原油価格、年間下落5年ぶり大きさへ WTI見通し 2026年も下落か
WTIの年間下落率は5年ぶりの大きさになる見通し。2026年も原油の過剰供給が材料視され、下落圧力が続くとみられている。
原油価格の2025年の値動きは5年ぶりの大きな下落になりそうだ。原油先物市場の指標価格であるWTI(2月渡し)は23日の終値で2024年末比18.6%安。新型コロナウイルスの感染拡大が世界経済を混乱させた2020年以来の大きな下落率になる見通しだ。サウジアラビアやロシアを含むOPECプラスの4月以降の段階的な増産が原油価格に値下がり圧力をかけた結果といえる。一方、足元の原油市場では、アメリカによるベネズエラの原油輸出の封じ込めなどが材料視され、供給が落ち込むとの観測が価格に上昇圧力をかけている。ただ、原油市場では2026年も過剰供給が続くとの見方が有力で、春ごろには原油価格への下落圧力が一層強くなることも考えられそうだ。
WTIは2024年末比で18%超安 2020年以来の大幅下落の可能性
WTI(2月渡し、WTI原油)は23日の終値で1バレル=58.38ドル。ブルームバーグによると、2024年末比での騰落率(18.6%安)は2020年の年間20.5%安以来の大きさとなっている。WTIの値下がりがさらに進み、31日終値で57ドルを割り込めば、下落率は2020年の記録も超え、2018年(24.8%安)以来7年ぶりの大きさになる可能性もある。
OPECプラスの増産が下落圧力に 一時は4年10か月ぶりの安値を記録
2025年の原油価格に下落圧力がかかった背景には、OPECプラスによる増産がある。サウジやロシアを含むOPECプラスの8か国は4月から段階的増産をハイペースで進めた。9月までの増産は合計日量246.4万バレルとなり、2024年12月に発表した計画で2026年9月に到達するはずだった水準を1年前倒しで達成している。8か国は10月から12月にかけても増産を進め、原油市場では供給の増加が原油価格を下落させるとの見通しが浸透した。ブルームバーグによると、日本時間12月17日午前0時台につけた1バレル=54.98ドルは4年10か月ぶりの安値だった。
アメリカのベネズエラのタンカーの封じ込めは価格上昇圧力に
一方、足元の原油市場では値上がり圧力も意識されている。ドナルド・トランプ大統領が、ベネズエラが米国への違法薬物の密輸に関わっているとの見解を示し、ニコラス・マドゥロ大統領の辞任を求め、ベネズエラを出入りする石油タンカーの封じ込めに乗り出しているからだ。クリスティ・ノーム国土安全保障長官は20日、SNSのXへの投稿でベネズエラから出国したタンカーを拿捕したと発表。米国メディアはこれまでに合計3隻のタンカーが米国の管理下に置かれたと報じている。米エネルギー情報局(EIA)がまとめた2024年のデータではベネズエラの原油生産量は世界で20番目で世界シェアは1%程度だが、トランプ氏の異例の封じ込めはWTIが55ドル台から58ドル台に上昇する要因となった。
またロシアとウクライナの和平協議に大きな進展がみられていないことも原油価格を上昇させている。仲介役を務めるトランプ氏は15日の段階で、和平協議の合意に「かつてないほどに近づいている」とし、米国と欧州が打ち出しているロシア産原油への締め付けが緩和され、国際市場における原油供給の拡大が原油価格を下落させるとの観測も出たが、その後もウクライナがロシアのタンカーを攻撃したと報じられるなど、戦火が鎮まる様子はみられない。
2026年も原油の過剰供給が継続か OPECプラスの動向で下落圧力増加も
ただ、2026年の原油市場をめぐっては、産油国による原油生産の積み増しが価格下落圧力として働くとの見方が強い。EIAが9日に発表した短期エネルギー見通し(STEO)では2026年の世界の石油生産は平均でみて日量1.07億バレルと予想され、2025年の日量1.06億バレルを上回る見通し。年間を通じて需要よりも大きい石油生産が続くとみられており、原油価格への下落圧力として意識されそうだ。
2025年の原油生産が上昇する要因を作ったOPECプラスの8か国は2026年1-3月は増産を見送る考えだが、4月に入れば増産を再開する可能性がある。3月初めまでには発表されるとみられる4月の生産量が市場の見通しを超えれば、WTIの下落が大きく進む展開も考えられそうだ。
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