アーム、強気の業績見通し出るか？　5日決算　最高値更新に期待

アームの2025年7-9月期決算は総収入が25.5％増の見通し

アームはアメリカ東部時間11月5日午後5時（日本時間6日午前7時）から決算会見を開く。ブルームバーグがまとめた市場予想によると、アームの7-9月期決算は総収入が前年同期比25.5％増の10.59億ドルになる見通し。調整ベースの1株当たり利益（EPS）は10.0％増の0.33ドルと見込まれている。アームは2023年9月14日に米ナスダック市場に米国預託証券（ADR）を上場し、これまに8回の四半期決算を発表。前回初めて、総収入と1株当たり利益がわずかに市場予想を下回った。

アームの株価は2024年末比で40.31％高　最高値から7.17％安まで回復

アームの株価（ARM）の28日の終値は173.09ドルで、2024年末比では40.31％高。2024年7月10日につけた最高値（186.46ドル）から7.17％安の水準まで回復してきた。ドナルド・トランプ大統領が相互関税の一部停止を発表する前日の4月8日につけた底値（85.82ドル）からは株価が2倍以上になっている。

ブルームバーグによると、直近の株価と今後12か月の予想収益から算出される株価収益率（PER）は28日時点で87.5倍。前回決算発表当日（7月30日）とほぼ同水準になっている。アナリストが提示する目標株価の平均は157ドル程度で、現状よりも9％ほど安い。46人のアナリストのうち25人は買い、17人は維持、4人は売りを勧めている。

アームの株価は前回決算発表では急落　AIブーム再燃を背景に急反発

足元では最高値更新が近づいているアームの株価は、前回の決算発表後には急落していた。アームが示した7-9月期の業績見通しが、総収入でブルームバーグがまとめた市場予想と一致するに留まったことに加え、1株当たり利益では市場予想を下回るという弱気な内容だったためだ。アームの株価は決算発表翌日の7月31日の終値で前日比13.44％安の141.38ドルまで急落。約3週間後の8月20日には131.16ドルまで落ち込んだ。

それでもアームの株価が復活してきた背景にはAIブームの再燃がある。オープンAIがオラクル（ORCL）と約5年間で3000億ドルのクラウドサービス契約を結んだと報じられた9月10日、アームの株価は前日比9.47％高と急騰。オープンAIはその後も相次いでサービス供給能力拡大をねらった大規模データセンター建設計画を打ち出しており、半導体株への追い風となった。アームが半導体メーカーに提供している技術はAI向け半導体の省電力化に有効とされ、データセンター拡充がアームの業績を後押しするとの期待は強い。

スマートフォン市場の回復にも期待　ロイヤルティ収入を押し上げか

また、アームの収益源のひとつである、顧客企業がアームの技術を用いた半導体の製造で得た収益に応じてアームが受け取るロイヤルティ収入をめぐる環境も改善しているもよう。アームの技術が浸透しているスマートフォン市場の回復基調が要因だ。民間調査会社IDCは13日に発表したスマホ世界市場の動向に関するレポートで、7-9月期のスマホ市場の出荷台数は前年同期比2.6％増だったとし、消費者がスマホを高級機種にアップグレードする流れでスマホ市場の回復が続いているとした。ブルームバーグがまとめた市場予想では、アームの7-9月期のロイヤルティ収入は4-6月期から横ばいの5.86億ドルと予想されているが、上振れの可能性もありそうだ。

アームは10-12月期の強気な業績見通し示せるか？　過去は決算発表後の下落が大半

こうした中、5日の決算発表ではアームが示す10-12月期の業績見通しに注目が集まる。AIブーム再燃やスマホ市場の回復を受け、アームが市場予想を超える成長の道筋を示せば、株価には上昇圧力がかかると想定される。ブルームバーグのまとめでは、10-12月期のアームの総収入は前年同期比7.7％増の1058億ドル、1株当たり利益は10.3％減の0.35ドルと見込まれている。また、これまで公表してこなかった2026年3月通期の業績見通しが示されるかも焦点となりそうだ。

ただ、アームはこれまで、慎重な業績見通しで繰り返し投資家を失望させてきた。過去8回の四半期決算のうち、翌日の株価が上がったのは2回だけ。このうち2024年11月6日の決算発表は当日の時間外取引では株価が下落したが、前日の大統領選挙でのトランプ氏の勝利を歓迎するムードで7日の株価が上昇した側面もあった。このため今回の決算発表でもアームの経営陣の慎重姿勢が株価下落につながるおそれも残っていそうだ。