米国株、パウエル講演で大揺れも S&P500転落 大手ハイテク総崩れ
S&P500は4日続落。22日のパウエル氏の講演が警戒されている。一方、大手ハイテク各社の業績は好調で、講演後にS&P500が反転する可能性もある。

アメリカの株式市場が大揺れへの警戒を強めている。S&P500種株価指数の20日の終値は4営業日続落となる前日比0.24%安。最高値から1%超安まで後退した。半導体大手NVIDIA(エヌビディア)をはじめとする大手ハイテク株はそろって2日以上の続落で、上昇の勢いが衰えている。金融市場の関心は米連邦準備制度理事会(FRB)のジェローム・パウエル議長が22日にワイオミング州ジャクソン・ホールで行う講演に集まっており、講演内容を受けてFRBの利下げへの期待が後退すれば、S&P500にとっては逆風となりそうだ。ただ、7月雇用統計で示された労働市場の悪化を踏まえれば、パウエル氏が9月利下げを示唆する可能性も残されている。また、大手ハイテク各社の業績への期待が高いこともS&P500にとっては安心材料だ。パウエル氏の22日の発言が金融市場の想定内に収まれば、S&P500が反転するきっかけになるシナリオも想定される。
アメリカのS&P500は4日続落 最高値から1.12%安に後退
S&P500(SPX)の20日の終値は6395.78。14日につけた最高値(6468.54)からは1.12%安まで後退した。ブルームバーグによると、S&P500は7月雇用統計が想定以上の悪さだった1日までに4日続落し、その後は反発していたが、改めて見通しへの不安が高まっているようだ。

マグニフィセント・セブンがそろって続落 エヌビディアは0.14%安
20日の取引ではS&P500への影響度が大きい「マグニフィセント・セブン」と呼ばれる大手ハイテク7社がいずれも2日以上の続落となった。アップル(AAPL)は前日比1.97%安で5営業日続落。アマゾン・コム(AMZN)も2日続落の1.84%安となった。27日に2025年5-7月期決算を発表するエヌビディア(NVDA)も0.14%下落という小幅安ながらも2日続落となっている。7社の株価が2日連続でそろって値下がりするのは、ドナルド・トランプ大統領が相互関税を発表した翌日にあたる4月3日と4日にかけて以来だ。BITA社が算出する「マグニフィセント・セブン指数」(BMAG7I)は14日の1648.47をピークとして4営業日連続で下落している。

パウエル氏のジャクソン・ホール演説に注目 利下げへの期待は徐々に後退
金融市場が注目するのはジャクソン・ホールでの毎夏恒例の経済イベントで、パウエル氏が米国東部時間の22日午前10時(日本時間22日午後11時)に行う講演だ。パウエル氏は昨年8月のジャクソン・ホール講演では、「金融政策を調整する時が来た。向かうべき方向ははっきりとしている」と述べ、9月の利下げを事実上予告。当日のS&P500に前日比1.15%高の値上がりをもたらした。FRBは実際、2024年9月のFOMCで0.5%幅の利下げを決め、金融政策の方向を大きく転換している。
しかし足元の金融市場では講演が近づくにつれて、利下げへの期待が徐々に後退している。ブルームバーグによると、金融市場で見込まれる9月FOMC後の政策金利の水準は20日時点で4.125%。13日段階での4.063%からの上昇傾向が出ている。利下げ期待の後退は金融市場での金利水準を高め、株式投資の魅力を相対的に低くするS&P500にとっての逆風だ。

物価上昇はトランプ氏の高関税で不透明 労働市場の悪化は利下げを迫る
利下げ期待の後退の背景には、米国の物価上昇の根強さがある。FRBが物価動向の指標として重視する個人消費支出(PCE)物価指数の伸び率は7月31日に発表された6月のデータで前年同月比2.6%となり、2か月連続で前月から物価上昇が加速した。1年前のジャクソン・ホール講演前には2024年6月のPCE物価指数の伸び率が2.5%となり、物価上昇の低下傾向が確認されていたが、足元ではトランプ氏の高関税政策によって物価の見通しがつきにくくなっており、利下げの決断を難しくしている。

一方、パウエル氏が22日の講演で、9月利下げを完全に否定するとは考えにくい。パウエル氏は7月雇用統計発表の2日前にあたる7月30日の連邦公開市場委員会(FOMC)後の記者会見の段階ですでに、「労働市場に関する下振れリスクをはっきりとみることができる」と述べていた。足元の失業率は1年前と同じ4.0-4.2%での推移が続いているが、7月雇用統計で示された非農業部門の就業者数の下振れは、FRBに景気を下支えするための利下げを迫る材料といえそうだ。このためパウエル氏が講演で9月利下げの可能性を示唆し、S&P500を下支えする展開も想定される。
大手ハイテク企業の業績は好調 パウエル氏の講演が想定内ならS&P500反発も
S&P500にとっては、株価上昇が減速した大手ハイテク株の業績への期待が崩れていないことも安心材料といえる。マグニフィセント・セブンのうちのエヌビディアを除く6社が7月下旬に発表した4-6月期決算は、テスラ以外の5社が総収入と1株当たり利益が市場予想を超える好調さだった。AIブームを背景としたクラウド事業の成長などが原動力だ。株価の割高感をみても、テスラを除く6社は株価水準と今後12か月の予想収益から算出される株価収益率(PER)が19-32倍となっており、極端に高まっているわけではない。テスラは業績不振の結果、予想PERが150倍を超えているが、7社の中では例外的な存在だ。

パウエル氏はこれまで利下げへの慎重姿勢を繰り返し、トランプ氏から「遅すぎる」との批判を受けてきた。このためパウエル氏が22日の講演で利下げを予告しなかった場合でも株式市場では想定内と受け止められ、AIブームへの期待がS&P500を改めて上昇させる展開も考えられそうだ。
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