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米国株、雇用統計ショック警戒 S&P500反落 ホルムズ海峡は見通し改善

S&P500は5営業日ぶり反落で、連日の最高値はならず。ホルムズ海峡情勢は改善したが、7日発表の雇用統計への警戒もありそうだ。

Source: ブルームバーグ

Written by

小雲 規生

小雲 規生

シニアファイナンシャルライター/Senior Financial Writer

作成日

アメリカの株式市場の楽観ムードに冷や水がかかった。S&P500種株価指数の5日の終値は前日比0.17%安で、5営業日ぶりの反落。前日に更新した2カ月ぶりの最高値から後退した。大手ハイテク株ではアルファベットが著名人工知能(AI)研究者の退任が悪材料視されて急落しており、AIブームをめぐる投資家心理の揺れやすさを印象付けている。一方、S&P500の最高値更新の要因となったイラン情勢の改善をめぐっては、イランとオマーンがホルムズ海峡の安全な航行の確保をめぐる合意に達したもよう。原油価格は下落が進んでいて、米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げが株価を下落させる懸念は後退している。ただ、こうした前向きな動きにも関わらず、S&P500の上昇にブレーキがかかった背景には、7日に発表される7月雇用統計で株式市場にショックが走ることへの警戒があるとみられる。労働市場の過熱感が明らかになれば、2カ月前と同様にS&P500が急落する恐れがありそうだ。半面、労働市場の過熱感がみられなかった場合にはS&P500の上昇が勢いづき、株式市場のムードが一気に明るくなる展開も考えられる。

S&P500は5営業日ぶり反落 最高値更新の勢いに冷や水

S&P500(SPX)の5日の終値は7723.55。前日比での下落(0.17%安)は5営業日ぶりの反落だった。前日は1.79%高の7736.52まで上昇し、6月2日(7609.78)以来の最高値更新を果たしていたが、上昇に冷や水がかかった形だ。

S&P500とアメリカの長期金利の推移のグラフ

アルファベットは4%急落 AMDは好決算後に7%急落

S&P500への影響度が大きい「マグニフィセント・セブン」と呼ばれる大手ハイテク7社の中ではアルファベット(GOOGL)が4営業日ぶり反落の前日比4.03%安となった。このほか、テスラ(TSLA)も5営曜日ぶり反落の1.77%安、アマゾン・コム(AMZN)は2日続落の1.72%安、マイクロソフト(AMZN)は5営業日ぶり反落の1.09%安となっている。このうちアルファベットは、グーグルのチーフサイテンティストのジェフ・ディーン氏らの退任が発表されたことが悪材料視された。ディーン氏は5日、SNSのXへの投稿でAIベンチャー企業「ディスカバリー・ループ」を立ち上げたと発表するとともに、6日付でのグーグルからの退社を表明。新会社では機械学習などの自動化による科学の前進をミッションに掲げている。

アルファベット、エヌビディア、メタ・プラットフォームズ、アマゾン・コム、マイクロソフト、アップル、テスラの株価の推移のグラフ

株式市場でのAIブームへの期待の移ろいやすさは5日の半導体株の値動きからも感じられた。アドバンスド・マイクロ・デバイセズ(AMD)の株価は5日の取引で前日比7.04%安の急落となり、S&P500の足を引っ張っている。前日の2026年4-6月期決算発表では、7-9月期の総収入が前年同期比41%増にあたる130億ドル前後になるとの見通しを示したものの、投資家の高い期待に応えきれなかったことが要因だ。米国上場の半導体株の値動きを示すフィラデルフィア半導体株指数(SOX)は5日の取引で1.40%安となり、5営業日ぶりに反落した。

エヌビディア、AMD、インテル、アーム・ホールディングスなどの株価の推移のグラフ

イランとオマーンがホルムズ海峡で合意 原油価格の下落が進行

一方、S&P500の前日の最高値更新のきっかけをつくったイラン情勢改善への期待は5日の取引でも維持されている。ブルームバーグによると、イラン外務省報道官はホルムズ海峡の安全な航行に関するオーマンとの協議が合意に達したと言及。共同声明の最終的な精査が両国によって進められているとした。米国のドナルド・トランプ大統領も5日のネバダ州での政治集会での演説で、イランとの協議が継続中であると述べている。イラン情勢をめぐっては、スコット・ベッセント財務長官が4日、CNBCでのインタビューで、イランとの合意が「きょうか明日にも」成立する可能性があると話し、S&P500を急騰させていた。

石油の重要通商ルートであるホルムズ海峡の開放への期待は原油価格の下落につながっている。原油先物市場の指標価格であるWTI(9月渡し、WTI原油)の5日の終値は前日比0.73%安の1バレル=75.22ドルで、7月10日(71.41ドル)以来の安値。イエメンを拠点とする親イラン組織フーシによる紅海でのタンカー攻撃が材料視された23日終値(92.19ドル)からは18.41%安となっている。

WTIの価格の推移のグラフ

FRBの利上げ見通しが後退 9月利上げの確率は55%まで低下

原油価格の下落は物価上昇圧力を弱める要因で、金融市場ではFRBが利上げに踏み切るとの見通しが後退している。ブルームバーグによると、5日の金融市場で見込まれている9月15、16日の連邦公開市場員会(FOMC)後の政策金利の水準は3.770%で、3営業日連続で前日よりも低くなった。9月利上げ確率は55%となり、7月28日までの100%を超える水準から低下している。米国の金利の先高観が緩んでいることは、株式投資の相対的な魅力を高めるS&P500にとっての追い風だ。

FRBの政策金利の見通しの推移のグラフ

7月雇用統計に過熱感ならS&P500急落も FRBに出遅れリスク

ただ、イラン情勢の改善という前向きな動きにも関わらずS&P500の上昇にブレーキがかかった要因には、7日午前8時30分(日本時間7日午後9時30分)に発表される7月雇用統計への警戒が挙げられそうだ。ブルームバーグによると、7月雇用統計では非農業部門の就業者数が前月比8.0万人増となり、前月(6月)の5.7万人増から労働市場の改善が強まる見通し。失業率は4.2%、平均時給の伸び率は前年同月比3.5%と見込まれ、それぞれ前月から横ばいになるとみられている。米国の労働市場をめぐっては、2カ月前にあたる6月5日、5月雇用統計の結果が市場予想を大きく超える過熱感を示し、FRBが利上げに動くとの見方がS&P500に前日比2.64%安の急落をもたらしていた。

アメリカの雇用統計のグラフ

7月雇用統計が警戒されるのは、FRBが利上げで出遅れるリスクがくすぶっているからだ。ケビン・ウォーシュ議長は7月29日のFOMC後の記者会見で利上げを急がない姿勢をみせたが、金融市場ではFRBが物価上昇抑制で後手に回ることで、FRBがいずれは利上げに追い込まれるシナリオも意識され、S&P500は前日比1.52%安となった。このため7月雇用統計の結果に過熱感が出た場合には、FRBの利上げ見通しが一気に高まることで、S&P500を急落させる恐れがありそうだ。これに対して、7月雇用統計が落ち着いた結果になった場合には、イラン情勢の好転もあいまって、FRBの利上げ見通しがさらに後退し、S&P500が改めて最高値を更新して上昇が勢いづく展開も考えられる。

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