原油価格、ウクライナ情勢で膠着 WTIは58ドル台 和平協議進まず
WTI(翌月渡し)は11月下旬から3ドル未満の値幅。ウクライナ和平協議の難航は価格上昇要因だが、過剰供給による下落圧力も続いている。
原油価格の膠着状態が続いている。原油先物市場の指標価格であるWTI(翌月渡し)は日本時間3日の取引で1バレル=58ドル台で推移。11月下旬以降は3ドル未満の値幅で取引されており、大きな値動きが見られない状態だ。原油市場で材料視されているロシアとウクライナの和平協議をめぐっては、仲介役となっているアメリカ側とロシアのウラジミール・プーチン大統領の会談が具体的な成果を示せず。今後、米国のドナルド・トランプ大統領がロシアの対応に不満を示すなどすれば、原油価格に上昇圧力がかかる可能性がある。ただ、原油市場では過剰供給見通しが崩れておらず、下落圧力の根強さも意識されそうだ。
WTIは58ドル台 11月下旬以降の値幅は2.87ドルで膠着状態
WTI(翌月渡し、WTI原油)は日本時間3日午後3時52分段階で1バレル=58.80ドルで取引されている。ブルームバーグによると、WTIは11月21日以降は60ドル未満で推移。26日未明には、米ABCが米政府高官の話として「ウクライナが和平合意に同意した」と報じたことが材料視され、57.10ドルまで値下がりする場面もあったが、12月1日には59.97ドルまで戻している。この間の値幅は2.87ドルで、膠着状態が続いている形だ。
プーチン大統領とウィトコフ特使の会談は進展なし トランプ氏の反応が焦点に
WTIの方向性が出ない背景にはウクライナ和平に向けた協議が動かないことがある。ブルームバーグによると、プーチン氏は2日、モスクワで、米国のスティーブ・ウィトコフ特使とトランプ氏の娘婿のジャレッド・クシュナー氏と会談。ロシア大統領府は「非常に有意義だった」と会談を評価しつつも、和平案の合意には至らなかったとしている。原油市場では和平協議が進展すれば、ロシア産原油が国際市場で流通しやすくなることが原油価格を下落させるともみられていたが、肩透かしに終わった。
こうした中、原油市場の関心はトランプ氏の反応に移りそうだ。トランプ氏は11月25日の段階では、自身のSNSトゥルース・ソーシャルに、和平協議について「素晴らしい前進があった」と投稿。意見の相違は数項目に絞られているとしていた。今回のプーチン氏とウィトコフ氏らの協議で和平合意への前進が示されなかったことで、トランプ氏がロシアの対応に不満を示すなどすれば、原油市場では原油価格上昇圧力として意識される可能性もありそうだ。また、米国と足並みをそろえてロシアのエネルギー輸出への締め付けを進めている欧州連合(EU)からロシアへの不満が示された場合にも原油価格は値上がりする可能性がある。
OPECプラスは増産再開の可能性も WTIは膠着継続の見通し
ただ、ロシア側が今回の会談を非常に有意義と評価したことを踏まえれば、ロシアとウクライナの和平協議の道が完全の閉ざされたわけではなさそうだ。また、原油市場ではサウジアラビアやロシアを含むOPECプラス内の8か国が4月以降に増産を進めてきたことも引き続き、過剰供給を意識させる原油価格の下落要因と位置付けられている。8か国は11月30日の会合で、1か月前に決めた2026年1-3月は増産を行わない方針を確認しているが、原油市場の情勢によっては増産を再開する可能性も示唆している。
このためWTIの今後の見通しをめぐっては膠着状態の継続が想定されそうだ。ロシアとウクライナの和平協議の難航が原油価格の上昇要因として意識されつつも、過剰供給を材料視した値下がり圧力も続いていくとみられる。
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