原油価格、4年10か月ぶり安値 WTI一時54ドル 反発の可能性も
WTIは1か月ぶりの急落。ウクライナ和平合意への期待が材料視された。ただ、ロシア側の対応次第で反発が進む可能性もある。
原油価格が急落した。原油先物市場の指標価格であるWTI(翌月渡し)は日本時間17日未明の取引で1バレル=54ドル台まで下落。4年10か月ぶりの安値となった。このところの原油先物市場で材料視されてきた、ロシアとウクライナの和平交渉が進展するとの期待が高まったためだ。ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は仲介役の米国が和平後の安全保障を法的拘束力を持つ形で提供することに合意したと言及。和平実現がロシア産原油の国際市場への流入を容易にするとの見方を強めた。ただ、和平の実現をめぐっては、ロシアのウラジミール・プーチン大統領の判断がカギを握っているといえ、ロシア側の対応次第では原油価格が再び上昇に転じる可能性もある。
WTIは一時54.98ドル 2021年2月以来の安値水準
WTI(翌月渡し、WTI原油)は日本時間17日午後3時46分段階で1バレル=56.09ドルで取引されている。ブルームバーグによると、17日午前0時台には54.98ドルをつけ、2021年2月3日(54.81ドル)以来、4年10か月ぶりの安値を記録した。16日のニューヨーク市場の終値は前日比2.73%安の55.27ドルで、石油輸出国機構(OPEC)が発表した月報が原油過剰供給見通しを強めた11月12日(4.18%安)以来の急落となった。
アメリカはウクライナに法的拘束力がある安全保障を提供か
WTIを下落させたのはロシアとウクライナの和平協議が前進するとの期待の高まりだ。ブルームバーグによると、ゼレンスキー氏はウクライナメディア向けのコメントで、和平協議に関連し、米国が議会の投票によって法的拘束力をもたせた安全保障の提供に合意したと述べた。和平協議をめぐっては、和平実現後、ロシアがウクライナに再侵攻することを防ぐための手立てが焦点となっており、米国による安全保障がより確実な形でもたらされることになれば、ウクライナにとっては前進だとみることができる。
ドナルド・トランプ大統領は15日の段階で記者団に対し、和平合意について「かつてないほどに近づいている」と述べていた。実際に和平合意が実現すれば、米国や欧州が進めているロシア産原油への締め付けが緩和されることも考えられる。ロシア産原油が国際市場に流入しやすくなれば、原油価格には下落圧力として働くことが想定される。
トランプ氏はベネズエラのタンカーを海上封鎖 ウクライナ和平は難航必至か
ただ、トランプ氏は16日夜(日本時間17日朝)には、自身のSNSトゥルースソーシャルへの投稿でベネズエラに出入りする経済制裁の対象になっているタンカーについて「全面的で完全な封鎖」を行うと言明。WTIが56ドル台まで反発するきっかけを作った。トランプ氏はベネズエラが米国への違法薬物の密輸に関わっているとして、対決姿勢を強めていた。米エネルギー情報局(EIA)がまとめた2024年のデータでは、ベネズエラの原油生産量は日量8.63億バレルで、世界で20番目となっている。
また、ロシアとウクライナの和平協議で今後も合意の可能性が高まっていくかは不透明。ゼレンスキー氏は、米国は次にロシアとの協議に向かうとしており、プーチン氏の対応が焦点となりそうだ。プーチン氏が米国からウクライナへの安全保障の提供を容認しない姿勢を示した場合には、原油価格には上昇圧力がかかる可能性がある。
またロシアはウクライナのドネツク州とルハンスク州にまたがるドンバス地域のうち、現時点でもロシアが制圧していない領土についてもロシアに引き渡すよう求めていると報じられている。ウクライナにとっては受け入れが難しい条件といえ、ロシアが領土割譲の要求へのこだわりをみせた場合にも、原油価格が値上がりする要因ととらえられそうだ。
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