原油価格に復活の道筋も WTIが4日で9%高 米中協議で上昇加速か
WTI(翌月渡し)は日本時間9日に一時、1バレル=60ドル台を記録。米中協議での進展期待が背景にあるが、OPECプラスの増産加速は下落要因となっている。

原油価格が大きく反発した。原油先物市場の指標価格となるWTI(翌月渡し)は日本時間9日朝の取引で1バレル=60ドル台まで上昇。5日につけた55ドル台から9%の値上がりとなった。アメリカがイギリスとの関税協議での大枠合意を発表し、ドナルド・トランプ大統領の高関税が火をつけた世界経済の混乱が収束に向かうとの期待が出ているためだ。米国は週末には中国との間でも経済関係について協議を行うとみられ、今後、世界経済の見通しの改善が原油価格をさらに上昇させる可能性もありそうだ。ただ、サウジアラビアやロシアを含むOPECプラスの8か国は増産ペースを上げており、供給拡大が原油価格の下落につながる筋書きは消えていない。米中間の協議が期待外れの結果に終われば、原油価格が下押しされることも考えられる。
WTIは60.29ドルまで上昇 4日前の55ドル台から大きく反発
WTI(翌月渡し、WTI原油)は日本時間9日午前5時台に1バレル=60.29ドルをつけた。ブルームバーグによると、WTIは5日午前7時台には55.30ドルをつけており、4日間で9.02%高になった形だ。

アメリカとイギリスが関税協議での大枠合意を発表 世界経済への不安後退
原油価格の上昇を後押ししているのは世界経済混乱が収束に向かうとの期待。米国と英国が8日に関税協議での大枠合意を発表したことが材料視された。米統計局のデータによると、2024年のモノの貿易について、英国は米国にとって9番目の貿易規模がある相手国。英国は米国に対する貿易赤字国で、トランプ氏にとっては不満の少ない交渉相手といえるが、初めての関税協議での合意は先行き不透明感を和らげる要因となった。原油市場にとっては原油需要増加を連想させる値上がり要因だ。
ホワイトハウスによると、米英間の大枠合意では、トランプ氏が3月に発動した鉄鋼とアルミニウム輸入に対する25%関税は、英国からの輸入に関しては免除。4月発動の輸入自動車輸入への25%関税は、英国からの10万台分については10%に引き下げられる。一方、英国は米国産牛肉への関税を引き下げるほか、エタノールの米国からの輸入でも一部の関税をゼロにする。
米中協議への進展にも期待 ベッセント財務長官と何副首相が会談へ
また、金融市場では米中間でも緊張緩和が進むとの期待もある。米国のスコット・ベッセント財務長官は10日からスイスで中国の何立峰副首相と会談する予定。両者の協議で進展が感じられれば世界経済をめぐる不安がさらに後退し、原油価格を上昇させることも考えられそうだ。ベッセント氏は米国が中国製品に145%の関税をかけ、中国が米国製品に125%の関税をかける状況は「持続可能ではない」と認めている。
さらに、懸念されてきた高関税が米国経済の成長を減速させ、原油需要を低下させるとの筋書きも現実にはなっていない。米エネルギー情報局(EIA)が7日に発表した2日段階での原油在庫量は1週間前比で203.2万バレルの減少。ブルームバーグがまとめた市場予想の185.8万バレル減少よりも大きな在庫の取り崩しとなった。原油需要が市場予想よりも強いことを示す結果は5週連続だ。

OPECプラスは増産ペースを再加速 米中協議が期待外れなら原油価格下落見通しも
ただ、原油市場をめぐっては供給面での下落圧力がかかり続けている。OPECプラスの構成国のうちサウジやロシアなどの8か国は3日、6月の生産量を日量3137.5万バレルにすると発表。2024年12月5日に発表した段階的な増産計画では10月の生産量にあたる水準で、増産が4か月前倒しされたことになる。8か国はトランプ氏が相互関税を発表した翌日にあたる4月3日にも増産計画の2か月前倒しを発表し、原油価格の下落を後押しした。今回の再度の増産前倒しは、供給増による価格下落を容認する8か国の姿勢の強さを感じさせ、さらなる前倒しの可能性も見込まれる状況だ。

このため週末に予定されている米中協議に目立った進展がなければ、原油価格への下落圧力の影響度が高まる可能性がある。トランプ氏は協議の進展に自信を示しているが、中国側から楽観ムードに冷や水をかける情報発信があるなどすれば、世界経済の見通し不安が再燃し、WTIが値下がりすることも考えられる。
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