円高の141円台突入も 雇用統計下振れ懸念 米中首脳の間には溝か
ドル円相場は143円台で推移。米中首脳会談がドルを支えた。ただ6日発表の雇用統計で労働市場悪化が印象づけられれば141円台への円高も想定される。

ドル円相場に円高進行の可能性が出ている。ドル円相場は日本時間6日正午の段階で1ドル=143円台で取引されており、この1週間はほぼ横ばいの値動き。5日にはアメリカのドナルド・トランプ大統領と中国の習近平国家主席の電話会談が実現し、米国経済の見通しへの不安が後退したことがドルを支える要因となった。ただ、同じく5日に発表された米国の週次の失業保険関連統計は、労働市場の想定以上の悪化を示す内容。米国の労働市場をめぐっては悪材料が続いており、長期金利(10年物国債利回り)の低下という円高材料を提供している。また米中首脳の電話会談も内容をみれば、大きな進展があったとはいえず、首脳間の溝の深さも感じさせた。ドル円相場の今後の見通しをめぐっては、6日に発表される5月の雇用統計が悪い結果となり、約1か月ぶりの141円台をつける展開も想定されそうだ。
ドル円相場は143円台で推移 この1週間は2円の値幅で横ばい
ドル円相場(USD/JPY)は日本時間6日午前1時前に1ドル=143.97円をつけ、その後も143円台後半で推移している。ブルームバーグによると、2日以降の取引は142.38円から144.38円の間で推移しており、2円の値幅でほぼ横ばいといえる値動きを続けている。

米中首脳の電話会談が実現 トランプ氏はレアアース問題の前進強調
5日のドル円相場ではトランプ氏と習氏の間で、トランプ氏の2期目として初めての電話会談が行われたことが材料視された。トランプ氏は5日午前(日本時間5日深夜)に自身のSNSトゥルースソーシャルに「習氏とのとても良好な電話会談を終えたところだ」と投稿。1時間半にわたる協議の結果、「両国にとって非常に前向きな結論に達した」とした。トランプ氏はその後、ホワイトハウスで記者団に対し、レアアースや磁石などの争点について「整理することができた」とした。
米中間では5月12日発表の関税大幅引き下げ合意に関して、お互いが合意違反を非難する応酬が続いてた。米国側は中国に対し、レアアースの輸出承認手続きの迅速化を求めているようだ。こうした中で実現した首脳同士の電話会談は米中関係悪化への懸念を後退させ、ドル円相場ではドルが買われる材料となった。
アメリカの失業保険申請件数は予想を超える高さ 労働市場での悪指標が続く
ただ、米国の実体経済には弱さも感じられ、ドル円相場での円高材料を提供している。5日に発表された週次の失業保険関連統計では、5月25-31日週の新規失業保険申請件数が24.7万件となり、ブルームバーグがまとめた市場予想の23.5万人を上回った。米国の労働市場をめぐっては民間雇用サービス会社ADPが4日に発表したデータでも、非農業部門の雇用者数(政府部門除く)の前月比増加幅が2023年3月以来の悪い結果となっている。

米国の長期金利は4日に1か月ぶりの低さに 中国側はレアースには言及せず
米国経済の弱さは、米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げ見通しを強め、長期金利の低下を招く要因だ。ブルームバーグによると、長期金利は4日のニューヨーク市場の終値で4.356%となり、5月7日(4.271%)以来の低水準を記録。日米の長期金利の差は2.860%ポイントとなり、4月30日(2.853%ポイント)以来の小ささとなった。日米の長期金利の差はドル円相場の値動きの背景となっており、金利差縮小は円高要因とみなされる。

また、米国経済の不安要素である米中関係は容易には改善しないおそれがある。中国国営新華社通信は6日、日米首脳の電話協議について報じる中で、習氏は「中国は5月の合意の実行に真剣かつ熱心に取り組んできた」と強調し、「米国はこれまでに実現した前進を認め、中国に悪影響を与える施策を排除すべきだ」と述べたとした。レアアース問題に対する言及はなく、トランプ氏の発言ほどには両国間の歩み寄りが進んだとはいえないようにもみえる。
5月雇用統計は失業率が横ばいの見通し 想定以上の悪さなら141円台の円高も
こうした中でドル円相場の今後の見通しは、米国東部時間6日午前8時30分(日本時間6日午後9時30分)に発表される5月雇用統計で大きく左右される可能性がある。ブルームバーグがまとめた市場予想では、非農業部門の就業者数が前月比12.6万人増、失業率が4.2%となる見通しだ。実際の結果が予想よりも悪い結果になれば長期金利が低下し、ドルが売られて円が買われる流れが想定される。

ドル円相場はトランプ氏が4月22日にFRBのジェローム・パウエル議長の解任を否定する前に、1ドル=139.89円まで円高が進行。しかし30日以降は約1か月にわたって142円を超える水準で推移してきた。トランプ氏の高関税をめぐる混乱が労働市場の悪化につながる展開は金融市場で懸念されてきた筋書きだけに、5月雇用統計を機にドル円相場が141円台をつけることも考えられそうだ。
本レポートはお客様への情報提供を目的としてのみ作成されたもので、当社の提供する金融商品・サービスその他の取引の勧誘を目的とした ものではありません。本レポートに掲載された内容は当社の見解や予測を示すものでは無く、当社はその正確性、安全性を保証するものではありません。また、掲載された価格、 数値、予測等の内容は予告なしに変更されることがあります。投資商品の選択、その他投資判断の最終決定は、お客様ご自身の判断でなさるようお願いいたしま す。本レポートの記載内容を原因とするお客様の直接あるいは間接的損失および損害については、当社は一切の責任を負うものではありません。 無断で複製、配布等の著作権法上の禁止行為に当たるご使用はご遠慮ください。

こんなに豊富?IG証券のCFD銘柄は17,000以上
外国為替、日本株・外国株、株価指数、債券先物、商品(エネルギー、農産物、貴金属)など多彩な資産クラスをFX取引、CFD、バイナリーオプション、ノックアウト・オプションで提供
リアルタイムレート
- FX
- 株式CFD
- 株価指数CFD
※上記レートは参考レートであり、取引が保証されるものではありません。株式のレートは少なくとも15分遅れとなっております。