原油価格の値上がり一服 WTI、66ドル台から転落 上昇再開も
WTI(翌月渡し)は11日に66ドル台まで上昇した後、64ドル台まで下落。米中協議への期待は一服したが、今後は改めて上昇が始まる可能性もある。

原油価格の上昇にブレーキがかかった。原油先物市場の指標価格であるWTI(翌月渡し)は日本時間11日未明に1バレル=66ドル台まで上昇し、約2か月ぶりの高値を記録。アメリカと中国が経済協議で歩み寄るとの期待が値上がり圧力として働いた結果だ。ただ、WTIはその後の11日午前の取引では64ドル台まで下落。日本時間朝には、米中協議が合意に至ったと伝わったものの、値上がりにはつながっておらず、米中協議を材料視した原油価格上昇は一服感が出たといえる。一方、米国の原油市場では、供給の弱まりや需要の強さを示す材料も目立ってきた。このため原油価格の今後の見通しをめぐっては、一旦は頭打ちとなった原油価格が改めて値上がりを始める可能性もありそうだ。
WTIは66.28ドルまで上昇 6月に入って11%高で2か月ぶりの高値に
WTI(翌月渡し、WTI原油)は日本時間11日午前0時30分ごろに1バレル=66.28ドルをつけた。ブルームバーグによると、4月4日につけた66.90ドル以来、約2か月ぶりの高値だ。WTIは5月30日には59ドル台をつける場面もあったが、6月に入ってから11%程度の値上がりを記録したことになる。

WTIの上昇は一服 米中協議での原則合意は価格上昇につながらず
WTIを上昇させたのは米中協議進展への期待だ。米国のスコット・ベッセント財務長官らと中国の何立峰副首相らはロンドンで9、10日に、双方が行っている輸出規制などについて協議。米国側から交渉の進展に楽観的な見方が示される中、原油価格に上昇圧力がかかっていた。WTIはドナルド・トランプ大統領が4月2日の相互関税発表などで米中間の緊張を高めるまでは1バレル=70ドル台をつけていただけに、米中の対立緩和は原油高の材料とみなされたようだ。
ただ、こうした米中協議を材料視した原油価格の上昇には一服感も出ている。WTIは66ドル台までの上昇後、日本時間11日午前3時30分ごろには1バレル=64.57ドルまで下落。その後、協議に参加していたハワード・ラトニック商務長官が「協議は実に順調に進んでいる」と述べ、午前8時すぎには何氏が5月12日に米中が発表した関税大幅引き下げ合意を実行に移す枠組みについて原則で合意したと述べたとも伝わったが、原油価格の上昇にはつながっていない。合意の詳細な内容は明らかになっておらず、一本調子での値上がりにはブレーキがかかったといえそうだ。
アメリカの原油生産量は2026年は減少か EIAが見通しを公表
一方、原油市場をめぐっては新たな値上がり材料も出ている。米エネルギー情報局(EIA)が10日に発表した6月の短期エネルギー見通し(STEO)では、米国の2026年の原油生産量は日量1337万バレルとされ、2025年の日量1342万バレルから低下するとの見通しが示された。米国内で稼働中の原油掘削設備の数が減っていることや、原油価格の低下を考慮したという。

トランプ氏は米国内のエネルギー生産を後押しして原油価格を下げるとしてきたが、エネルギー企業は原油価格の低下は収益性を悪くすると懸念しており、増産には慎重になっているようだ。原油生産をめぐっては、サウジアラビアやロシアなどを含むOPECプラス内の8か国が増産の前倒しを進めており、原油価格の下落要因して働いてきたが、米国の生産が伸びないとの見方が浸透していけば、原油価格の上昇要因として意識されることも考えられる。
米国の原油需要には根強さ 在庫量が予想を超える取り崩しならWTIが再上昇も
また米国では原油需要の根強さも示されている。EIAが4日に発表した5月30日時点での原油在庫量(戦略備蓄除く)は1週間前比で430.4万バレル減。ブルームバーグがまとめた市場予想の312.8万バレル減よりも大きな在庫の取り崩しとなった。EIAが11日午前10時30分(日本時間11日午後11時30分)に発表する6日時点の在庫量は260万バレルの減少が予想されており、改めて予想以上の取り崩しが確認されれば、原油需要の強さが原油価格を押し上げるシナリオも想定されそうだ。

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