米国株、嵐の前の反発か S&P500半値戻し接近 実体経済見通し不安
S&P500は週次4.59%高。トランプ氏の対中強硬姿勢の軟化などが好材料となった。ただ、直近の経済指標や企業決算には弱さもみえ、急落懸念は残る。

アメリカの株式市場が大きく反発した。S&P500種株価指数の25日の終値は1週間前比で4.59%高の5525.21。2月19日の最高値から4月8日の直近の安値までに記録した下落幅の半分近くを取り戻している。ドナルド・トランプ大統領が中国との対決姿勢を弱めるなどしたためで、半導体大手NVIDIA(エヌビディア)を含む大手ハイテク7社すべての株価が4日連続で値上がりした。投資家の不安は徐々に落ち着いているようだ。しかし直近の経済指標や企業決算には実体経済の弱まりも感じられ、トランプ氏が火をつけた世界経済の混乱の悪影響がこれから表面化するおそれがある。週明け以降の金融市場では注目度の高い経済指標や企業決算の発表が相次ぐだけに、S&P500の今後の見通しをめぐっては、大荒れの展開も考えられそうだ。
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アメリカのS&P500は週次4.59%高 2週ぶり反発で半値戻しが接近
S&P500(SPX)の25日の終値は前日比では0.74%高で、4日続伸。ブルームバーグによると、トランプ氏の大統領就任前後にあたる1月17日から23日にかけて以来の連騰記録となった。2月19日の最高値から直近の安値にあたる4月8日にかけての下落幅(1161.38ポイント)の46.7%を回復する水準に達している。週次での上昇はトランプ氏が相互関税の一部を停止した7-11日週(5.70%高)以来2週ぶりだ。

トランプ氏が混乱の火消し 日本との関税交渉合意は「非常に近い」
S&P500が大きく反発した背景には、トランプ氏が混乱の火消しにかかっていることがある。トランプ氏は22日には米連邦準備制度理事会(FRB)のジェローム・パウエル議長の解任の意図を否定。中国製品に対する145%にも上る高関税についても引き下げの可能性を示唆した。また25日に公開されたタイム誌のインタビューでは、各国との関税交渉は「今後3-4週間のうちに終わるだろう」と言及。同じ25日には日本との関税交渉について、合意は「非常に近い」と記者団に述べている。
S&P500のこのところの急落はトランプ氏が2日に発表した相互関税が厳しい内容だったことがきっかけ。17日にSNSへの投稿でパウエル氏解任を示唆したことも混乱に拍車をかけていた。それだけにトランプ氏が方針転換を図っているとすれば、S&P500の見通しにとっては明るい材料だ。
大手ハイテク7社はそろって4日続伸 エヌビディアは週次9.38%高
こうした中、S&P500への影響度が大きい、「マグニフィセント・セブン」と呼ばれる大手ハイテク7社の株価も大きく反発した。エヌビディアの株価(NVDA)は25日までの週次で9.38%高。22日に2025年1-3月期決算を発表したテスラ(TSLA)は週次18.06%高、24日に決算を発表したアルファベット(GOOGL)も週次7.14%高となっている。22日から25日にかけては7社すべての株価が4日続伸を達成。2022年3月15-18日にかけて以来、3年1か月ぶりの記録となっている。

金融市場では投資家不安も落ち着き始めた。シカゴ・オプション取引所によると、ウォール街の「恐怖指数」と呼ばれるVIX指数(VIX)の25日の終値は24.84。20営業日連続で20を上回っているが、トランプ氏による相互関税発表当日にあたる2日終値(21.51)以来の低さになっている。VIXはS&500のオプション取引の動向から算出され、値が大きいほど、今後の値動きが荒くなることへの警戒が強いことを示す。

3月中古住宅販売は2年4か月ぶり急落 テスラやアルファベットの決算には弱さも
ただ、足元の経済指標には不安要素も見え隠れする。全米リアルター協会(NAR)が24日に発表した3月の中古住宅販売件数は年換算で402万件。前月比では5.9%減となり、2022年11月(6.7%減)以来、2年4か月ぶりの急落となった。16日に発表された3月小売売上高は自動車関税引き上げ後の価格転嫁を警戒した駆け込み需要に沸いていたが、住宅市場では経済悪化への不安が表面化したといえそうだ。

また、株価が急騰した大手ハイテク企業の決算発表も必ずしも良い結果だったわけではない。テスラの1-3月期決算は総収入と利益の両方が市場予想を下回る悪い内容。テスラは経済の先行き不透明感を理由に、電気自動車(EV)事業の2025年の成長見通しを撤回した。またアルファベットの1-3月期決算は大黒柱である広告事業や、人工知能(AI)サービスの提供基盤となっているクラウド事業の収入の成長率が前四半期(2024年10-12月期)から減速している。
雇用統計など重要経済指標や大手ハイテク4社の決算がS&P500の見通しに影響か
週明け以降の金融市場では重要な経済指標や企業決算の発表が相次ぐ。30日に発表される1-3月期のGDPと個人消費支出(PCE)物価指数は米国の経済活動や物価動向を占う指標となるほか、5月2日発表の4月雇用統計は労働市場悪化の有無が注目される。また、大手ハイテク企業の中ではメタ・プラットフォームズ(META)とマイクロソフト(MSFT)が4月30日、アマゾン・コム(AMZN)とアップル(AAPL)が5月1日に1-3月期決算を発表する。
新型コロナウイルス感染拡大期にあたる2020年は、S&P500が最高値から34%安まで下落する場面があった。S&P500の今後の見通しをめぐっては、物価上昇懸念が残る中で経済活動が弱まるという最悪のシナリオが感じられた場合、再び荒波にさらされる可能性もありそうだ。

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