S&P500は週次1.05%高。大手ハイテク各社の株価急騰が好材料となったが、FRBの金融政策の不透明感は長期金利上昇という悪材料も生んでいる。
アメリカの株式市場の不安拡大にブレーキがかかった。S&P500種株価指数の7月31日の終値は1週間前比1.05%高で3週ぶりの反発。決算発表シーズンを終えた大手ハイテク各社の株価が大きく上昇したことが好材料となっている。各社は人工知能(AI)サービスの提供基盤であるクラウド事業が急成長しており、投資家からの評価が高まったもようだ。一方、米国の金融市場では長期金利(10年物国債利回り)が1年半ぶりの高さとなり、米連邦準備制度理事会(FRB)が物価抑制の対応で出遅れるリスクが意識されている。また、大手ハイテク各社の決算発表には、AIブームの継続性への疑念を裏付ける経営指標も含まれており、株価上昇の勢いが完全復活するかどうかには不透明感も残る。こうした中、米国では週明け3日以降、経済や労働市場をめぐる重要経済指標の発表が相次ぐ。経済や雇用の強さが確認されれば、FRBの金融政策の方向性の見えにくさともあいまって、S&P500に下落圧力がかかる可能性もありそうだ。
実際、3社のクラウド事業の成長は著しい。最も規模が大きいアマゾンのクラウド事業の4-6月期の収入は前年同期比36.8%増の422.32億ドルで、5四半期連続で成長が加速。マイクロソフトもクラウド事業の収入が31.6%増の393.06億ドルとなり、6四半期連続で伸び率が高まった。アルファベットのクラウド事業は2社と比べて小さいながらも、4-6月期の収入は81.8%増の247.68億ドルという驚異的な伸び。3社の決算発表が示したAIサービスへの需要の強さはS&P500にとっての追い風となった。
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一方、S&P500の値動きをめぐっては、FRBの金融政策をめぐるリスクが高まっている。FRBは29日までの連邦公開市場委員会(FOMC)で政策金利の維持を決めた半面、投票権を持つ12人のうち3人は利上げを主張して反対票を投じた。このうちミネアポリス連銀のニール・カシュカリ総裁は31日に発表した声明で、物価上昇率が5年以上にわたってFRBが目標とする前年同期比2%を超えている現状を踏まえれば、その要因が新型コロナウイルス禍や、ロシアのウクライナ侵攻、ドナルド・トランプ大統領の高関税政策、イラン戦争といった単発的なイベントだったしても、利上げで物価上昇抑制を図る必要があると指摘。「様子見を続けた結果としてより大胆な政策変更が必要になるよりも、小さな金融政策の変更を繰り返す可能性を選ぶ方が良い」とした。30日に発表された6月の個人消費支出(PCE)物価指数の伸び率は、総合指数で前年同月比3.7%、食品とエネルギーを除いたコア指数で3.3%となっており、いずれも2021年3月以降、2.0%を超える水準が続いている。
金融市場では、カシュカリ氏が指摘したFRBが利上げで出遅れた結果、最終的にはより大きな政策金利の引き上げを迫られるリスクが現実味を増しているとみられているもよう。ブルームバーグによると、31日の金融市場で見込まれている9月FOMC後の政策金利の水準は3.812%となり、FOMC結果発表前の28日との比較で0.069%ポイント低くなっている。同時に米国の長期金利の31日の終値は4.736%で、トランプ政権発足の1週間前にあたる2025年1月14日(4.793%)以来、1年半ぶりの高水準だ。FRBのケビン・ウォーシュ議長は29日のFOMC後の記者会見で、足元の長期金利の上昇の結果としてFRBが利上げを進めなくても物価上昇抑制効果が生じる可能性に言及しており、長期金利高が今後も黙認されるのであれば、株式投資の魅力を相対的に低くするS&P500にとっての悪材料とみることができる。
またAIブームが追い風となっている大手ハイテク各社の決算発表には勢いの持続性を疑わせる側面もある。各社はAIサービス強化のための設備投資の積み増しを続ける中、事業活動で受け取った資金から設備投資のためにに支払った資金を差し引いた金額を示すフリーキャッシュフローが赤字に転じているためだ。各社の4-6月期のフリーキャッシュフローをみると、アルファベットがマイナス58.55億ドルとなり、初の赤字に転落。アマゾンはマイナス76.89億ドルで、前四半期(1-3月期)のマイナス172.02億ドルに続く2四半期連続での赤字となった。またクラウド事業に未参入で収益源を築けていないメタ・プラットフォームズ(META)も、29日の4-6月期決算発表で示されたフリーキャッシュフローは7.84億ドルまで縮小し、株価は31日までの週次で6.47%安と3週続落に沈んでいる。
さらに、週明け3日以降のS&P500の見通しをめぐっては、相次いで発表される経済指標が逆風となる可能性がある。米サプライマネジメント協会(ISM)は3日午前10時(日本時間3日午後11時)に7月の製造業景況感指数(PMI)を発表する予定。発表される数値や回答企業からのコメントで物価上昇圧力の強さが感じられれば、FRBのウォーシュ氏が利上げを急いでいないとの見方ともあいまって、長期金利の上昇を招く恐れがある。また、4日発表の6月の雇用動態調査(JOLTS)や5日発表の民間雇用サービス会社ADPによる7月の全米雇用リポートを経て、7日発表の7月雇用統計に至るまでの労働市場に関する一連の経済指標も長期金利の上昇につながる可能性がある。
長期金利の上昇はAIサービス強化のために社債発行による資金調達を重ねている大手ハイテク各社の個別の業績にとっても逆風となりえる。宇宙開発企業スペースX(SPCX)が米国東部時間4日午後4時30分(日本時間5日午前5時30分)から開く4-6月期決算会見も投資家心理を揺らす可能性があり、S&P500の値下がりが進む展開も考えられそうだ。
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