アームの4-6月期決算発表は3月に参入表明した自社製半導体事業の見通しが焦点。需要の強さが示されれば、急落した株価の復活も期待できる。
アーム・ホールディングズが29日に行う2026年4-6月期決算発表は人工知能(AI)関連需要の追い風を生かせるかが焦点だ。アームは3月に自社製半導体事業への参入を発表し、株価は6月の最高値段階で発表前の3.2倍にまで上昇。その後は割高感から40%近い急落になったものの、アームから自社製半導体事業への強気な見通しが示されれば、株価急騰の再燃も考えられる状況だ。一方、足元の業績に関しては、スマートフォン市場の弱さも懸念され、4-6月期の実績は期待外れの結果になる可能性もある。ただ、半導体各社からAI関連需要の強さを確信する声が出るなか、中期的に知的財産(IP)収入の伸びが見込まれることへの期待は高まっており、アームの株価への上昇圧力が強まる展開も考えられそうだ。
アームはアメリカ東部時間29日午後5時(日本時間30日午前6時)から決算会見を開く。ブルームバーグがまとめた事前予想によると、アームの4-6月期は総収入が前年同期比20.1%増の12.64億ドルになる見通し。調整ベースの1株当たり利益(EPS)は14.3%増の0.40ドルと見込まれている。予想通りになれば総収入の伸びは前四半期(1-3月期)から横ばい、1株当たり利益は前四半期(9.1%増)から成長が加速することになる。アームは2023年9月14日に米ナスダック市場に米国預託証券(ADR)を上場し、これまでに11回の四半期決算を発表。実績が予想を下回ったのは、総収入と1株当たり利益ともに2025年4-6月期のみだ。
アームの株価(ARM)の20日の終値は269.61ドルで、前回決算発表があった5月6日比で13.62%高となっている。6月18日につけた最高値(439.20ドル)からは、約1か月で38.65%安の水準まで急落している。アームは3月24日の自社製半導体事業への参入表明後、最高値までの約3カ月間に株価が3.2倍になっていたが、株価急騰の勢いは衰えたといえる。
ブルームバーグによると、直近の株価と今後12か月の予想1株当たり利益から算出される株価収益率(PER)は20日時点で114倍。前回決算発表当日の111倍からは、やや割高感が増した。一方、最高値当時の200倍からは低下しており、足元の株価下落は極端な割高感の修正とみることができそうだ。アナリストが提示する目標株価の水準は303ドル程度で、現状よりも12%ほど高い。48人のアナリストのうち32人は買い、14人は維持、2人は売りを勧めている。
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アームの29日の決算発表では自社製半導体事業の展望が注目される。アームは前回決算発表に際して、自社製半導体事業について2031年3月期には150億ドルの収入を見込んでいるとの見方を維持。現在の収入源である知的財産事業と合わせて、総収入の規模は250億ドル程度になるとしていた。アームはこの際、2027年3月期と2028年3月期で合計20億ドルの収入が得られるともしており、今回の決算発表でこれらの見通しが上方修正されれば、最高値から4割安まで後退した株価が改めて上昇する可能性がありそうだ。
一方、アームの足元の業績に関しては不安も残る。ブルームバーグがまとめた事前予想では、顧客企業がアームの知的財産を用いて製造した半導体で得た収益に応じて受け取るロイヤルティ収入は、4-6月期に18.7%増の6.94億ドルになる見込み。アームのジェイソン・チャイルドCFOが前回決算発表で、4-6月期のロイヤルティ収入の伸び率について示した「20%程度」という見通しを下回ると予想されている形だ。アームの知的財産が多く用いられているスマートフォン市場では、メモリ半導体不足を要因として、低中価格帯の商品の販売数が弱含んでいると指摘されており、アームのロイヤルティ収入を下押ししている可能性がある。また、顧客企業がアームの知的財産を用いた半導体製造の契約を結ぶ際にアームが受け取るライセンス収入は21.4%増の5.68億ドルと予想されていて、2025年4-6月期(0.8%減)以来の低い伸びになるとみられている。
ただ、半導体各社の間ではAI関連の半導体需要の強さへの自信は深まっている。半導体受託製造の台湾積体電路製造(TSMC、TSM)の魏哲家(シーシー・ウェイ)CEOは16日の4-6月期決算会見で、AI関連の需要は「強くなり続けている」とし、「複数年にわたるAIメガトレンドに関する確信は極めて高い」と述べていた。TSMCはAI向けの最先端半導体を供給してきた米半導体大手NVIDIA(エヌビディア、NVDA)を顧客に持ち、エヌビディアの半導体にはアームの知的財産が多く用いられている。アームの株価は前回決算発表後、5月19日までは220ドル程度で推移していたが、エヌビディアが20日の2026年2-4月期決算で強気な業績見通しを示したことをきかっけに、一気に400ドルを超える最高値まで駆け上がっている。
このためアームの株価をめぐってはスマホ市場の不振が懸念される中でも、中期的には、AI関連半導体の需要の強さが知的財産収入を押し上げる展開も考えらえる。アームの株価の割高感への警戒は残るとしても、株価上昇に追い風が吹く機会が多くなることも想定されそうだ。
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