ドル円、2026年の見通しは? 円安は転換期か 日銀利上げ意欲焦点
ドル円相場は2025年も荒れた値動き。2026年はFRBの利下げと日銀の利上げが円高要因だが、日銀の強気度合いで円安が先行する可能性もある。
ドル円相場の2025年の値動きは迷走をたどった。ドル円相場は25日のニューヨーク市場の終値で1ドル=155.83円。2024年末との比較ではわずか1.37円の円高水準とはいえ、4月下旬に139円台まで大きく円高が進んだ後、その後は円安傾向が強まって1年前の水準に戻るという荒れた値動きだった。アメリカのドナルド・トランプ大統領の経済政策への不安が契機となったドル安と、高市早苗政権の誕生が火をつけた円安が要因だったといえる。一方、2026年は米連邦準備制度理事会(FRB)が利下げ姿勢を強めるとみられ、2022年以降の円安の流れが転換期を迎える可能性がある。また日銀は現状以上に円安が進めば物価上昇圧力の強まりを意識せざるをえず、追加利上げの必要性が大きくなることも円高要因といえそうだ。ただ、日銀の情報発信から経済成長を減速させかねない利上げへの慎重姿勢がにじめば、投機筋による円売りが主導して金融市場で円安圧力が強まる展開も考えられる。
ドル円相場は156円台 片山財務相らの口先介入で円安一服
ドル円相場(USD/JPY)は日本時間26日午後3時10分段階で1ドル=156.13円で取引されている。ブルームバーグによると、ドル円相場では19日、日銀が金融政策決定会合で利上げを決めた後の植田和男総裁の記者会見が追加利上げに慎重と受け止められ、一時、157.78円まで円安が進行。しかしその後は片山さつき財務相が急激な円安には「断固として措置をとる」と述べたことなどが伝わり、為替介入への警戒感が円安を一服させている。
ドル円相場は4月には139円台まで円高に 高市政権発足後に円安急進
ドル円相場は2025年も荒れた値動きだった。2024年末の1ドル=157.20円からスタートした後、1月に大統領に就任したトランプ氏が高関税政策で米国経済への不安を高めるとともに、利下げに慎重姿勢をとっていたFRBのジェローム・パウエル議長の解任までちらつかせると、4月22日には139.89円をつける場面もあった。2024年末との比較では17.31円もの円高水準だ。円高の流れはその後、トランプ氏がパウエル氏解任を否定したことや植田氏の利上げへの慎重姿勢が材料視されたことでストップ。高市政権発足の起点となった10月の自民党総裁選挙後は一気に円安が進んだ。高市氏の積極財政政策が財政の健全性を損ねるとの見方が強まったことが要因で、11月20日には157.89円をつけている。
2026年はFRBの利下げ姿勢が積極化か 最低2回の利下げの見通し
一方、ドル円相場の2026年の見通しをめぐっては、円安にブレーキがかかる可能性がある。トランプ氏が5月で任期が切れるパウエル氏の後任に、利下げに前向きな人物を選ぶことが確実視されているからだ。トランプ氏は年内にも次期FRB議長を指名する可能性があり、利下げ見通しの強まりがドル円相場で円高材料として働くことも考えられる。ドル円相場ではパウエル氏が2022年3月に利上げに着手した段階での1ドル=118円台から40円もの円安が進んできたが、FRB議長の交代が転換点となる可能性もありそうだ。
ブルームバーグによると、24日の金融市場では2026年10月の連邦公開市場委員会(FOMC)後の政策金利の水準は3.082%と見込まれており、現状から2回以上の0.25%利下げが想定されている。米国で11月に中間選挙が予定されていることも、トランプ氏が株高につながりやすい利下げを求める背景といえる。
日銀は6月までに利上げの可能性も 円安警戒は2025年よりも強くなる見通し
また、2026年は日銀が利上げペースを加速させる可能性があることも円高要因だ。植田氏は25日の日本経済団体連合会審議員会での講演で、少子高齢化による人手不足が賃上げ圧力を強めていると指摘するとともに、企業が原価の上昇を販売価格に転嫁する動きが着実に広がっているとも分析。賃金と物価がほとんど変化しないという「ゼロノルム」の世界に戻る可能性は「大きく低下したと考えている」と述べた。今後は物価上昇抑制のための利上げの重要性が高まっているともとらえられそうだ。ブルームバーグによると26日午後3時10分の金融市場では、6月決定会合後の政策金利の水準は0.910%と見積もられており、6月までの利上げ確率は73%とされている。
日銀には2026年のドル円相場が1年前よりも円安で推移し、輸入物価の上昇を通じて、前年同月比でみた物価上昇率を押し上げる効果を生むことへの警戒もありそうだ。足元のドル円相場は1年前と同水準ながら、年明け1月以降に円高が進まなければ、トランプ氏の経済政策への不安で大きく円高が進んだ2025年1-6月との比較では大きな円安になることも考えられる。植田氏が2025年に利上げを急がなかった背景には3月から7月にかけてドル円相場が1年前比で円高で推移してきたこともあったとみられ、2026年は様相が異なる展開が利上げによる円安阻止の必要性を高める可能性もある。
日銀の利上げは日本経済に逆風 2026年は投機筋の円売りが先行する可能性も
ただ、日銀が利上げを進めれば日本国内での企業活動を冷やす効果が生じかねないほか、同時に円高が進んだ場合には、海外で稼ぐ日本企業の業績を下押しする恐れもある。結果として企業の賃上げ意欲が衰えてしまい、日銀が目指す賃金と物価がともに緩やかに上昇する経済状況が遠のくことも考えらえる。こうした中で、2026年の日銀の情報発信から利上げへの慎重姿勢がにじみ、円安要因として材料視されることもありえそうだ。
実際、足元の金融市場では円安圧力の強さも感じられる。米商品先物取引協会(CFTC)の週次のデータによると、投機筋とみなされる非商業部門は16日段階で円を0.29万枚売り越し。2025の円高のピークに近い4月29日段階の17.92万枚の買い越しから、円買いが大きく縮小した形だ。2026年の日銀の情報発信次第では、投機筋の円売りが推進力となって、円安が先行する可能性もありそうだ。
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