原油価格、米中対立警戒 WTIが5か月ぶり安値 過剰供給も下落圧力
WTI(翌月渡し)は58ドル台で推移。米中対立再燃が世界経済を下押しするとの懸念が材料された。さらなる下落余地も残されている。

原油価格に下落圧力が加わっている。原油先物市場の指標価格であるWTI(翌月渡し)は日本時間15日の取引で1バレル=58ドル台で推移。約5か月ぶりの安値水準で取引されている。アメリカと中国の通商問題をめぐる対立が再燃する中、米中関係悪化が世界経済を下押しし、原油需要が減少するとの見方が原油価格を下落させている。また産油国による増産の流れも引き続き意識されており、供給の面からも価格を下押しする材料が出ている形だ。一方、ロシア産原油が市場から締め出される可能性は原油価格の上昇要因として働く要因。ただ、米中関係の悪化は新たな懸念材料として注目度が高く、原油価格の値下がり傾向が今後も継続する可能性がありそうだ。
WTIは一時57ドル台 5か月ぶりの安値を記録
WTI(翌月渡し、WTI原油)は日本時間15日午後4時9分段階で、1バレル=58.76ドルで取引されている。ブルームバーグによると、WTIは9日までは61ドル台で推移していたが、大きく下落圧力が強まったといえる。14日には一時、57.68ドルまで値下がりし、5月6日(57.03ドル)以来、5か月ぶりの安値となった。

米中対立が再燃 トランプ氏の火消しは成功せず
原油価格を下落させたのは米中対立の悪化が世界経済を下押しするとの不安だ。アメリカのドナルド・トランプ大統領は10日、中国がレアアースの輸出規制を強める考えを示したと明かし、「金融面での対抗措置に出ざるを得ない」と表明。さらに、遅くとも11月1日には中国製品に100%の追加関税を課すとの方針を示した。WTIは10日終値で前日比4.24%安となり、6月24日(6.04%安)以来の大きな下落率を記録している。
またトランプ氏は14日には自身のSNSトゥルースソーシャルに「中国は米国の大豆を意図的に買わないようにしている」として、対抗措置として中国製の食用油に関する商取引の停止を検討しているとした。トランプ氏は12日の段階では「中国のことは心配しなくていい」として米中関係悪化不安の火消しにかかっていたが、米中間の火種は依然としてくすぶり続けているようだ。
原油の過剰供給懸念も継続 在庫の積み上がりは4年ぶり高水準
また原油市場では引き続き、過剰供給という価格下落圧力も続いている。国際エネルギー機関(IEA)は14日に発表した月報の中で、世界の石油市場は2025年に入って日量190万バレルの供給超過となっていると分析。世界の8月の石油在庫は4年ぶりの高さにあたる79億0900万バレルだったとし、9月はさらに増加するとの見通しを示した。背景にはサウジアラビアやロシアを含むOPECプラスが4月以降、段階的な増産をハイペースで進めてきたことに加え、米国やブラジル、カナダ、ガイアナ、アルゼンチンなどによる増産があるとしている。
原油の在庫の積み上がりは米エネルギー情報局(EIA)が公表している週次のデータでも示されている。EIAが8日に発表した10月3日時点の原油在庫量(戦略備蓄除く)は1週間前比371.5万バレルの増加で、ブルームバーグがまとめた市場予想の35.0万バレルの増加を大きく上回る結果だった。EIAが16日午前10時30分(日本時間16日午後11時30分)に公表する10日時点の在庫量は25.0万バレルの増加が予想されており、結果が上振れれば、原油価格に下落圧力がかかる可能性がある。

ロシア情勢は原油価格の値上がり要因 米中対立の展開で55ドル台も
一方、原油市場ではロシアとウクライナの戦争の長期化を踏まえ、ロシア産原油が市場から締め出されるとの観測も消えておらず、原油価格への上昇圧力として働きうる。ブルームバーグによると、トランプ氏は12日、記者団に対して、ロシアが和平に応じない場合には、長距離巡航ミサイルのトマホークをウクライナに供与するとロシアに通告するかもしれないと述べた。トランプ氏はロシアに対する不満を強めているとみられ、9月23日の国連総会での演説では、欧州連合(EU)と足並みをそろえた関税措置でロシアの原油輸出を抑え込む考えも示している。
ただ、米中関係の悪化は両国が5月12日に関税大幅引き下げで合意して以降、金融市場では関心が薄れていた材料。ここにきての対立再燃には意外感もあり、今後の米中の対応次第では世界経済への悪影響がさらに強まるとのシナリオに注目が集まりやすくなりそうだ。ブルームバーグによると、WTIはトランプ氏が4月9日に相互関税の一部停止を発表する直前には1バレル=55.12ドルをつけたこともあり、WTIが足元の水準からさらに値下がりすることも考えられる。
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