原油価格の上昇短命 WTI、58ドル台 和平難航も過剰供給見通し
WTI(翌月渡し)は58ドル台で推移。ウクライナ和平の難航で60ドル台まで上昇する場面もあったが、下落圧力も根強い。
原油価格に下落圧力がかかり続けている。原油先物市場の指標価格であるWTI(翌月渡し)は日本時間10日の取引で1バレル=58ドル台で推移。、11月以降は4.40ドルという狭い値幅での取引が続いている。このところはロシアとウクライナの和平交渉の難航が原油価格の上昇圧力として意識され、WTIは一時、60ドル台まで値上がり。しかし原油市場では、原油の過剰供給シナリオも引き続き維持されており、原油価格の反発は短命に終わっている。こうした中、10日に発表される米国の原油在庫量が予想に反した積み上がりになれば、原油価格への下落圧力が増す可能性もありそうだ。
WTIは58ドル台で推移 11月以降の値幅は4.40ドル
WTI(翌月渡し、WTI原油)は日本時間10日午後3時2分段階で1バレル=58.36ドルで取引されている。ブルームバーグによると、WTIは5日に60.50ドルをつけ、ロシア産原油への締め付けが意識されていた11月19日(60.79ドル)以来の高値となったが、再び58ドル台まで値下がりしている。11月以降の高値は11月4日につけた61.50ドル、安値は25日につけた57.10ドルで、値幅は4.40ドルに留まっている。
ウクライナ和平の難航は原油価格上昇要因 トランプ氏はウクライナに冷淡
原油先物市場で値上がり要因として意識されているのはロシアとウクライナの和平協議の停滞だ。アメリカと欧州が進めているロシア産原油への締め付けが緩められるとの期待は後退しており、国際市場での原油供給が抑え込まれ続けることで原油価格が上昇するとの見通しがWTIを60ドル台まで上昇させた。
ロシアとウクライナの間の仲介役となっているアメリカのドナルド・トランプ大統領は9日に公開された米政治メディアのポリティコのインタビューで、ロシアのウラジミール・プーチン大統領とウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領がお互いに憎しみあっていることが和平協議を難ししくしていると述べた。トランプ氏はそのうえで、すでに多くの領土を失っているウクライナは「敗れつつある」とし、ゼレンスキー氏が米国が提案している和平合意案を受け入れる必要性を示唆。「ウクライナ国民は選択肢を与えられるべきだ」と述べ、ウクライナで大統領選挙が行われることが重要だとも主張している。
米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)は9日、和平合意案をめぐる主要な論点として、ウクライナが和平合意の中でロシアへの領土の割譲を認めるかどうか、ウクライナが北大西洋条約機構(NATO)への加盟を認められるかどうか、欧州が凍結しているロシアの資産をウクライナ復興のために用いることが可能かどうか、を挙げた。ウクライナにとって受け入れが難しいロシアへの領土の割譲と、ロシアの反発が確実なウクライナのNATO加盟での歩み寄りは難しいとみられ、和平協議実現の道筋はついていないないもようだ。
原油の過剰供給シナリオに根強さ 米国の在庫増加でWTIの下落も
ただ、原油市場では原油の過剰供給が進むとの見通しも続いている。米エネルギー情報局(EIA)は9日に発表した12月の短期エネルギー見通し(STEO)で、「世界的な石油生産の増加と冬場の低い需要の結果として、石油の在庫の積み上がりが加速する」と分析。2026年の世界の原油在庫は日量200万バレルペースで増加するとの見通しを示した。ロシア産原油が国際市場に流入しないことによる原油価格への上昇圧力は、ロシア以外の産油国による増産や需要低迷による価格下落要因で打ち消されるとの見方も成り立つ。
こうした中、原油価格はEIAが10日午前10時30分(日本時間11日午前0時30分)に発表する週次の原油在庫量のデータに反応することも想定される。ブルームバーグがまとめた市場予想によると、12月5日段階の原油在庫量(戦略備蓄除く)は1週間前比で130.0万バレル減になる見込み。実際の発表数値が予想に反して原油在庫の増加を示した場合などには、原油需要の弱さが意識されてWTIに下落圧力がかかることも考えられそうだ。
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