原油価格に下落圧力 WTIが58ドル台 過剰供給見通し強まる
WTI(翌月渡し)は58ドル台まで下落。3週間ぶりの安値となった。OPECの11月月報が原油過剰供給の実態を示したことが材料視されている。
原油価格に下落圧力が増した。原油先物市場の指標価格であるWTI(翌月渡し)は日本時間13日の取引で1バレル=58ドル台前半で推移。約3週間ぶりの安値水準となっている。石油輸出機構(OPEC)が12日に発表した11月月報で、2025年7-9月期の世界の石油供給が需要を上回ったとの分析を発表したためだ。OPECプラスなどによる増産は原油需要の増加を超えるペースとなっているもようで、原油市場での価格下落要因として意識されている。また、原油市場での値上がり要因として注目されたロシアのエネルギー産業を標的とした米欧の経済制裁の実効性は依然として明らかではなく、原油価格を上昇させる威力が衰えている。原油市場の今後の見通しをめぐっては、過剰供給をめぐる思惑次第で値下がりが進みやすい状況が続きそうだ。
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WTIは一時、58.12ドル 3週間ぶりの安値まで下落
WTI(翌月渡し、WTI原油)は日本時間13日午後3時4分段階で1バレル=58.40ドルで取引されている。ブルームバーグによると午前10時台には58.12ドルをつけ、前日午後10時ごろにつけていた60ドル台半ばから一気に下落が進んだことになる。足元のWTIの水準は10月22日(57.34ドル)以来、約3週間ぶりの安値だ。
7-9月期は日量50万バレルの供給過剰 OPECプラスの増産などが影響
WTIの下落の要因はOPECが日本時間12日夜に発表した11月月報だ。OPECはこの中で7-9月期の世界の原油などの供給量は日量1億0610万バレルで、需要の日量1億0550万バレルを約50万バレル上回ったとした。7-9月期の生産量は4-6月期と比べて日量200万バレル増え、需要の増加幅(日量130万バレル)を上回っている。10月月報では、7-9月期は日量40万バレルの供給不足と推計されていた。
原油生産をめぐっては4月以降、サウジアラビアやロシアを含むOPECプラス内の8か国が段階的増産を実施。7-9月期は合計日量150.5万バレルの増産が打ち出されていた。OPECプラスは11月と12月に日量13.7万バレルの増産を実施した後、2026年1-3月期は増産を見送るとしているが、中期的に増産を進める方向性は維持している。こうしたOPECプラスの増産方針は供給過剰をさらに強める可能性があり、原油価格に下落圧力をかけているといえそうだ。
対ロシア経済制裁の実効性は? 過剰供給観測が深まれば原油価格の下落加速も
またこのところの原油市場で値上がり要因とみなされてきたロシアの石油産業に対するアメリカや欧州連合(EU)の経済制裁をめぐっては大きな動きは出ていない。インターファクスによると、ロシアのアンドレイ・ルデンコ外務次官は10日、記者団に対して「インドはロシアの石油を買い続けている」と述べた。米国のドナルド・トランプ大統領は6日、記者団に対して「インドはロシアから原油を購入することを概ね止めた」と話していたが、ロシアの石油企業の上位2社を経済政策の対象に加えることで世界各国にロシアからのエネルギー購入を思いとどまらせるという戦略の効果は不透明なままだともいえる。
こうした中、原油価格の今後の見通しをめぐっては、引き続き過剰供給をめぐる思惑の影響度が強くなりそうだ。米エネルギー情報局(EIA)が13日午前10時30分(日本時間14日午前0時30分)に発表する週次の原油在庫量(戦略備蓄除く)が市場予想以上に上積みされていれば、需要の弱さが意識されてWTIへの下落圧力が強まることが想定される。ブルームバーグによると、13日発表の7日段階の原油在庫量は1週間前比150.0万バレル増と見込まれている。
WTIは米中対立の悪化が世界経済を下押しするとの懸念が出ていた10月20日には1バレル=56.30ドルをつけ、5月5日(55.30ドル)以来の安値となっていた。原油の過剰供給をめぐる思惑の広がり次第では、WTIが足元の水準からさらに下落する可能性がありそうだ。
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