S&P500は週次反発。FRBの利上げが遠のいたことが好感された。一方、AIブームへの懸念は続き、上昇への期待は低調なままだ。
アメリカの株式市場が不安を抱えたままの上昇をみせた。S&P500種株価指数は2日までだった週次の取引で1.76%高となり、2週ぶりの反発。割安感が出ている大手ハイテク株が急騰しており、米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げ見通しの後退が好材料視されているもようだ。6月雇用統計などで米国の実体経済の堅調さが確認されたことは投資家心理の改善にもつながっている。一方、大手ハイテク各社のAIサービス拡充が追い風になってきた半導体各社の株価は急落。AIブームの過熱感への警戒が広がる中、株価上昇が頭打ちになった感がある。S&P500は6月初めから1か月にわたって最高値更新から遠ざかっており、株価上昇への期待は高まりきらないままだ。こうした中、週明け6日以降には、FRBの金融政策やAIブームの先行きを占うイベントが控えており、投資家心理の悪化がS&P500の下落につながる可能性もある。
S&P500(SPX)の2日の終値は7483.24。前週末の6月26日と比べた上昇率(1.76%高)は、メモリ半導体大手マイクロン・テクノロジー(MU)の決算発表への警戒が打撃となった前週(6月22-26日)の週次1.95%安からの反発となった。2日の終値はちょうど1か月前にあたる6月2日につけた最高値(7609.78)からは1.66%安にあたる。米国株式市場は3日、独立記念日の振り替え休日のため休場だった。
S&P500の週次反発の要因は、「マグニフィセント・セブン」と呼ばれる大手ハイテク7社の株価の急騰だ。アップル(AAPL)の株価が2日までの週次で8.79%高となったほか、アルファベット(GOOGL)が週次6.67%高、メタ・プラットフォームズ(META)が5.93%高になるなど、7社がそろって上昇した。7社の株価は6月以降の値下がりで割安感が出ており、買い戻しの機運があるようだ。
S&P500の週次での上昇の背景にはFRBの利上げ見通しの後退がある。ブルームバーグによると、3日の金融市場で見込まれている28、29日の連邦公開市場委員会(FOMC)後の政策金利の水準は3.676%で、6月30日との比較で0.034%ポイント低下。この間、7月利上げ確率は33%から19%まで下がった。7月1日に発表された民間雇用サービス会社ADPのデータや、2日発表の6月雇用統計で労働市場の過熱感が見られず、FRBが物価上昇抑制のための利上げを迫られるとの観測が後退したためだ。
FRBの利上げ見通しが弱まったことはS&P500をめぐる投資家心理の改善をもたらした。ブルームバーグによると、ウォール街の「恐怖指数」と呼ばれるVIX指数(VIX)の3日の終値は15.81。2日連続での低下で、6月4日(15.40)以来の低い水準となった。VIXはS&P500のオプション取引の動向から算出され、値が大きいほど今後の値動きが荒くなることへの警戒が強いことを示す。
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一方、米国の株式市場ではS&P500を値上がりさせてきたAIブームに関し、改めて持続性が危ぶまれている。6月25日には対話型AIサービスChatGPTでAIブームに火をつけたオープンAIが年内実施が見込まれていた新規株式公開(IPO)の先送りを検討していると報じられたほか、30日には著名投資家が株式市場におけるAIブームの「終わりの始まり」を指摘したと伝わり、投資家心理を冷やした。ブルームバーグによると、半導体製造装置アプライド・マテリアルズ(AMAT)の株価は2日までの2日続落で合計16.59%安。半導体の名門企業インテル(INTC)も2日続落で合計13.81%安となった。クアルコム(QCOM)は2日までの5営業日続落で合計13.98%安となっている。
AIブームをめぐっては、大手ハイテク各社が提供するAIサービスへの需要の強さが確実視されているものの、各社がデータセンター拡充のために投じてきた巨額の設備投資に見合うだけの利益を生み出せるかどうかは不安視されている。こうした中、1日にメタが自社のデータセンターを使って外部顧客向けのクラウド事業の展開を検討していると報じられたことは、メタの利益を押し上げるとの期待を高めると同時に、メタのこれまでの設備投資が過剰だったと受け止める向きもある。こうした大手ハイテク各社の過剰投資の可能性は半導体株の上昇を頭打ちにする要因といえそうだ。
AIブームをめぐる不安が拭えない中、S&P500の上昇への期待も低調だ。ブルームバーグによると、S&P500の水準と構成銘柄の今後12か月の予想1株当たり利益(EPS)から算出される株価収益率(PER)は3日段階で20.9倍で、株式市場でAIブームが本格化した2023年以降の平均値(21.2倍)を下回っている。S&P500が最高値をつけた6月2日以降、予想1株当たり利益が1.07%増となっているにも関わらず、S&P500が1.66%安となったのは、投資家の不安心理の大きさの表れとみることができる。
こうした中、S&P500の今後の見通しをめぐっては、FRBの金融政策やAIブームをめぐる思惑が投資家心理を揺らしそうだ。8日に発表される6月FOMCの議事要旨で利上げ論の強さが感じられた場合にはS&P500への下落圧力が増す恐れがある。また、10日には半導体受託製造大手の台湾積体電路製造(TSMC)の6月の台湾ドルベースでの総収入が発表される予定で、想定外の悪い数字になった場合には半導体株の下落が進む展開も考えられる。
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