米国株、上昇機運強まる S&P500週次続伸 米中融和期待の裏に不安
S&P500は2日、相互関税発表前の水準を回復。米中緊張緩和の兆しや雇用統計、大手ハイテク決算などが好感されたが、高関税の悪影響への懸念は残る。

アメリカの株式市場に上昇機運が強まっている。S&P500種株価指数の2日の終値は1週間前比で2.92%高。2週連続での値上がりで、ドナルド・トランプ大統領による相互関税発表前の水準を1か月ぶりに回復した。2日に発表された4月雇用統計が堅調な結果だったことや、米中間に関係改善の兆しが出ていることが好感された。また大手ハイテク企業の決算発表には地力の強さも感じられ、投資家の不安は鎮静化に向かっている。ただ、トランプ氏が現在も高関税政策を維持していることに変わりはなく、経済への影響がこれから表面化する恐れは残る。S&P500の今後の見通しは、米中関係改善の進展度合いに左右される場面も出てきそうだ。
アメリカのS&P500は週次2.92%高 9営業日続伸で相互関税発表前の水準を回復
S&P500(SPX)の2日の終値は前日比では1.47%高の5686.67。9営業日続伸の間に10.25%上昇し、トランプ氏が相互関税を発表する直前につけた4月2日終値(5670.97)を超えた。9営業日続伸は大接戦となった2004年大統領選挙の投票日前後にあたる2004年10月26日から11月5日にかけて以来、20年半ぶりだ。

4月雇用統計は堅調な結果 米中協議への兆しはS&P500にとって光明
S&P500を勢いづけたのは2日朝に発表された4月雇用統計だ。非農業部門の就業者数は前月比17.7万人増で、ブルームバーグがまとめた市場予想の13.5万人増を上回る結果。同時に2月と3月の増加幅は合計5.8万人下方修正されたものの、3か月平均では15.5万人のペースで就業者が増えており、堅調な結果と受け止められた。失業率は前月から横ばいの4.2%で市場予想通りの結果。平均時給の伸び率も前月と同じ前年同月比3.8%で、市場予想の3.9%を下回った。いずれの数値からも懸念されていた労働市場の悪化はみられなかったといえる。

また株式市場では米中関係改善への期待も大きい。ブルームバーグによると、中国商務省は2日、米国との通商協議の可能性を検討しているとの報道官談話を発表。米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)も2日、関係者の話として、合成薬物フェンタニルの問題に関連し、習近平政権がトランプ政権の中国に対する要求を探ろうとしていると報じた。トランプ氏は米国内でのフェンタニル乱用問題をめぐり、原料物質を生産している中国を批判している。米国と中国がお互いに高関税をかけあう状況がフェンタニル問題での協調がきっかけとなって解消に向かうとの筋書きは、米中対立が重荷となってきたS&P500の見通しにとっての好材料といえそうだ。
大手ハイテク企業の決算はS&P500に追い風 マイクロソフトは年初来高値が接近
さらにこのところの決算発表では、S&P500への影響度が大きい大手ハイテク企業の底力も感じられる。マイクロソフトは4月30日に市場予想を超える2025年1-3月期決算を発表。人工知能(AI)サービスの提供基盤となっているクラウド事業の成長が加速しており、経済の見通し不透明感が企業からの需要を抑えるとの不安を払拭した。マイクロソフトの株価(MSFT)の2日の終値は435.28ドルで、1月28日につけた年初来高値(447.20ドル)まであと2.7%程度まで迫っている。

またマイクロソフトと同じ30日にメタ・プラットフォームズ(META)が発表した1-3月期決算も市場予想を超える内容。利用者数の成長加速も好材料となって、5月2日までの2日間で株価は8.75%高となった。さらにアルファベット(GOOGL)が4月24日に発表した1-3月期決算もクラウド事業や広告事業の成長減速をYouTubeなどでの有料会員サービスの成長が補っている。
AI投資期待でエヌビディアは週次3.14%高 投資家心理の改善継続
大手ハイテク企業の好調な決算はAI投資が継続する見通しを感じさせ、半導体大手NVIDIA(エヌビディア、NVDA)の株価は2日までの週次で3.14%高。ブロードコム(AVGO)も週次5.89%高と好調だ。また、S&P500構成銘柄ではないものの、7日に決算を発表する英半導体大手アーム・ホールディングス(ARM)の株価も週次8.76%高となっている。

こうした決算発表の内容は投資家心理を改善させているようだ。シカゴ・オプション取引所によると、ウォール街の「恐怖指数」と呼ばれるVIX指数(VIX)の2日の終値は前日よりも7.80%低い22.68。25営業日連続で20を超える水準が続いてはいるが、4月2日(21.51)以来の低さとなっている。VIXはS&P500のオプション取引の動向から算出され、値が大きいほど、今後の値動きが激しくなることへの警戒感が強いことを示す。

高関税の悪影響は今後表面化の可能性 FRBの動向もS&P500の見通しを左右か
ただ、トランプ氏が高関税政策を維持していることに変わりはなく、1日に決算を発表したアップル(TSLA)は4-6月期に高関税で9億ドルの悪影響を受けると言及。同じく1日にはアマゾン・コム(AMZN)が好決算を発表したが、高関税への悪影響への懸念は残った。両社はいずれも中国で生産された製品を米国内で販売する小売事業者の側面があり、高関税の影響は今後、拡大していく可能性もありそうだ。両社の株価は2日の取引で下落している。また、経済指標でも、4月30日発表の新規失業保険申請件数は予想を上回る高さとなっており、労働市場悪化の兆しととらえることもできる。

こうした中、S&P500の今後の見通しは米中協議の進展や経済指標の結果に左右されることが考えられる。また、米連邦準備制度理事会(FRB)が6、7日に開く連邦公開市場委員会(FOMC)に際して、経済の現状や今後の金融政策の道筋についてどのような情報発信をするかも、株式市場のムードを左右しそうだ。
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