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米国株、物価上昇懸念再燃の恐れ S&P500反落 エヌビディアは急落

S&P500は0.06%安の反落。エヌビディアの3%近い急落や原油高が重荷となった。12日発表の7月CPIも波乱要因になりそうだ。

Source:ブルームバーグ

Written by

小雲 規生

小雲 規生

シニアファイナンシャルライター/Senior Financial Writer

作成日

アメリカの株式市場で楽観ムードに冷や水がかかった。S&P500種株価指数の10日の終値は前週末比0.06%安で2営業日ぶり反落。前週末の最高値更新の勢いが削がれた。株式市場での人工知能(AI)ブームを牽引してきた半導体大手NVIDIA(エヌビディア)の株価は3%近い急落で、相場の足を引っ張っている。エヌビディアの値下がりは、大手金融機関6社がエヌビディアとともに巨額のAIインフラ投資資金の提供に乗り出すことが明らかになり、循環取引との疑念が膨らんだことが要因だ。また、10日の金融市場では、イラン情勢の不透明感が拭い切れない中で原油価格が上昇していることも株価の重荷となっている。一方、10日の取引では大手ハイテク株の多くが値上がりしており、株式市場のムードが暗いわけではない。ただ、S&P500の今後の見通しをめぐっては、12日に発表される7月の消費者物価指数(CPI)が波乱要因になりえる。7月CPIで物価上昇の再燃が感じられた場合には、米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げへの警戒が改めて強まり、S&P500への下落圧力が増す恐れもありそうだ。

S&P500は0.06%安 最高値更新の勢いが小休止

S&P500(SPX)の10日の終値は7753.11。前週末につけた最高値(7757.64)から0.06%安に後退した。S&P500は前週(3-7日)、四半期決算発表を終えた大手ハイテク各社やAIブームが追い風となってきた半導体各社の株価が牽引する形で、週次3.58%高という約4カ月ぶりの高い上昇率を記録していたが、値上がりが小休止した形だ。

S&P500とアメリカの長期金利の推移のグラフ

エヌビディアは2.86%安 循環取引との疑念が再燃

S&P500の10日の値動きは半導体株の不振に足を引っ張られた。エヌビディアの株価(NVDA)は前週末比2.86%安で、2営業日ぶり反落。半導体の名門企業インテル(INTC)も4.06%安、クアルコム(QCOM)も3.39%安、半導体製造装置のアプライド・マテリアルズ(AMAT)も3.16%安となった。さらにS&P500構成銘柄ではないものの、イギリス半導体大手のアーム・ホールディングス(ARM)の株価は2営業日続落の5.21%安となっている。米国上場の半導体株の値動きを示すフィラデルフィア半導体株指数(SOX)は3営曜日ぶり反落の2.94%安となった。

エヌビディア、AMD、インテル、アーム・ホールディングスなどの株価の推移のグラフ

株式市場でのAIブームを象徴する銘柄であるエヌビディアの10日の急落は、循環取引をめぐる疑念の再燃が要因。10日の取引時間中に英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)が「ウォール街の巨大金融機関がエヌビディアとともに、AIインフラ投資を目的とした5000億ドル超の金融パッケージの組成に取り組んでいる」と報じていた。エヌビディアは10日の取引時間終了後、5000億ドル超の第三者資本の調達について、アポロ・グローバル・マネジメント(APO)、ブラックロック(BLK)、ブラックストーン(BX)、ブルックフィールド・アセット・マネジメント(BAM)、ゴールドマン・サックス(GS)、KKR(KKR)の6社と合意したと公表した。エヌビディアはこの枠組みは「顧客企業が希少な計算能力を利用できるようにすることを手助けする」としている。

エヌビディアは7月26日夜にも、オープンAIの大規模データセンターのリース契約に関連して約2500億ドルの資金保証をつけることを検討していると報じられていた。この際も、翌27日に株価が前週末比4.99%安の急落となり、S&P500の重荷となっている。エヌビディアの株価はその後、回復基調となっていたが、エヌビディアが自らの顧客企業に対する資金提供に乗り出す構図は、AIブームの継続性への不安を強める要因といえる。

ホルムズ海峡開放が遠のく 原油価格は3営業日続伸

また10日の金融市場ではイラン情勢の好転がみられないこともS&P500の見通しを悪くした。イランメディアによると、イラン最高安全保障委員会(SNSC)のモハンマド・バーゲル・ゾルガドル事務局長は8日、ホルムズ海峡開放のための条件について言及。イランが二度と脅威にさらされないこと、イランと同士に対する攻撃が永久に停止されること、イランに対する海上封鎖が解除されること、米軍がイラン周辺から撤退すること、イランが受けた戦争被害が補償されること、イランに対する経済制裁が解除され、イランの凍結資産が解放されることを挙げた。これに対して、ドナルド・トランプ大統領は10日午前12時台の自身のSNSトゥルースソーシャルへの投稿で、イランによる隣国への攻撃や国内反体制派への弾圧で多くの犠牲者が生じてきたことに触れ、「イランからの賠償を求める」と反発している。イラン情勢をめぐっては、イランとホルムズ海峡を挟んだ隣国のオマーンとの間で航行正常化に向けた協議が前進しているとの期待が出ていたが、実現は遠のいたといえそうだ。

こうした中、10日の金融市場では原油価格が上昇。原油先物市場の指標価格であるWTI(9月渡し、WTI原油)は前週末比5.05%高の1バレル=82.13ドルとなり、3営業日続伸を記録した。原油価格の上昇は、個人や企業の経済活動を抑制する世界経済にとっての悪材料で、S&P500への逆風が増したことになる。

WTIの価格の推移のグラフ

大手ハイテク株は堅調 投資家心理は比較的安定

一方、10日の株式市場では、S&P500への影響度が大きい大手ハイテク各社の株価には堅調さがみられた。アマゾン・コム(AMZN)が2営業日続伸の前週末比1.32%高、マイクロソフト(MSFT)が3営業日続伸の1.21%高、メタ・プラットフォームズ(META)が4営業日続伸の0.48%高となるなど、「マグニフィセント・セブン」と呼ばれる7社の中で5社が値上がりしている。シカゴ・オプション取引所によると、ウォール街の「恐怖指数」と呼ばれるVIX指数(VIX)の10日の終値は15.46で、前週末よりも3.76%高いとはいえ、比較的低水準にとどまったといえる。

アルファベット、エヌビディア、メタ・プラットフォームズ、アマゾン・コム、マイクロソフト、アップル、テスラの株価の推移のグラフ

7月CPIが次の試練に 物価上昇上振れならS&P500に逆風

ただ、S&P500の今後の見通しをめぐっては、12日午前8時30分(日本時間12日午後9時30分)に発表される7月CPIが投資家心理を大きく揺らす可能性がある。ブルームバーグのまとめによると、7月CPIの伸び率は総合指数が前年同月比3.4%となり、2カ月連続で前月よりも低くなる見通し。食品とエネルギーを除いたコア指数では2.5%となって、イラン戦争開始前にあたる2月(2.5%)以来の小さな伸び率になると予想されている。

米国の消費者物価指数の伸び率の推移のグラフ

実際の7月CPIの伸び率がこうした市場予想を上回った場合には、FRBが物価上昇抑制のために利上げに踏み切る必要性が増したとの見方が金利の先高観を強め、株式投資の相対的な魅力の低下を引き起こす可能性がある。米国経済をめぐっては、7日発表の7月雇用統計で労働市場の過熱感がみられなかったことがFRBの利上げ見通しを弱め、S&P500の最高値更新の追い風になっていたが、7月CPIは新たな試練とみなすことができそうだ。

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