S&P500は1.52%安の急落。FRBが利上げで後手に回るリスクが意識された。AIブーム継続への不信も続いており、株価の見通しは悪い。
アメリカの株式市場が米連邦準備制度理事会(FRB)をめぐるリスクで急落した。S&P500種株価指数の29日の終値は前日比1.52%安で、4営業日ぶりの反落。約1か月半ぶりの安値となった。FRBのケビン・ウォーシュ議長が29日までの連邦公開市場委員会(FOMC)後の記者会見で、利上げ姿勢を強めなかったことで、物価上昇への対応が後手に回るとの懸念が意識されたためだ。また株式市場では人工知能(AI)ブームの継続性への不信も継続。29日の取引では半導体株の急落に歯止めがかからず、大手ハイテク各社の株価も大きく値下がりした。一方、29日の取引時間終了後には、マイクロソフトが、設備投資額の見通しが従来よりも少なくなるとの数字を示し、時間外取引で株価が急騰する展開もあった。ただ、設備投資額の縮小は会計基準の変更が要因であることから、マイクロソフトの負担が軽くなったとはいえず、S&P500への下落圧力は今後も続いていく可能性がありそうだ。
S&P500の29日の終値は7316.15だった。ブルームバーグによると、前日比1.52%安はアルファベット(GOOGL)の決算発表が悪材料視された23日(1.21%安)以来、4営業日ぶりの下落。下落率はドナルド・トランプ大統領がイランへの攻撃を激化させると表明した6月10日(1.62%安)以来の大きさだった。29日の終値はこの6月10日(7266.99)以来の安値で、6月2日の最高値からは3.86%安となっている。
S&P500を急落させたのはFRBの金融政策をめぐる不透明感だ。FRBは29日までのFOMCで政策金利を維持したが、投票権を持つ12人のうち3人は利上げを主張して反対票を投じ、イラン戦争後の原油高やAIブームに伴うインフラ整備を背景とした物価上昇圧力への警戒の強さを感じさせた。しかしウォーシュ氏はFOMC後の記者会見で利上げの方向性には言及せず。金融市場で進んでいる長期金利(10年物国債利回り)の上昇が経済活動を冷やす効果を生んでいるとし、FRBが物価上昇の抑制を成し遂げることができるという「いくらかの安心」をもたらしているとした。
こうした中、金融市場ではFRBの利上げ見通しが後退。ブルームバーグによると、29日の金融市場で見込まれている9月FOMC後の政策金利の水準は3.790%まで低下した。9月利上げ確率は65%となり、前日段階での99%よりも大幅に低くなっている。この半面、29日のニューヨーク市場での長期金利の終値は前日よりも0.072%ポイント高い4.679%となっており、FRBが利上げを急がない結果として物価上昇圧力の増大を招き、いずれは利上げに追い込まれるとの金融市場の見立てを示している。
FRBが物価上昇抑制で後手に回ることへの懸念は投資家の不安を掻き立て、ウォール街の「恐怖指数」と呼ばれるVIX指数(VIX)の上昇につながった。シカゴ・オプション取引所によると、VIXの29日の終値は前日比13.45%高の20.66となり、6月10日(22.22)以来の高水準となった。VIXはS&P500のオプション取引の動向から算出され、値が大きいほど、今後の値動きが荒くなることへの警戒が強いことを示す。
簡単!3分で口座開設申込
最短1営業日で取引開始
一方、29日の時間外取引では、マグニフィセント・セブンの一角であるマイクロソフト(MSFT)の株価が急騰するという、S&P500にとって前向きな値動きもあった。ブルームバーグによると、マイクロソフトの株価は一時、427ドルを付け、直前の終値(390.54ドル)から9%超値上がりした。マイクロソフトが取引時間終了後に発表した4-6月期決算が市場予想を超える好決算だったことに加え、決算会見でエイミー・フッドCFOが2026年の設備投資の見通しについて約1750億ドルとの数字に言及したことが株価上昇のきっかけとなった。フッド氏は4月29日の前回決算発表では、2026年の設備投資額について1900億ドル程度との見通しを示していた。
ただ、マイクロソフトの設備投資額の見通し縮小は会計基準の変更が要因で、実質的にはマイクロソフトの設備投資額が減るわけではない。フッド氏は7-9月期からデータセンターやオフィスビルなどの耐用年数を従来の15年から25年まで伸ばし、今後のデータセンターリースの扱いがファイナンス・リースからオペレーティング・リースに変わることで、設備投資額には含まれなくなると説明。そのうえで「2026年の設備投資の見通しに変化はない」とも述べ、2027年6月通期の設備投資額は「2026年6月期よりも増える」とした。
またマイクロソフト同様に29日の取引時間終了後に4-6月期決算を発表したメタの株価は時間外取引で急落した。ブルームバーグによると、一時、518.38ドルまで値下がりし、直前の終値(585.61ドル)から11%超安となっている。決算発表に際して示された7-9月期の総収入の見通しが610億-640億ドル(中間値625億ドル)に留まり、金融市場で見込まれていた630億ドル程度を下回ったことが悪材料となった。また2026年通期の設備投資額について1300億-1450億ドル(中間値1375億ドル)との見通しが示され、前回決算発表時の1250億-1450億ドル(中間値1300億ドル)から引き上げられたも下落要因だ。
大手ハイテク各社の設備投資の積み増しは、AIサービスへの旺盛な需要が背景となっているが、投資家の間では過剰投資につながるとの懸念も強い。FRBの金融政策の方向性とAIブームの見通しがつきにくくなっていることで、投資家のリスク回避姿勢が今後も強まり、S&P500への下落圧力が増していく展開も考えられそうだ。
本レポートはお客様への情報提供を目的としてのみ作成されたもので、当社の提供する金融商品・サービスその他の取引の勧誘を目的とした ものではありません。本レポートに掲載された内容は当社の見解や予測を示すものでは無く、当社はその正確性、安全性を保証するものではありません。また、掲載された価格、 数値、予測等の内容は予告なしに変更されることがあります。投資商品の選択、その他投資判断の最終決定は、お客様ご自身の判断でなさるようお願いいたしま す。本レポートの記載内容を原因とするお客様の直接あるいは間接的損失および損害については、当社は一切の責任を負うものではありません。 無断で複製、配布等の著作権法上の禁止行為に当たるご使用はご遠慮ください。