原油価格、急騰続く　WTIは再び77ドル台　ホルムズ海峡封鎖懸念

原油価格の急騰が収まらない。原油先物市場の指標価格であるWTI（翌月渡し）は日本時間16日の取引を1バレル＝77ドル台でスタート。イスラエルによるイランの核施設攻撃が伝わった前週末13日に続く、77ドル台となった。イスラエルとイランはミサイル攻撃の応酬を継続。イラン側からは原油の重要な輸送ルートであるホルムズ海峡の封鎖を示唆する発言も出ており、原油市場の混乱は治まる兆しがない。また、米国の原油在庫の取り崩しが続き、需要の根強さを感じさせていることも原油価格の上昇要因だ。原油市場では供給と需要の両面で値上がりを裏付ける動きが出ているといえ、WTIの見通しをめぐってはさらに上昇圧力が強まることも考えられる。

WTIは16日も77.49ドルを記録　前週末終値から上昇

WTI（翌月渡し、WTI原油）は日本時間16日午前7時に1バレル＝77.49ドルをつけ、その後は73ドル台で推移している。ブルームバーグによると、WTIは13日に77.62ドルをつけた後、ニューヨーク市場の終値では72.98ドルまで値下がりしていたが、16日の取引では改めて急騰がみられた形だ。

イスラエルとイランの戦火は拡大　イラン側はホルムズ海峡封鎖検討か

原油価格上昇が崩れない要因は中東情勢の悪化だ。イスラエルは現地時間13日未明にイランに対する攻撃を開始。米メディアの報道によると、イスラエルの攻撃対象は核開発関連施設や軍事施設、石油精製施設などにも及んでおり、戦火が拡大している。これに対してイラン側もイスラエルに対する攻撃を行い、テルアビブなどで被害が報じられている。イラン国営通信IRNAによると、イラン革命防衛隊はイスラエルの戦闘機の燃料製造施設やエネルギー網に対するドローンやミサイルによる大規模な攻撃を行っているという。

こうした中、イラン側はホルムズ海峡閉鎖にも言及している。アルジャジーラなどは、イラン議会の保守系議員の声明に関するイラン国営メディアの報道を引用する形で、ホルムズ海峡封鎖が「真剣に検討されている」としている。ホルムズ海峡はイランの南側とアラビア半島の北側に挟まれた原油や石油製品の重要な輸送ルート。、米エネルギー情報局（EIA）がまとめた2023年のデータによると、日量2090万バレルの石油が通過し、世界の石油海上輸送の27％程度を占めているという。ホルムズ海峡封鎖が現実になれば、世界の石油輸送に余波が生じることは避けられない。

原油需要に根強さ　米中関係改善への期待も原油価格の値上がり要因に

また原油先物市場では原油需要の根強さも意識されやすい状態だ。EIAが11日に発表した6日時点の原油備蓄量（戦略在庫除く）は1週間前比で364.4万バレルの減少。ブルームバーグがまとめた市場予想の260.0万バレル減少を超える在庫の取り崩しだった。

需要面ではさらに、アメリカと中国の経済関係悪化に歯止めがかかっているとの期待も、世界経済の見通し不透明感を和らげる原油高の材料だといえる。WTIは5月5日には1バレル＝55.30ドルまで値下がりする場面もあったが、12日にアメリカと中国が関税大幅引き下げ合意を発表し、価格反転のきっかけになっていた。その後、米中間でレアアースや半導体の輸出規制をめぐる摩擦が起きたことは再びWTI上昇の重荷となっていたが、6月9、10日のロンドンでの米中協議が合意に達したことが原油高を後押ししている。

このためWTIの今後の見通しをめぐっては、値上がり圧力がかかり続ける展開が想定されそうだ。イスラエルによるイラン攻撃がイランの原油生産や輸出に大きな悪影響を与えることが判明したり、イランによるホルムズ海峡封鎖の現実味が高まったりした場合には、原油価格がさらに急騰する可能性もある。