原油価格上昇 中東和平の見通し悪化 交戦激化なら株式市場に衝撃も
WTIは一時94ドル台後半。前週末から4.71%高となった。イスラエルとイランの交戦が激化すれば、原油高が株式市場にも衝撃を与える可能性がある。
原油価格に上昇圧力がかかった。原油先物市場の指標価格であるWTI(7月渡し)は日本時間8日午前の取引で一時1バレル=94ドル台を記録。前週末終値から4.71%の値上がりとなった。週末の間にイスラエルとイランの間で軍事的な緊張が高まり、中東和平の実現に向けた見通しが暗くなったためだ。一方、8日のWTIの水準は5月中旬までと比べれば安値といえ、原油先物市場の動揺は限定的だともいえる。アメリカのドナルド・トランプ大統領がイスラエルとイランの双方に自制を呼びかけていることが一定の安心材料になっているようだ。ただ、中東情勢の悪化がさらに進んだ場合には投資家心理が大きく揺れることも想定される。原油価格の上昇に加え、米国株式市場の急落をも加速させ、世界の金融市場への衝撃が拡大する可能性もある。
WTIは一時、1バレル=94.80ドル 前週末比4.71%高
WTI(7月渡し、WTI原油)は日本時間8日午前10時44分段階で1バレル=93.96ドルで取引されている。ブルームバーグによると、午前10時31分には94.80ドルをつけ、前週末のニューヨーク市場の終値比で4.71%高となった。
イスラエルがベイルートを攻撃 イランはイスラエルの空軍基地へ反撃
原油価格が上昇したのは、中東での戦火再燃の可能性が強まったためだ。イスラエル政府は日本時間7日午後10時台にSNSのXへの投稿で、レバノンの首都ベイルートにある親イラン組織ヒズボラの本部を攻撃したと公表。「ヒズボラがイスラエル領内に行った攻撃への対応だ」とした。これを受けてイランはイスラエルに対するミサイル攻撃を実施。イランメディアのタスニム通信によると、イラン革命防衛隊はイスラエル北部の空軍基地を標的にしたとの声明を発表した。
イランはこれまで米国との和平合意の条件のひとつとして、イスラエルとヒズボラの停戦を挙げてきた。日本時間4日朝にはイスラエルとレバノンが停戦で合意したと伝わったものの、ヒズボラは両国の停戦を受け入れないとしており、中東情勢をめぐる緊張感が一層高まってきた。
原油価格の上昇は控えめ トランプ氏はイランとイスラエルの双方に自制を要請
一方、8日のWTIの水準はこれまでの原油高と比べれば安値水準ともいえる。WTIは5月21日までは1バレル=100ドルを超える値動きをみせていたほか、6月3日には米軍がイランの港に向かっていたタンカーを攻撃し、イランがクウェートの国際空港を攻撃したことを受けて97.00ドルをつけていた。
足元の原油価格の上昇が控えめな要因には、トランプ氏がイランとイスラエルの双方に自制を求めていることがありそうだ。FOXニュースは日本時間8日午前4時台、トランプ氏がインタビューの中で、イランに対して交渉の場に戻るように要請したと報道。イランがイスラエルに攻撃を加えたことを踏まえ、「それで充分だ」と述べた。トランプ氏は米インターネットメディアのアクシオスに対しても、今からすぐにイスラエルのベンジャミン・ネタニヤフ首相に電話して、報復攻撃を行わないように求めるつもりだと話した。トランプ氏はイスラエルとイランがお互いに攻撃を実施したことに触れ、「これ以上は必要ない」とした。
イスラエルの反撃などで原油高加速も 世界の株式市場に衝撃か
ただ、イランがイスラエルに対する直接的な攻撃を行ったのは、米国とイランの停戦合意が発表された日本時間4月8日以降では初めて。中東情勢が不安定感を増していることは間違いなさそうだ。今後、イスラエルがレバノン国内のヒズボラの拠点に攻撃を加えるなどすれば、緊張感がさらに高まり、原油価格への上昇圧力が一層強まることも考えられる。
米国の株式市場では5日、5月雇用統計の過熱感を受けてS&P500種株価指数(SPX)が急落。日本の8日午前の株式市場でも日経平均株価(N225)が6万3400円台まで急落している。雇用統計の過熱感を受けた株価下落の背景には、米国の労働市場の好調さが物価上昇圧力として働き、米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げ局面入りが近づくことへの警戒があり、中東情勢悪化が原油価格上昇を招いた場合には物価高への懸念がさらに強まることで、世界の株式市場にショックが走る展開もありえる。
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