原油価格、米欧のロシア制裁で急騰 WTIが62ドル 米中首脳会談焦点
WTIは一時、62ドル台まで上昇。米欧が対ロシア制裁を強化したことが材料視された。ロシア産原油を購入するインドや中国の対応が注目される。
原油価格が急騰した。原油先物市場の指標価格であるWTI(12月渡し)は日本時間24日未明に一時、1バレル=62ドル台まで上昇。22日朝の段階でつけていた57ドル台から約5ドルの値上がりとなった。アメリカと欧州連合(EU)が相次いでロシアのエネルギー産業を標的とした経済制裁の強化を発表したためで、ロシア産原油が国際市場から締め出されるとの観測が原油価格に上昇圧力をかけた。ただ、足元のWTIは60ドル台前半に戻ったにすぎず、ドナルド・トランプ大統領の就任前に常態化していた70ドルを超える水準までは距離があることも事実。米欧の制裁が原油市場に与える影響は、インドや中国といったロシア産原油の買い手の行動にかかっている側面もある。こうした中、トランプ氏は30日に中国の習近平国家主席と首脳会談を行う予定で、米中協調の実現をめぐる思惑が今後の原油価格を左右する可能性がありそうだ。
WTIは5.62%高で4か月ぶり上昇率 一時62ドル台を記録
WTI(12月渡し、WTI原油)は日本時間24日午前12時17分段階で1バレル=61.38ドルで取引されている。ブルームバーグによると、24日午前1時すぎには62.20ドルまで上昇。ニューヨーク市場の終値(61.79ドル)では前日比5.62%高となり、イスラエルがイランの核施設に攻撃を加えた6月13日(7.26%高)以来の上昇率となった。WTIは22日朝の段階では57ドル前半で取引されていたが、48時間のうちに約5ドル値上がりしたことになる。
米欧がロシア制裁で共同歩調 ロスネフチとルクオイルが対象に
原油価格を上昇させたのは米国とEUによる対ロシア制裁強化の発表だ。米財務省は22日、ロシアの石油企業として上位2社にあたるロスネフチとルクオイルに制裁を科すと発表。スコット・ベッセント財務長官は声明で、両社がロシアがウクライナとの戦争を継続するための資金供給源となっているとした。米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)によると、両社はロシアの石油生産の約半分を担う。ジョー・バイデン前政権はロシアにおける3位と4位の石油企業であるガスプロムとスルグトネフチェガスを制裁対象としていたが、ロスネフチとルクオイルは制裁から外れていた。
またEUは23日、ロシアに対する新たな経済制裁が参加国によって承認されたと発表。2027年以降のロシアの液化天然ガス(LNG)の輸入や、ロスネフチとガスプロムを通じた石油やガスの輸入も禁じられる。また、ロシアのエネルギー輸出を可能にしている「影の船団」として新たにに117隻を指定し、総計557隻の入港が禁止される。トランプ氏は9月23日の国連総会での演説で、欧州各国がロシア産のエネルギーを輸入していることを強く批判しており、今回のEUの対応には米国との共同歩調を示す狙いがある。
原油価格は依然として安値水準 米国やOPECプラスの増産で供給過剰
一方、足元のWTIの水準は過去の水準と比較すれば、依然として安値とみることもできる。WTIは2022年以降は70ドルを超える水準での値動きが継続。2023年9月にはニューヨーク市場の終値ベースで1バレル=93.68ドルをつける場面もあった。直近では1月10日に退陣間際のジョー・バイデン政権がガスプロムとスルグトネフチガスを制裁対象に加えた際、WTIは80.77ドルまで上昇している。
2025年に入って原油価格の水準が低下した背景にはトランプ氏自身が米国の消費や企業の経済活動にとってマイナスとなる原油価格の上昇を望んでいないことがある。トランプ氏は米国内の原油生産を後押しする政策を打ち出し、原油価格に下落圧力をかけてきた。また、サウジアラビアやロシアを含むOPECプラス内の8か国が4月以降に急ピッチで増産を進めてきたことも原油安の材料だ。
さらにトランプ氏が高関税政策で火をつけた世界経済の見通しへの不安は原油需要を抑制する材料として原油価格を下押ししている。トランプ氏が10日、中国のレアアース輸出規制強化に不満を示し、中国製品に100%の追加関税を課す考えを示したこともあり、WTIは20日には一時、1バレル=56.35ドルをつけていた。
30日の米中首脳会談に向けた思惑が原油価格を左右か
米欧は今回、足並みをそろえてロシアのエネルギー産業への締め付けを強めたものの、ロシア産原油を割安で購入しているとされるインドや中国が行動を変えるかどうかは不透明。ブルームバーグは23日、インドのナレンドラ・モディ首相がトランプ氏との会談の可能性があった東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議にオンラインで出席することを明かしたと報じている。
こうした中、トランプ政権は23日、トランプ氏と習氏が30日に韓国で首脳会談を行うと発表。トランプ氏は習氏と、ロシアとウクライナの戦争終結に向けた方策についても協議するとしている。習氏がトランプ氏と歩調を合わせた場合には、中国がロシア産以外の原油の調達に動くとの思惑が原油価格に上昇圧力をかけそうだ。逆に米中間の溝の深さが意識された場合には、米中関係悪化が世界経済を下押しするとの思惑とも相まって、原油価格に下落圧力がかかる可能性もある。
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