原油価格、リスク回避で下落も WTIは60ドル ロシア情勢で浮上
WTI(翌月渡し)は60ドル台まで上昇。ロシア情勢の悪化が材料視されている。一方、過剰供給懸念や投資家のリスク回避姿勢は下落要因だ。
原油価格が再び上昇してきた。原油先物市場の指標価格であるWTI(翌月渡し)は日本時間19日午後の取引で1バレル=60ドル台半ばで推移。欧州連合(EU)がロシア産原油に対する締め付けを強めるとの観測が価格上昇要因となっている。ロシア情勢では、ウクライナがロシア国内の石油輸出港を攻撃したとも報じられており、供給が絞り込まれるとの見立てが原油を値上がりさせている形だ。ただ、原油価格をめぐってはOPECプラスなどによる増産が過剰供給につながるとの予想が引き続き価格下落要因として働いている。またアメリカの株式市場の混乱が投資家のリスク回避姿勢を強める恐れもあり、原油価格が改めて下落に転じる可能性もありそうだ。
WTIは一時60.93ドルまで上昇 58ドル台から上昇基調に
WTI(翌月渡し、WTI原油)は日本時間19日午後3時段階で1バレル=60.67ドルで取引されている。ブルームバーグによると、WTIは19日未明には60.93ドルをつけ、13日に記録した58.12ドルから3ドル近く上昇したことになる。
ロシア産原油への締め付け強化観測 ウクライナはロシアの輸出港を攻撃
原油価格を上昇させたのはロシア産原油をめぐる情勢だ。ブルームバーグによると、EUのカヤ・カラス外交安全保障上級代表は18日、ロシアがテロを支援しているとみなすべきだと述べた。ウクライナに物資を輸送するポーランド領内の鉄道が16日に爆破され、ロシアの関与が疑われていることを踏まえた発言だ。EUは米国と足並みをそろえて、ロシアのエネルギー輸出への締め付けを強めており、ロシア情勢がさらに緊迫すればロシア産原油の供給減少が原油価格を引き上げる要因になりえる。
またロシア産原油をめぐっては、ロシアの主要な石油輸出拠点であるノボロシースク港がウクライナによる攻撃を受けたとも報じられた。ブルームバーグによると、報道を受けた14日の原油先物市場ではWTIが前日比2.39%高となり、一時、1バレル=60.65ドルまで上昇した。
過剰供給懸念は継続 米国の在庫量の積み上がりは需要の弱さを反映
ただ、原油価格をめぐっては下落圧力も根強い。サウジアラビアやロシアを含むOPECプラスによる段階的な増産が原油の過剰供給につながるとの見方は依然として有力。ロシア産原油の買い手とされる中国やインドが欧米からの圧力を受けてロシアから距離をとるかどうかも見通せないままだ。国際エネルギー機関(IEA)は13日に公表した11月の月報で、石油の供給量は増加する一方、「石油需要は歴史的な水準を考えれば控えめなままだ」とし、当面は過剰供給の状態が続くとみている。
こうした中、米国の原油在庫は積み上がり始めた。米エネルギー情報局(EIA)が13日に発表した7日段階の原油在庫量(戦略備蓄除く)は1週間前比641.3万バレル増で、ブルームバーグがまとめた市場予想の150.0万バレル増を超えた。EIAが19日午前10時30分(日本時間20日午前0時30分)に発表する14日段階の原油在庫量でも想定以上の積み上がりが確認されれば、需要の弱さが意識されて、原油価格を押し下げる要因になりそうだ。ブルームバーグによると、14日段階での原油在庫量は170.0万バレル減と予想されている。
米国株式市場の混乱で投資家心理の冷え込みも エヌビディア決算にも注目
さらに原油先物市場ではリスク回避姿勢が価格下落要因として働くことも想定される。米国の株式市場では人工知能(AI)ブームの継続性への疑念が強まっており、S&P500種株価指数(SPX)は18日まで4営業日連続で値下がりしている。米国では19日午後4時20分(日本時間20日午前6時20分)に発表される半導体大手NVIDIA(エヌビディア)の2025年8-10月期決算や、20日朝に1か月半遅れで発表される9月雇用統計への注目が高まっており、悪い結果が投資家心理を冷やせば、WTIも値下がり圧力にさらされる可能性がある。
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