米国株に重なる逆風 S&P500再急落 エヌビディアとパウエル発言で
S&P500は16日に2.24%安。FRBのパウエル議長の利下げへの慎重姿勢が悪材料となった。エヌビディアなど半導体株も大きく値下がりしている。

アメリカの株式市場に逆風が重なっている。S&P500種株価指数の16日の終値は前日比2.24%安で2日続落。米連邦準備制度理事会(FRB)のジェローム・パウエル議長が16日の講演で景気下支えのための利下げに慎重な立場を示したことが悪材料視された。またオランダの半導体製造装置大手ASMLホールディングの決算発表が市場予想を下回ったことや、前日に半導体大手NVIDIA(エヌビディア)の中国向け輸出にブレーキがかかる見通しになったことも不安材料になっている。一方、16日に発表された米国の3月小売売上高は市場予想を超える強さだったが、ドナルド・トランプ大統領の高関税政策による値上げの可能性を踏まえた駆け込み需要の側面も強い。S&P500の今後の見通しをめぐっては、値上がりを期待させる材料の乏しさが意識されそうだ。
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アメリカのS&P500は2.24%安 10営業日で5日目の1%超下落
S&P500(SPX)の16日の終値は5275.70。S&P500はトランプ氏が相互関税を発表した翌日にあたる3日以降の10営業日のうち、5営業日で1%を超える値下がり、2営業日で1%を超える値上がりという荒れた値動きになっている。9日の相互関税の一部停止はS&P500の見通し悪化に歯止めをかけたものの、依然として2月19日につけた最高値(6144.15)からは14.13%安の水準で低迷している。

パウエル氏は物価上昇への警戒に軸足 ASMLの1-3月期新規受注も期待外れに
16日のS&P500を下押ししたのはパウエル氏の発言だ。パウエル氏は16日にシカゴで講演し、トランプ氏の高関税政策について「少なくとも一時的には物価上昇率の高まりをもたらす可能性が非常に高い」と分析。「物価の安定がなければ、すべての米国民の利益となる強い労働市場を長期間にわたって達成することはできない」と述べた。トランプ氏の高関税政策が物価上昇加速と労働市場の悪化の同時進行につながった場合、物価安定の実現を優先させ、利下げを急ぐことはないとの立場を示唆したといえる。株式市場にはパウエル氏が利下げに意欲を示せば、金利の先安観がS&P500の上昇につながるとの思惑もあったが、期待外れに終わった形だ。
またASML(ASML)が16日に発表した2025年1-3月期決算も半導体株への期待を削ぐ結果となった。ASMLの1-3月期の新規受注は39.36億ユーロで、ブルームバーグがまとめた市場予想(48.22億ユーロ)を大きく下回る悪い内容。ASMLは2025年と2026年は成長の年になるとしながらも、これまでの関税政策によってマクロ経済の不確実性が増したとも指摘し、「しばらくの間は状況は流動的だろう」としている。
エヌビディアは6.87%安 AMDやアームなどの半導体株が大きく下落
半導体株への不安はエヌビディアが15日、中国向け輸出のために性能を抑えた半導体「H20」について米国政府から輸出規制の対象になったとの通達を受けたと発表したことでも高まっていた。エヌビディアは2-4月期に最大約55億ドルの影響が出るとしている。さらに同業のアドバンスド・マイクロ・デバイセズ(AMD)も15日、トランプ政権から同様の通達を受け、最大約8億ドルの影響が出るとしている。
こうした中、16日の米国株式市場ではエヌビディアの株価(NVDA)が前日比6.87%安の104.49ドルとなった。前日の時間外取引での急落からの反発は起きず、1月6日の最高値(149.43ドル)からは30.07%安となっている。AMDの株価(AMD)は前日比7.35%安、ASMLと同業のアプライド・マテリアリズ(AMAT)は4.99%安だった。また、S&P500構成銘柄ではないものの、英半導体大手アーム・ホールディングス(ARM)は2.70%安となっている。

16日はS&P500への影響度が大きいエヌビディアを含む大手ハイテク株もそろって下落。22日に1-3月期決算を発表する電気自動車(EV)大手のテスラ(TSLA)は前日比4.94%安。相互関税の対象からスマートフォンが外れていることが好材料となっていたアップル(AAPL)も3.89%安となっている。

3月小売売上高には駆け込み需要 自動車は5.7%増に
一方、16日に発表された3月小売売上高は前月比1.4%増となり、ブルームバーグがまとめた市場予想の1.3%増を上回った。自動車関税による価格上昇を前に駆け込み需要があったみられ、自動車の売上高は5.7%増となっている。自動車と部品を除いたベースでの伸び率は0.5%増で、こちらも市場予想(0.4%増)を超えている。

VIX指数の高止まりは継続 TSMC決算で半導体株に再波乱も
ただし駆け込み需要の強さは今後の反動も予感させる。パウエル氏は16日の講演で、これまでに発表されている関税引き上げは想定を大幅に上回る水準で、「物価上昇の加速と成長の減速といった経済への影響も同様に大きくなる」としている。こうした中、ウォール街の「恐怖指数」と呼ばれるVIX指数(VIX)は高止まりが続く。シカゴ・オプション取引所によると、VIXの16日の終値は前日比8.37%高の32.64となった。

半導体株をめぐっては日本時間17日午後3時から、半導体受託製造最大手の台湾積体電路製造(TSMC)の決算会見も予定されており、市場環境について厳しい見方が示される可能性もある。トランプ氏の高関税政策が経済の見通しを悪くする中、S&P500の今後の見通しを明るくするだけの材料が出ることは想定しづらい状況が続きそうだ。
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