米国株、遠ざかる最高値 S&P500小幅反発 AIブーム過熱を警戒
S&P500は5日に小幅な反発。AIブームの過熱感が警戒されている。政府機関一部閉鎖の悪影響も深刻化しており、株式市場の脆さが続いている。
アメリカの株式市場の上昇の勢いが弱まってきた。S&P500種株価指数の5日の終値は前日比0.37%高で、前日の1%超の急落を取り戻すことはできず。最高値からじわじわと遠ざかる展開となっている。人工知能(AI)ブームを背景とした急激な株価上昇への警戒感が出ているためで、S&P500の上昇を引っ張ってきた大手ハイテク株の値上がりにも一服感が出ている。また、金融市場では米連邦準備制度理事会(FRB)の12月利下げへの期待が後退しており、やはり株式市場の逆風。5日に発表された民間雇用統計が労働市場の堅調さを示す結果だったことも利下げの見通しを不透明にしている。さらに米国経済をめぐっては、史上最長となっている政府機関の一部閉鎖が経済活動に及ぼす悪影響が大きくなる懸念も出ており、AIブーム頼みの株価上昇には引き続き不安がつきまとう。
アメリカのS&P500は2日ぶり反発 最高値からは1.37%安
S&P500(SPX)の5日の終値は6796.29。2日ぶりの反発となる前日比0.37%高だったが、前日の1.17%安との比較では小幅な値上がりに留まった。ブルームバーグによると、10月28日の最高値(6890.89)からは1.37%安で、値下がり傾向が続いているといえる。
S&P500は4月から36.40%高の水準 利益見通しの伸び率を大きく超えるペース
S&P500の勢いを弱めたのは、AIブームを材料視した急激な値上がりが反転する可能性への警戒感だ。S&P500の5日の終値は、ドナルド・トランプ大統領が相互関税の一部を停止する前日にあたる4月8日との比較では36.40%高にも達している。一方、ブルームバーグによると、S&P500構成銘柄の今後12か月の1株当たり利益(EPS)の同じ期間での上昇率は6.76%に留まっている。
米紙ウォールストリート・ジャーナルによると、大手投資銀行ゴールドマン・サックス・グループ(GS)のデービッド・ソロモンCEOは4日、香港で開かれた経済イベントで「今後12-24か月のうちに、株式市場に10-20%の値下がりが起きることも当然ありえるだろう」と述べた。ソロモン氏は10月にも同様の発言をしており、最高値付近にあるS&P500が下落局面を迎えることも視野に入れる立場のようだ。
エヌビディアは最高値から5.71%安 メタは決算発表から15.40%安
実際、AIブームを背景としてS&P500を牽引してきた大手ハイテク株の値上がりにも陰りが目立つ。半導体大手NVIDIA(エヌビディア、NVDA)の株価の5日の終値は前日比1.75%安の195.21ドル。10月29日につけた最高値(207.04ドル)からは5.71%安となっている。また、マイクロソフト(MSFT)は5日まで6営業日続落となり、合計6.44%安。10月29日の2025年7-9月期決算発表で設備投資をペースアップさせる方針に転じたことが悪材料になっている。同様にの設備投資加速方針が不安視されているメタ・プラットフォームズ(META)も決算発表から5日までの5営業日で15.40%安となっている。
FRBの利下げ見通しは後退 ADP統計で雇用者数は市場予想を超える伸び
大手ハイテク株の値動きにはFRBの利下げへの期待が弱まっていることも影響していそうだ。ブルームバーグによると、5日の金融市場で見込まれている12月9、10日の連邦公開市場委員会(FOMC)後の政策金利の水準は3.723%で、前日よりも0.019%ポイント高くなった。12月利下げの確率は62%程度となっている。FRBのジェローム・パウエル議長は10月29日のFOMC後の記者会見で12月利下げについて「既定路線とはほど遠い」と述べ、S&P500の上昇に冷や水をかけている。
FRBの利下げへの期待は民間経済指標でも後退した。民間雇用サービス会社ADPが5日に発表した10月の全米雇用リポートでは、非農業部門の雇用者数(政府部門除く)が前月比4.2万人増となり、3か月ぶりの増加。ブルームバーグがまとめた市場予想の4.0万人増を上回った。FRBが労働市場を下支えするために12月に利下げを決めるというシナリオを弱める結果といえ、S&P500にとっては逆風といえそうだ。
米国内の航空便の運航能力を10%削減へ S&P500に下押し圧力も
さらに米国経済をめぐっては、10月1日から始まった政府機関閉鎖の悪影響の深刻化も進んでいる。ショーン・ダフィ運輸長官は5日、米国内の40の主要空港での航空便の運行能力を7日から10%削減すると表明した。政府機関一部閉鎖中、航空管制官らは無給で勤務を続けているが、人員不測が深刻化しているとという。ダフィー氏は記者会見で「安全確保が最優先事項だ」と述べ、事態の展開次第ではさらなる削減もありえるとしている。米国内での移動や物流の混乱が大きくなり、経済活動の足かせになるとの懸念が高まれば、S&P500への下押し圧力が意識される可能性もある。
政府機関一部閉鎖は5日で36日間に到達し、過去最長の記録となっている。米国経済をめぐる不確実性がぬぐえない中、AIブームの過熱感への警戒が一気に高まれば、S&P500が急落するリスクもありそうだ。
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