能性がある。

アメリカの株式市場の上昇機運に、米中対立再燃不安が冷や水をかけた。S&P500種株価指数の30日の終値は1週間前比で1.88%高。2週ぶりの反発で値上がり圧力の根強さを印象づけた。ただ、ドナルド・トランプ大統領は30日、米中による関税大幅引き上げ合意に関し、中国が合意内容に違反していると批判。S&P500は一時、前日比1%超値下がりする場面もあり、楽観ムードの脆さが示されている。一方、30日に発表された4月の個人消費支出(PCE)物価指数が物価上昇鎮静化を期待させる内容だったことは米国経済にとっての朗報。28日発表の半導体大手NVIDIA(エヌビディア)の決算発表も人工知能(AI)ブームの継続を感じさせる好決算だった。S&P500の今後の見通しをめぐっては、週明け以降に発表が続く注目経済指標やトランプ氏の高関税をめぐる言動が焦点。トランプ氏が30日の取引時間終了後に鉄鋼、アルミニウム輸入に対する50%関税の6月4日発動を表明したことも見通しに影を落としそうだ。
アメリカのS&P500は週次1.88%高 上昇見通しの根強さ示す
S&P500(SPX)の30日の終値は前日比では0.01%安の5911.69。週次での1.88%高は米中の大幅関税引き下げ合意が発表された12-16日週(5.27%高)以来、2週ぶりの上昇だ。前週(19-23日)は債務上限引き上げを盛り込んだ減税関連法案の下院での審議が難航したことなどが悪材料となり、週次2.61%安となっていたが、今回の週次での反発は上昇見通しの根強さを示したといえる。

トランプ氏は中国の合意違反を批判 S&P500は30日に一時1%超下落
ただ、こうした前向きなムードにはトランプ氏から冷や水がかかった。トランプ氏は30日朝、自身のSNSトゥルースソーシャルへの投稿で、「中国は米国との合意内容に完全に違反している」と言及。ジェミソン・グリア通商代表部(USTR)代表はCNBCのインタビューで、中国による違反の内容について「重要鉱物について本来あるべき流通が確認されていない」とした。トランプ氏はその後、記者団に対して合意違反に関連し、「習近平国家主席と話をするつもりだ」と述べ、対立解消を探る姿勢をみせたが、S&P500は30日の取引で一時、前日比1.12%安まで値下がりする場面もあった。

中国はレアアース輸出再開を遅延? 米国の華為技術のAI半導体への規制に不満か
米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)によると、スコット・ベッセント財務長官と何立峰副首相が10、11日にスイスで行った経済協議では、中国側が最後の数時間でレアアースの輸出再開を受け入れ、関税の大幅引き下げ合意が成立。しかし中国側はその後、レアースなどの輸出承認手続きを遅らせている。トランプ政権が13日に公表した、華為技術(ファーウェイ・テクノロジーズ)のAI向け半導体の使用が米国の輸出規制違反に該当するとした警告文が中国側の不満を招いたという。
商務省の警告文によると、トランプ政権は華為技術のAI向け半導体について、米国発の技術を用いて生産され、輸出規制の対象となっている組織が生産や販売に関わっているとしている。米中対立の根深さはS&P500の見通しを暗くする要因といえそうだ。
4月PCE物価指数は物価上昇鎮静化示す FRBの利下げ期待つなぐ
一方、米国経済をめぐっては物価上昇鎮静化への期待も高まった。30日に発表された4月のPCE物価指数の伸び率は、総合指数で前年同月比2.1%となり、前月の2.3%から低下。ブルームバーグがまとめた市場予想の2.2%を下回った。食品とエネルギーを除いたコア指数の伸び率は2.5%で、やはり前月(2.7%)から低下し、市場予想通りの結果だった。29日には2025年1-3月期のGDP改定値が個人消費の弱さを示したうえ、週次の新規失業保険申請件数が労働市場への不安を示していたが、物価上昇率の順調な低下は米国経済にとっての朗報といえる。

こうした中、金融市場ではFRBの利下げへの期待が維持された。ブルームバーグによると、金融市場で見込まれる12月の連邦公開市場委員会(FOMC)後の政策金利の水準は30日段階で3.786%で、2日連続で前日よりも低くなった。また、米国の長期金利(10年物国債利回り)の30日のニューヨーク債券市場での終値は4.403%で、2日連続で前日から低下している。米国の金利の先安観は株式の投資先としての魅力を相対的に高める、S&P500にとっての追い風だ。

エヌビディアは週次2.92%高 マグニフィセント・セブンはそろって上昇
株式市場では28日に発表されたエヌビディアの2025年2-4月期決算発表もAIブーム継続を感じさせる好決算と受け止められた。エヌビディアの株価(NVDA)は30日までの週次で2.92%高。S&P500への影響度が大きいエヌビディアを含む「マグニフィセント・セブン」と呼ばれる7社の株価はそろって週次での値上がりを記録した。メタ・プラットフォームズ(META)は3.26%高、アップル(AAPL)も2.86%高となり、S&P500の見通しを明るくしている。


S&P500の見通しは雇用統計で変化か トランプ氏は鉄鋼50%関税を表明
S&P500の今後の見通しをめぐっては、米国の実体経済の動向が注目される。6月2日に米サプライマネジメント協会(ISM)が発表する5月の製造業景況感指数(PMI)や、4日に発表する非製造業(サービス業)PMIは投資家のムードを左右することになりそうだ。また6日に発表される5月雇用統計の結果も、米国経済やFRBによる利下げに関する見通しを揺らす要因といえる。
また高関税をめぐるトランプ氏の動向も引き続きS&P500を動かす材料だ。トランプ氏は30日の取引時間終了後、ペンシルベニア州での演説で、3月に発動した鉄鋼とアルミニウムの輸入に対する25%関税について「2倍の50%に引き上げる」と述べた。SNSへの投稿では「6月4日」に発動するとしている。高関税の可否に関する司法判断が揺れる中でも、あくまで高関税を駆使する経済政策を続ける考えのようだ。トランプ氏が週明け以降も高関税への言及を繰り返せば、S&P500の見通しは悪くなり、神経質な値動きをみせることも想定される。
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