原油価格、上昇失速 WTIは60ドル台 OPECプラス増産停止を静観
WTIは60ドル台で推移。OPECプラスの1月以降の増産停止決定への反応は薄い。ただ、原油需要の強さが短期的な上昇要因となる可能性もある。
原油価格が上昇の勢いを欠いている。原油先物市場の指標価格であるWTI(翌月渡し)は日本時間5日の取引で1バレル=60ドル台前半で推移。10月下旬から横ばいの値動きが続いている。11月2日にはサウジアラビアやロシアを含むOPECプラス8か国が2026年1-3月期の増産停止を決めたものの、過剰供給が緩むとの期待は膨らまず、原油価格の上昇は進んでいない。原油価格の値動きの鈍さの背景には、OPECプラスの増産停止が一時的とみられることや、ロシアの石油産業を標的にした米欧の経済政策の実効性への疑問が続いていることがありそうだ。ただ、米国の原油在庫量からは需要の強さも感じられ、原油市場で短期的な値上がり圧力の高まりがみられる可能性もある。
WTIは60ドル台前半で推移 米欧のロシア制裁後の値上がりは失速
WTI(翌月渡し、WTI原油)は日本時間5日午前12時53分段階で1バレル=60.37ドルで取引されている。ブルームバーグによると、WTIはアメリカと欧州連合(EU)がロシアのエネルギー企業の上位2社を対象とした経済制裁を決めたことが材料視され、10月24日には一時、62.59ドルまで上昇。20日につけていた56.35ドルから一気に値上がりしていたが、勢いは続かなかった。
OPECプラスは2026年1-3月期の増産停止を決定 増産の枠組みは崩さず
WTIは11月2日にOPECプラス8か国が増産停止を決めるという値上がり要因にも大きな反応をみせなかった。8か国は2日、12月の生産量を11月から日量13.7万バレル引き上げると同時に、2026年1-3月期は増産を行わないと発表。2025年4月から毎月進めてきた段階的増産を休止する意向を示した。8か国がこれまで当初計画を上回るペースで増産を進め、原油価格に下落圧力をかけてきたこととは対照的な決定だ。このためWTIは3日に一時、1バレル=61.50ドルまで上昇する場面もあったが、やはり勢いは続いていない。
OPECプラスの増産休止を原油市場が静観している背景には、決定の理由が「季節性」を考慮したものだと説明されていることがある。原油市場では1-3月期は需要が弱い時期とされ、増産をしなくても需給のバランスは崩れないともいえるためだ。8か国は2日の声明文で、10月以降の増産の根拠となっている「2023年4月までに発表された日量166万バレルの減産の巻き戻し」という枠組みは撤回されていないことを強調。10-12月で実施する日量約41.2万バレルの増産を除いた、残り125万バレル程度の増産余地があることを示唆している。
米中の友好ムードは高まらず 米国の原油需要の強さは一時的な値上がり要因か
また、ロシアに対する米欧の経済制裁についても、実効性に対する期待は高まっていないようだ。米国のドナルド・トランプ大統領は韓国で10月30日に中国の習近平国家主席と首脳会談を実施。中国製品への関税引き下げと引き換えに、習氏からレアアース輸出をめぐる追加規制の1年延期などを引き出した。しかし金融市場では米中首脳会談の結果について「一時停戦」との受け止めが強い。ロシア産原油の買い手とされる中国と米国の友好ムードが高まらなかったことは、中国が米欧の経済制裁をくぐり抜ける形でロシア産原油の輸入を続ける可能性も感じさせる。
ただ、原油供給の高止まりが続くとみられる中でも、需要の強さが原油価格を押し上げる可能性がある。米エネルギー情報局(EIA)が10月29日に発表した24日時点の原油在庫量は1週間前比685.8万バレル減で、ブルームバーグがまとめた市場予想の120.3万バレル増加とは正反対の大幅な在庫の取り崩し。29日のWTIは前日比0.55%高となった。
ブルームバーグによると、EIAが5日午前10時30分(日本時間6日午前0時30分)に発表する10月31日時点の原油在庫量は1週間前比28.6万バレル減少になる見通し。発表される結果が予想よりも大きな取り崩しになれば、原油需要の強さが意識され、短期的には原油価格が上昇する可能性もありそうだ。
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