エヌビディア、株価下落不安 19日決算 競合激化や中国喪失で転機?
エヌビディアの19日の決算発表は11-1月期の見通しが焦点。総収入の成長の勢いが期待外れになれば、最高値付近の株価が失速するおそれもある。
エヌビディアが19日の取引時間終了後に発表する2025年8-10月期決算は11月-2026年1月期の見通しが焦点だ。エヌビディアの株価は10月29日に最高値を更新したものの、株価上昇の勢いは低下気味。オープンAIを発信源とする人工知能(AI)ブームの再燃という追い風と同時に、競合各社のAI向け半導体強化という逆風も併存しており、これまでのような「独り勝ち」の継続が難しくなるとの懸念もある。またエヌビディアにとってはアメリカ政府による輸出規制強化で中国市場の成長が見込めないことも悪材料だ。このためエヌビディアが19日の決算発表で示す成長見通しが期待外れに終われば、株価が失速する不安もある。逆に成長見通しが市場予想を超えれば、株価上昇に拍車がかかる可能性もあるが、AIブームをめぐる多くの不安に足を引っ張られる懸念も拭えない。
エヌビディアの8-10月期決算は総収入が54.3%増の見通し 成長がやや加速か
エヌビディアは米国東部時間19日午後4時20分(日本時間20日午前6時20分)に8-10月期決算を発表。40分後の午後5時から決算会見を開く。ブルームバーグがまとめた事前予想では、総収入は前年同期比56.4%増の548.85億ドルになる見通し。調整ベースでの1株当たり利益(EPS)は54.3%増の1.25ドルと見込まれている。事前予想通りになれば、総収入の伸び率は前四半期(5-7月期)の55.6%増からやや加速。1株当たり利益の伸び率は前四半期(54.4%増)とほぼ同水準となる。
エヌビディアの株価は最高値から6.70%安 前回決算から割高感に和らぎ
エヌビディアの株価(NVDA)の11日の終値は193.16ドルで、2024年末比での上昇率は43.84%高。10月29日につけた最高値(207.04ドル)からは6.70%安まで後退したものの、再び記録更新を狙える水準といえそうだ。足元の株価はドナルド・トランプ大統領の相互関税が株式市場を混乱させていた4月4日につけた底値(94.31ドル)からは2倍超になっている。
ブルームバーグによると、エヌビディアの直近の株価と今後12か月の予想収益から算出される株価収益率(PER)は30.8倍程度で、8月27日の前回決算発表当日の32.5倍からやや割高感が和らいでいる。アナリストが提示する目標株価の平均は232ドル程度で、現状よりも20%ほど高い。11月に入ってからは目標株価を300ドル以上に設定するケースもみられる。80人のアナリストのうち73人は買い、6人は維持、1人は売りを勧めている。
エヌビディアの株価上昇は減速傾向 10月以降は3.53%高どまり
エヌビディアの株価は最高値更新が視野に入る水準だが、勢いは鈍化している。エヌビディアの株価の騰落率を四半期ごとにみると、トランプ政権による半導体輸出規制の可能性が重荷となった1-3月期は19.29%安の急落。その後、4-6月期は45.77%高と急反発したが、7-9月期は18.10%高に減速。10-12月期は11月11日段階で3.53%高に留まっている。
オープンAIの躍進は業績の追い風 競合激化で成長ペースにブレーキか
エヌビディアの株価上昇の減速は、株式市場でのAIブームの継続への期待が揺らいでいることの反映だ。対話型AIサービスChatGPTで知られるオープンAIは9月以降、矢継ぎ早に大規模なAIインフラ投資を発表。9月22日には、オープンAIとエヌビディアが連携し、10ギガワット(1000万キロワット)超に相当する規模のデータセンターを構築すると発表している。ただ、オープンAIがこれまでに発表した30ギガワット規模に達するAIインフラ構想を実現するために必要な1兆4000億ドルもの資金の出どころは明確ではなく、実現可能性を疑う向きも消えない。
またオープンAIが提携する半導体企業はエヌビディアに留まらず、アドバンスド・マイクロ・デバイセズ(AMD)やブロードコム(AVGO)にも広がっている。通信機器向け半導体を強みとしてきたクアルコム(QCOM)もAI分野に本格参入すると発表した。エヌビディアはこれまでAI向け半導体で圧倒的なシェアを誇ってきたが、競合が増えることで価格競争が始まる可能性もあり、エヌビディアの総収入や利益の成長ペースが落ち込む懸念も出てきそうだ。
中国向け輸出規制は引き続き重荷 11-1月期の見通しが期待外れなら株価下落も
さらにエヌビディアはトランプ政権の半導体輸出規制により、中国市場での成長が期待できなくなっている。トランプ政権は4月にエヌビディアが中国市場向けに性能を落として開発した半導体H20について、輸出規制の対象になることを明確化。5-7月期には中国市場での収入は前年同期比24.5%減となった。
H20の輸出をめぐっては8月、米政府が中国向け輸出を認めることと引き換えに、エヌビディアから売り上げの15%を受け取ることでトランプ氏とジェンスン・ファンCEOとの合意が成立したと説明されていたが、エヌビディアはH20の中国向け輸出は行われていないとしている。法的根拠のない異例の「ディール」はエヌビディアに訴訟リスクに突きつける可能性もある。またトランプ氏は10月30日の米中首脳会談を前に、エヌビディアの最新型半導体「ブラックウェル」の扱いを議題に上げると言及したが、会談後は俎上にのぼらなかったと軌道修正した。
こうした中、エヌビディアの19日の決算発表では、2025年11月-2026年1月期の総収入の見通しが注目されそうだ。ブルームバーグがまとめた市場予想の612億ドルを超えられなければ、エヌビディアの成長が減速するとのシナリオが意識され、株価が下落するおそれがある。逆に成長の見通しが投資家の期待を超える内容になれば、株価が最高値を超えて大きく上昇する可能性もあるが、AIブームをめぐる多くの不安が今後も悪材料として意識されることも考えられる。
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