円高急進、イラン核施設に攻撃 一時142円台 FRB利下げ期待も拡大
イスラエルの対イラン攻撃は有事の円買いにつながった。米国の経済指標はFRBの利下げ期待を高めており、やはり円高要因となっている。

ドル円相場で円高が急進した。ドル円相場は日本時間13日午前の取引で一時、1ドル=142円台後半を記録。約1週間ぶりの円高水準をつけた。イスラエルがイランの核施設に攻撃を加えたことがきっかけで、「有事の円買い」が起きた形だ。また、12日には米国の物価上昇鎮静化や労働市場の不安を示す経済指標も発表され、米連邦準備制度理事会(FRB)による利下げ期待が膨らんでいることも円高の背景になっている。ドル円相場の今後の見通しをめぐっては、イランからイスラエルへの報復攻撃などで中東情勢が悪化する可能性が焦点のひとつ。また週明け以降には日本銀行とFRBがそれぞれ金融政策を発表する予定で、やはり円高材料として受け止められる可能性がありそうだ。
ドル円相場は一時、142.80円 イスラエルのイラン核施設攻撃で有事の円買い
ドル円相場(USD/JPY)は13日午前9時台に一時、1ドル=142.80円をつけた。午前8時ごろには143円台半ばで取引されいてたが、1時間あまりの間に0.70円程度の円高が進んだことになる。

ネタニヤフ首相「攻撃は何日間でも続く」 過去にはイランからイスラエルの攻撃も
円高の理由は中東情勢の急激な悪化だ。イスラエルのベンジャミン・ネタニヤフ首相は現地時間13日未明にSNSのXに投稿した演説動画の中で、「イスラエルの生存に対するイランの脅威を退けるため、標的を絞った軍事作戦を実行した。脅威が取り除かれるまで作戦は何日間でも続くだろう」とした。イランのナタンズにあるウラン濃縮施設を含む核関連施設や原子力を専門とする科学者などを標的にしたとしている。
中東情勢は2023年10月7日にパレスチナ自治区を拠点するイスラム組織ハマスがイスラエルに攻撃を加えて以降、悪化してきた。2024年4月1日にはイスラエルがシリア首都にあるイラン大使館周辺に攻撃を加え、13日にイランがイスラエルに対するドローンと弾道ミサイルによる報復攻撃を実施した。また、10月1日にはイスラエルがレバノン南部に侵攻したことを受け、イランが即座にイスラエルに対するミサイル攻撃を実施。イスラエルは26日になってイラン国内の軍事施設に対する攻撃を行っている。
米国の長期金利が低下 日米金利差縮小にはつながらず
13日の金融市場では円とともに、安全資産としての米国債も買われ、米国債の価格上昇が長期金利(10年物国債利回り)の低下につながった。ブルームバーグによると、米国の長期金利は一時、4.308%をつけ、5月8日につけた4.281%以来、約1か月ぶりの低水準となった。ただ、同時に日本の長期金利も低下しているため、日米の金利差の縮小にはつながっておらず、日米金利差は2.9%ポイント台となっている。

米国の5月PPIでも物価上昇圧力は高まらず 失業保険申請は3週連続で予想超え
またドル円相場では米国で12日に発表された経済指標も円高要因として受け止められていた。労働省が発表した5月の卸売物価指数(PPI)の伸び率は前年同月比2.6%で、ブルームバーグがまとめた市場予想と一致する結果。11日に発表された5月の消費者物価指数(CPI)が市場予想を下回ったことと合わせて、ドナルド・トランプ大統領の高関税政策にも関わらず、物価上昇圧力は懸念されたほどには強まっていないとの見方が広がった。

また同じく12日に発表された週次の失業保険関連統計では、1-7日週の新規失業保険申請件数が24.8万件となり、市場予想の24.2万件を上回った。申請件数が予想を上回るのは3週連続で、高関税による経済の先行き不透明感が労働市場の悪化として現れ始めている可能性がある。

FRBの利下げ見通しはドル安要因に ユーロやポンド、豪ドルも対ドルで上昇
こうした物価上昇鎮静化や労働市場悪化の兆しは、FRBの利下げ見通しを強めるドル安要因だ。ブルームバーグによると、金融市場で見込まれる9月利下げの確率は100%を超えており、前日の9割以上から確度が高まった。こうした中、ドル円相場の12日のニューヨーク市場での終値は1ドル=143.48円となり、前日比で1.08円の円高となっていた。また12日のFX市場では円以外の主要通貨もドルに対して買われ、ユーロの対ドル相場(EUR/USD)の12日の終値は前日比で0.84%のユーロ高、ポンドの対ドル相場(GBP/USD)は0.49%のポンド高、豪ドルの対ドル相場(AUD/USD)も0.49%の豪ドル高となっていた。

中東情勢の悪化は進むか? 日銀とFRBの金融政策の行方も円高要因の可能性
ドル円相場の今後の見通しをめぐっては、イランによる報復攻撃の有無が焦点の一つとなりそうだ。ブルームバーグによると、国営イラン通信(IRNA)はイランがイスラエルの攻撃に対して「断固たる対応」を計画していると報じている。一方、米国のマルコ・ルビオ国務長官は12日、イスラエルによるイラン攻撃について「米国は関与していない」との声明を発表し、「イランは米国の国益や人員を標的にすべきではない」と強調している。
また日銀は16、17日に金融政策決定会合を開催。FRBは17、18日に連邦公開市場委員会(FOMC)を開く。金融市場ではいずれも政策金利が維持されることが確実視されているが、根強い物価上昇に直面している日銀の利上げや、FRBの利下げの可能性が高まれば、ドル円相場での円高要因として働くことが想定されそうだ。
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