米国株見通し(8/6):S&P500予想6200~6350、相場の急変動を警戒
景気不安がくすぶるなか、S&P500は底堅さを維持している。株価指数CFD「米国500」の新たな予想レンジの下限を6200と想定したい。しかし、ISM非製造業景気指数がサービス業の活動縮小を示唆し、株高ムードに水を差した。相場の急変動を警戒したい。

株高ムードに水を差したISM非製造業景気指数
米供給管理協会(ISM)が5日発表した7月のISM非製造業景気指数は50.1と、前月の50.8から低下した。ブルームバーグ予想の51.5も下回った。2024年10月の55.8を境にサービス業の活動が縮小の傾向にある。
各項目も景気の先行き不安を高める内容だった。先行指標となる新規受注は50.3へ低下。雇用も46.4と、今年3月以来の低水準となった。一方、仕入価格は前月の67.5から69.9へ上昇した。
サービス企業の活動が縮小傾向を維持し、かつインフレの粘着性を示唆した今回の内容は株高ムードに水を差した。5日の主要な米株価指数は下落した。
米国 ISM非製造業景気指数の動向:過去1年間

ブルームバーグのデータで作成
投資家心理は落ち着いているが相場の急変動には要警戒
しかし、投資家の心理は落ち着いている。雇用統計ショックで一時警戒水準の「20」まで上昇したVIX(S&P500版の恐怖指数)は現在、17ポイント台で推移している。ナスダック版恐怖指数のVXNも20を下回る水準にある。
米国株のボラティリティ指数はネガティブなイベントに反応する傾向がある。4月の米国による相互関税発表がそれだった。現在は景気不安がボラティリティ指数の変動要因になり得るが、低い水準で推移している現在の状況は、投資家の根強いリスク選好姿勢を示唆している。
しかし、ISM指数は製造業に続きサービス業の活動縮小も示唆した。景気不安を意識した下落相場の懸念は水面下でくすぶり続けるだろう。相場の急変動を警戒したい。
VIXとVXNのチャート:日足 3月以降

ブルームバーグのデータで作成
ハイテク株買いと米FRBの連続利下げ期待が下支え
3日のIG米国株レポートで、今週は下落相場を想定した。上述したとおり市場予想を下回る米経済指標が続いていることも考えるならば、相場の急変動を警戒する必要がある。しかし、今のところリスク回避のムードは高まっていない。
米国株が底堅さを維持している要因の一つが、ハイテク株の買いである。4~5日のS&P500セクター別パフォーマンスで確認すると、コミュニケーション・サービスと情報技術の各セクターがS&P500の上昇率を上回っている。前者のセクターには、先月の決算でアナリスト予想を上回ったアルファベット(GOOGL)とメタ・プラットフォームズ(META)が属している。後者のセクターにはマイクロソフト(MSFT)が属している。同社は2025年4~6月期決算でクラウド基盤「Azure(アジュール)」などの売上高が前年同期比39%増と好調だった。エヌビディア(NVDA)など大手半導体企業も情報技術セクターに属している。
また、情報技術と同じ景気敏感セクターの素材、不動産そして一般消費財も上昇している。これらの動きもまた、景気不安を警戒しながらも市場参加者が強気姿勢を維持していることを示唆している。
S&P500セクター別パフォーマンス:4日~5日

ブルームバーグのデータで作成
米国株を支えているもう一つの要因が、米連邦準備制度理事会(FRB)が早期の利下げに踏み切る可能性が高まっていることにあると考えられる。
特に筆者が注目しているのが、「連続」の利下げ観測が高まっていることだ。9月利下げの可能性は以前から意識されていた。7月雇用統計を受け、その確率は90%付近へ急上昇している。
注目は10月と12月の利下げ確率の推移だ。レポート掲載時点で10月は60%台、12月は80%台の確率にある。10月の利下げ確率が70%台から60%台へ低下している状況を考えるならば、今後の経済指標でこれらの確率は大きく変動することが予想される。現在の織り込み度合いは行き過ぎの可能性がある。ただし、雇用統計を境に市場の利下げ期待が大きく変化しており、これが景気不安の相殺要因になり得る。
米FOMC 利下げ確率(9月、10月、12月):6月以降の推移

ブルームバーグのデータで作成 / OISに基づく予想確率、6日午前8時時点
※マイナス表記:利下げ
米国500の見通しとテクニカル分析
上昇局面では6350の突破が焦点に
3日のIG米国株レポートでは、S&P500を原資産とする株価指数CFD「米国500」の週間予想レンジの上限を 6350とした。5日の市場でこの水準がレジスタンスラインとして意識された。
今週の米株式市場では、雇用統計ショックの余波が残ると筆者は考えていた。ゆえに下落相場を警戒していた。しかし、ハイテク株の買いと米連続利下げの期待でS&P500は25日線と上昇基調のトレンドチャネルを維持している(5日時点、日足チャート参照)。7月のISM非製造業景気指数が市場予想を下回っても、これらテクニカルラインを維持している状況を考えるならば、米国500は今週6350を突破する可能性がある。この場合は、フィボナッチ・リトレースメント76.4%の水準6383レベルまでの上昇を想定したい。
レジスタンスライン
・6383:76.4%戻し
・6350:予想レンジの上限、61.8%戻し
下落局面では6200の維持が焦点に
3日のIG米国株レポートでは、下落相場を警戒し米国500の週間予想レンジ下限を6050とした。しかし、4日の急反発を受け、6050を目指す可能性は後退した。市場予想を下回ったISM非製造業景気指数を受けても投資家の心理が落ち着いている状況も考慮し、7月以降、原資産のS&P500のサポートラインとして意識されている6200のラインを今週の下限と想定したい。米国500が6月20日の安値と7月31日高値のフィボナッチ・リトレースメント38.2%の水準6237レベルを再び下方ブレイクする場合は、6200のトライを想定したい。
S&P500の日足RSIは買われ過ぎの水準へ到達した後、50を視野に低下基調へ転じている。米国500は6350で上昇が止められて以降、下落ムードが高まりつつある。今日以降、筆者が懸念している下落相場が急に始まる可能性がある。この場合、原資産のS&P500は25日線とトレンドチャネルの下限を大陰線で一気に下方ブレイクする展開を想定しておきたい。
今週、S&P500が6200も下方ブレイクすれば、50日線まで下落幅が拡大する可能性が高まろう。この場合、米国500も6200のラインを下方ブレイクし、半値戻しの水準6175をトライする可能性が高まろう。
サポートライン
・6237:38.2%戻し
・6200:予想レンジの下限
・6175:半値戻し
S&P500のチャート
日足:今年4月以降

出典:TradingView
米国500のチャート
4時間足:6月下旬以降

出典:IGチャート
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