ドル円相場は164円台が目前。原油価格上昇が材料視される中、29日までのFOMCが円安急進のきっかけになる可能性がある。
ドル円相場で円安急進の可能性が高まってきた。ドル円相場は24日の取引で1ドル=164円台が目前に迫っており、前週末から1.54円の円安が進む値動き。イラン情勢悪化による原油価格の上昇が、米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げ見通しを強めていることが背景といえる。また、直近2週間の値動きをみると、主要通貨の中で円の弱さが際立っており、高市早苗首相が日本銀行の利上げに否定的だとの根強い見方が、円安を加速させている側面もありそうだ。さらに日本の物価上昇には落ち着きがみられ、日銀の次の利上げがFRBに後れを取る可能性があることも、円安材料といえる。こうした中、ドル円相場の見通しをめぐっては、29日に示されるFRBの金融政策の見通しが、円安をさらに加速させる可能性がある。ドル高要因での円安進行には、日本政府の為替介入の効果は薄いとの見方も成り立つ。ただ、歴史的な円安水準に対しては米国政府も問題視している様子が感じられ、日米協調為替介入への警戒が円安にブレーキをかける展開もありえる。
ドル円相場(USD/JPY)は日本時間24日午後2時45分段階で1ドル=163.82円で取引されている。ブルームバーグによると、23日午後11時台につけた163.99円は1986年11月24日(164.18円)以来の円安水準で、前週末17日のニューヨーク市場終値から1.54円の円安が進んだ形だ。ドル円相場は6月30日に162円台に突入し、39年半ぶりの円安水準となった後、7月21日午後11時台には163円の節目も超え、さらに164円台を伺う値動きとなっている。
足元での円安の要因はイラン情勢悪化がFRBの利上げ見通しを強めていることだ。ブルームバーグによると、イエメンを拠点とする親イラン組織フーシは紅海でサウジアラビアのタンカー2隻をミサイルとドローンで攻撃したと表明。原油先物市場の指標価格であるWTI(9月渡し、WTI原油)は日本時間24日午前3時台に1バレル=93.50ドルまで上昇した。ドル円相場ではFRBが物価上昇抑制のための利上げを迫られるとの見方が、米国の金利の先高観につながり、円安圧力を強めている。
ブルームバーグによると、23日の金融市場で見込まれている28、29日の連邦公開市場委員会(FOMC)後の政策金利の水準は3.714%で、6営業日連続で前日よりも高くなった。7月利上げ確率が34%と見込まれているほか、9月利上げの確率は100%となっており、米国の金利の先高観を裏付けている。
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またFX市場の直近2週間の値動きをみると、円の弱さも際立っている。円の対ドル相場の23日のニューヨーク市場の終値は、10日終値との比較で1.33%の円安。豪ドルの対ドル相場(AUD/USD)の0.22%の豪ドル高や、ユーロの対ドル相場(EUR/USD)の0.34%のユーロ安、ポンドの対ドル相場(GBP/USD)の0.66%のポンド安と比べて、円の下落率は高いといえる。FX市場では7月14日に発表された米国の6月消費者物価指数(CPI)が市場予想を超える弱さだったことから14日と15日にドル安基調となっていたが、この間の円高の度合いは他通貨に比べて弱かったことが響いていそうだ。
円の弱さの背景には高市氏の政策運営がある。高市政権が6月30日に示した経済財政政策運営と改革の基本方針である「骨太の方針」の原案をめぐっては、日銀の利上げを牽制する文言があるとの見方が広がり、7月21日の閣議決定までの間、文言修正に関する報道が相次いだ。閣議決定された文書では、金融政策の具体的な手法は日銀に委ねられることが注記されたが、政府と日銀が「デフレに後戻りすることのない物価安定」を目指して協調するとの文言は残っており、高市政権が日銀の利上げが物価上昇を抑制しすぎることを警戒している姿勢がにじんでいる。
さらにドル円相場では日本の物価動向に落ち着きがみられることも円安要因とみなされていそうだ。24日朝に発表された6月CPIは、生鮮食品とエネルギーを除いたコアコア指数の伸び率が前年同期比1.7%となり、8か月連続で前月よりも物価上昇が減速している。日銀が6月23日に公表した制度変更などの特殊要因を除いた5月の物価指数でも物価上昇率に過熱感は出ておらず、日銀が物価上昇抑制のために利上げを急ぐ必要性が高まっているようにはみえない。
実際、金融市場では日銀の次の利上げはFRBの利上げが見込まれている9月よりも遅くなるとの見方が強い。ブルームバーグによると、日銀は30、31日の金融政策決定会合での金融政策維持が確実視されているほか、9月決定会合での利上げ確率も37%に留まっている。24日午後2時45分の金融市場では10月決定会合後の政策金利の水準が、現状の政策金利よりも0.202%ポイント高い1.202%と見込まれており、次回利上げのタイミングは10月が本命視されている形だ。
こうした中、ドル円相場では、FRBがFOMCの結果を発表する29日に大きく円安が進む可能性がある。FRBが足元での原油高を警戒して一気に利上げに踏み切るサプライズがあった場合はもちろん、ケビン・ウォーシュ議長の記者会見から9月利上げに前向きな姿勢が感じられただけでも円安が進みそうだ。こうした米国側の動きによる円安は経済の実態に反した投機的な動きとみなすことはできず、日本政府の為替介入も迫力不足に終わることも想定される。
ただ、現在の歴史的な円安水準に関してはトランプ政権も快く思っていない様子だ。米財務省が23日に公表した外国為替報告書では、2011年末から2026年4月末にかけての円安は「円に関する大幅な過小評価」につながったと指摘。円安は日米の金利差縮小にも関わらず続いていることにも言及し、「行き過ぎた円の変動は望ましくない」としている。米財務省は1月23日、ニューヨーク連銀を通じて主要銀行に対して為替レートの提示を求めるレートチェックを行い、ドル円相場を158円台から155円台まで円高に動かしたことがある。
トランプ大統領は2024年の大統領選挙中から円や人民元が不当に安い水準にあり、米国の製造業を苦しめていると主張してきた。足元のドル円相場での円安圧力は強いものの、投資家の脳裏に日米協調介入の可能性がよぎれば、円安のペースが遅くなる展開も考えられそうだ。
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